開院時間
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幼少期には気にも留めなかったのに大人になると好きになるものがたくさんあります。しかも35歳を過ぎたあたりから。35歳以降に出会った物事は宇宙人と同じという説があります。心の底から理解できない異質なもの。どういうことかというと35歳までに触れた物事で人格形成されるということらしいのです。小学生にポケベルといっても想像もつかないでしょう。説明を受けてこういうものだと言われても頭で理解できても実感がわかないでしょう。LINEで済むじゃない、という感想で。それと逆で35歳を過ぎて登場した製品は便利と頭で分かっていても完全に定着しない。私はSNSやクレジットカードを利用しますが、ちゃんと使い出したのは35歳以降です。ですからどこかで無くなっても何とかなるだろうと考えてしまいます。とても不便になるのは分かりますが、大災害などで使えなくなったらなったでその時は対応するでしょう。若いときに存在しない(利用していない)ものは無くても生活を送れるはずだという。
さて本題は滝です。亡くなった父は登山家級の山登りをする人でした。国内は百名山を踏破し、若いときは海外の山にも挑戦していました。雪山で遭難して救助された経験もあったとか。山頂で盲腸(虫垂炎)を発症し、激痛の中自力で下山した時が一番生命の危機を感じたと話していました。そんな父だったので物心つくまえから山登りに連れていかれました。小学校までたくさんの山を登ります。子供心に父の都合に合わせるという感情だったので本心は行きたくありませんでした。最初は家族4人で出かけていたのが、母が来なくなり、姉が来なくなり、私が行かないというと可哀そうという気持ちがありました。その山歩きでたくさん遭遇したのが滝です。大きな滝もありますが、小川に段差がある程度のものから、落差3mくらいのものなど。小学生の時に行った吹割の滝は印象深かったのですが、それ以外は登山の過程に見かける自然の一部でした。
中学校に入ると父と山登りに行くことがなくなります。すると何となく山登りが恋しくなるような自分がいました。中学の林間学校で山登りをすると活き活きしていることに気付き。高校に入ると珍しく山岳部があったので入部してしまいました。大学は競技ダンスと出会ってそれに夢中になり。社会人となり就職した企業が合わず心身を病んで脱サラへ。そこから箱根の自然に魅了されて頻繁に箱根に行くようになります。箱根も幼少期に家族旅行で何度か行っていた場所。会社を辞めた20代半ばの私には忘れていた家族旅行の記憶がフラッシュバックしたかのように蘇り、また好きになったのでした。
そして箱根の山を歩いてみた千条の滝。子どもの頃は特に何も感じなかったのでしょうが、大人になって見た千条の滝はとても素敵に見えました。滝はいいものだと感じるようになっていました。それは幼いときに目にしていた光景を大人になって理解できるようになったからかもしれません。
頻繁に行く箱根エリア。千条の滝の他に有名な滝がもう一つあります。それが「飛龍の滝」です。
名前からしてかっこいい。なかなか飛龍など付けられません。箱根は険しい山々に囲まれた場所。江戸時代は関所が設けられ要所でした。箱根の山を越える、という慣用句があるように箱根を越えることは一大事でした。千条の滝も車道から歩いた山奥にありますが、飛龍の滝はもっと山深いところにあります。そう簡単には行けない分、神秘的であります。
主なアクセスは箱根湯本駅から登山バスにのり畑宿バス停までいきます。タクシーでもマイカーでも同じ。そこから登山道入り口を目指します。この先は自動車では進むことができないので徒歩になります。標準で徒歩約40分とあります。ほとんど登りなので山歩きに慣れていない人では40分ではつかないかもしれません。本当の山道です。ハイキングコースというよりも登山。それくらい険しいです。飛竜の滝のことはずいぶん前から知っていましたが行くのが大変なのでなかなか実行に移さなかったのです。元山岳部の私でも気をつけるレベルです。この道は『飛龍の滝自然探勝歩道』といい、飛竜の滝を過ぎて登りきると国道1号線にでます。自然探勝歩道という名称から侮ることなく、きちんと装備と準備をしていった方がいい道です。Googleマップをみてもほぼ白紙で道が表示されないので、山歩きに慣れていないと相当不安になると思われます。そもそも鎌倉時代に修験者たちの修業の場と伝えられるこの滝。修験道は険しい山中で修業するものですから簡単に歩けるわけではないです。超有名観光地である箱根だからと舐めてかかると驚くくらい険しい道です。
注意はこれくらいにして。険しい道を歩いて到達した飛竜の滝は素晴らしいです。苦労したから見た景色。飛龍の滝は上段15m、下段25mと二段に分かれています。この形が龍が飛揚するかのように見えるから飛竜の滝となったそう。水は下に落ちているのに飛び上がるというのはいかがなものかと思うのですが、そのように見えたのでしょう。神奈川県で最大規模の滝。確かに豪快です。滝の向かい側まで行けるのですが、鎖場となっていて渡るのに最新の注意を払いました。足を滑らせて滑落したら助からないかもという危険度でした。
ここは安山岩質の浅間山溶岩によって造られた滝。滝までの道中に柱状節理(溶岩が冷え固まる時にできた割れ目(節理)のうち、柱状に規則的に割れたもの)が見られます。箱根は現在も活動している火山です。大涌谷は常に噴煙が上がっています。大自然が生んだ景観の一つが飛竜の滝なのです。地学の観点から飛竜の滝や道中を観察するとまた面白いです。
私は畑宿から飛龍の滝自然探勝歩道を歩き、途中飛竜の滝を見てから、国道1号線まで出て芦ノ湖まで歩きました。この登山道は江戸時代でも畑宿と芦之湯温泉を結ぶ近道で、通称「滝坂道」と呼ばれていました。ショートカットできるというわけです。整備された表通りではなく。そんなことを知って歩くと歴史も感じられます。
山の中にある飛竜の滝。箱根でも訪れる人が少ない穴場です。あれだけ都心から近いのに大自然を感じられます。大涌谷とは異なる自然の姿。視界にほぼ人工物がない(鎖や立て看板くらい)景色は貴重です。体力に自信があり、時間に余裕がある方は訪れてください。日が暮れたら遭難する可能性があるので体力だけでなく時間にも余裕をもって。
甲野 功
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