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昨日、『マダム・ローカップ第26回統一全日本ダンス選手権大会』という社交ダンスの競技会がグランドプリンスホテル新高輪「飛天」で開催されました。普段は学生競技ダンス連盟(学連)のことばかり書きますが、この大会はプロの競技会です。現時点において、日本で最も規模の大きい国内戦と考えられます。年に一度開催されて今回で26回目。今回は例年にない大会となり時代が動いたと思いました。
我が国における社交ダンスのプロ団体は分裂・脱退を繰り返してきました。社交ダンスを教える側のプロ。私が東京理科大学時代に所属していた学連はアマチュアであり競技者でした。大学の部活であるので後輩に教えるという意味では指導者でもありますが、基本的には選手です。プロの先生にダンスを教わっていました。職業として社交ダンスをするのがプロです。社交ダンス教室の講師としてダンスを教える、お客さんとデモンストレーションをする、ダンスパーティー等のイベントを開催する、イベントでプロとしてダンスを披露する、そしてプロ同士の競技会に出場する、など。アマチュアは愛好家、競技選手、学連など違いがありますが趣味で行っている人達でした。プロの団体は組織からの脱退による分裂を経て、私が学連在籍時で3団体になっていました。元はJBDFという団体から派生しました。私はプロレスが好きでプロレス団体も分裂を繰り返して団体が増加していったので馴染みがありました。大人の事情という諸々の都合で組織が分かれていくもの。3団体それぞれで競技会を行い、各チャンピオンがいました。私が学連を卒部した翌年の2000年。3団体が一堂に会した「統一全日本ダンス選手権大会」が始まります。JBDF、JDC、JCF。このプロ3団体の選手が集まって競技会を行う。真の日本人一を決めようという。決断でありました。そもそも一緒にやれるのならば分裂しないわけです。おそらく諸々の事情や思惑があっての始まりだったのでしょう。それでも普段は分かれて競技が分かれているトップ選手が同じフロアーで競うという事実にしびれました。
それから四半世紀、25年が経ちました。状況は変わり、より複雑になりました。
現在の統一全日本ダンス選手権大会(以下、統一全日本と表記)は「マダム・ローカップ」という冠があります。その前は「バルカーカップ」と言いました。バルカー工業がメインスポンサーとなり冠として自社の名称をつけました。優勝賞金が高額に跳ね上がりました。しかしバルカー工業はスポンサーを降りて「バルカーカップ」の名称も外れます。現在はバルカー工業主催の独自ダンスコンペティションとなっています。大会形式は変更を繰り返し、今年は社交ダンス以外のダンスも入った他流試合の様相です。ですからある時期はバルカーカップ=統一全日本でしたが今は統一全日本≠バルカーカップであり、マダムロー・カップ=統一全日本です。
そして統一全日本の主催が一般社団法人NDCJ(World Dance Council National Dance Council for Japan)です。NDCJはプロ競技団体を包括する組織。世界に目を向けると世界ダンス議会WDC(World Dance Council)という団体がありNDCJは、このWDCの正会員であり、日本の代表組織になります。NDCJの加盟団体が 公益財団法人日本ボールルームダンス連盟(JBDF)、NPO法人日本プロフェッショナルダンス競技連盟(JCF)です。最初に紹介した3団体のうち2つ。JDCは加盟団体になっていません。近年JDCは統一全日本から脱退したのです。JDCのチャンピオンは統一全日本に不参加となっています。
社交ダンスの競技会に出る/出ない、出す/出さない、の問題はずっとあります。選手側が避けることもありますが主催団体側が出場を認めないこともあります。本当の意味で国内全てのトップ選手が同じフロアーで(同じ条件で)優劣を決めるというのは難しいのです。これは全盛期のアントニオ猪木とジャイアント馬場が対戦しなかったこと、藤波辰爾とジャンボ鶴田が対戦しなかったこと、武藤敬司と三沢光晴が対戦しなかったこと、をプロレスで経験している私は変に納得できます。全盛期の最も人気があるときに対戦させて白黒つけると片方のスターが潰れてしまう。プロとして興行をずっと継続するには団体として守らないといけません。社交ダンス界とは事情が違うのですが、政治的な事情が参加・不参加に関わることは予想できます。
更に2018年に公益社団法人日本ダンススポーツ連盟(JDSF)がプロ部門であるPDを設立します。JDSFは長らく社交ダンスのアマチュア団体としてやってきました。学連も組織上はJDSFの関係団体です。先週観戦した三笠宮杯はアマチュアの社交ダンス競技会の最高峰です。そのJDSFにプロカテゴリーのPDが作られ、既存のアマチュアカテゴリーはGDと称しています。そしてJDSFの上には世界ダンススポーツ連盟WDSF(World DanceSport Federation)があります。日本のJに対して世界のWと最初の文字が変わっていることから分かると思います。WDSFは国際オリンピック委員会(IOC)承認団体で社交ダンスをオリンピック種目にしようと活動をしてきました。先のパリオリンピックでは社交ダンスではなくブレイキンが採用されました。DSはダンススポーツのことで社交ダンスをスポーツとして考えています。ダンススポーツの中に社交ダンスやブレイキンも入るというスタンスです。
JBDF、JDC、JCF、NDCJ、WDC、JBDF、PD、WDSF。似たような横文字だらけで分かりづらいです。書いている私も完全に理解できていません。更に複雑なのがWDCとWDSFは方向性が異なります。WDCは社交ダンスを芸術ととらえ、WDSFはスポーツととらえます。非常に大雑把ないいようですがこのようなイメージです。やっていることは同じ社交ダンスなのですがポリシーが違うというか。WDCはプロ、WDSFはアマチュアという棲み分けが日本ではなされていました。それが東京オリンピックを前に大論争となり、プロ団体が大混乱に陥りました。そのことはここでは触れませんが、知り合いのプロ達の様子を傍から見ていて大変だと思いました。更にアマチュアのJDSFにPDというプロカテゴリーが誕生して。PDの選手は他団体の競技会には基本出場しません。その逆も然り。JBDFからPDに移籍した選手もいて、かつて同じ競技会に出場した選手同士が大会で会わなくなりました。もちろん統一全日本にもPDの選手は出場せず、少なくともPDのトップ選手が統一全日本に出た記憶がありません。このように所属する団体によって出場する競技会が制限されるのが社交ダンス界というもの。日本も世界も同様です。
ところが。何と今年の統一全日本にPDチャンピオンが出場したのでした。先週代々木第二体育館で行われた三笠宮杯。PDスタンダード部門で絶対王者オレクシーグザー・太田吏圭子組が不参加の中、新チャンピオンとなったのが廣島悠仁・大西咲菜組です。今年結成したばかりのカップルですが、圧倒的な実力によって三笠宮杯PDスタンダードを優勝。表彰式で廣島悠仁先生は公開プロポーズを行い、夫婦になることも決まりました。廣島悠仁先生はかつてJBDFに所属しプロスタンダードチャンピオンでした。突如カップル解消をしてダンス界に衝撃を与えました。大西咲菜先生は実兄とずっと組んでアマチュアで活動していました。大西兄妹として地上波テレビ番組にも出演。昨年の三笠宮杯(GD)でスタンダード・ラテンの両部門制覇という偉業を達成したアマチュアチャンピオンでした。廣島悠仁先生と同様、兄とのカップル解消を発表し大きな話題となりました。その二人が今年カップル結成をし、JDSFのPDに移籍したのです。
それを聞いた多くの人は、私もそうですが、層の薄い歴史の浅いPDにこれほどのビッグカップルが移籍するのが残念で仕方なかったです。海外も国内もトップ選手と勝負してもらいたいという願い。PDではその活動は狭まります。三笠宮杯を見る限り、オレクシーグザー・太田吏圭子組がいないこともありましたが、他を寄せ付けないダンスでした。PDでは他の大会、まして統一全日本には出ないからもったいない。そう考えていたのですが、まさかの統一全日本スタンダード部門に出場です。廣島悠仁先生に関しては昨年優勝すると目されていた統一全日本において、チャンピオンの福田裕一・エリザベスグレイ組に次ぐ準優勝でした。統一全日本において9連覇を含む10度チャンピオンに輝いた絶対王者、橋本剛・恩田恵子組が引退し、次の統一全日本チャンピオンは廣島悠仁先生が来ると思っていたのに。その前の競技会では福田裕一・エリザベスグレイ組に勝っていましたし。それを考えると、新しいパートナーでPDに移籍した上で統一全日本に戻ってきたと言えます。そして大西咲菜先生。ずっとダンススポーツの世界で戦ってきました。WDSF系のダンスです。そのアマチュアチャンピオンがWDC系の統一全日本に出場する。どう評価されるのか。現王者の福田裕一・エリザベスグレイ組に勝てるのか。夢の対決です。
大会状況をネットでチェックしていました。
その結果は。
優勝 福田裕一・エリザベスグレイ組
2位 金野哲也・井之口香織組
3位 廣島悠仁・大西咲菜組
でした。ホームであり昨年王者の福田裕一・エリザベスグレイ組が連覇。そして2位には若手のホープ、金野哲也・井之口香織組でした。PDチャンピオンとして出場した廣島悠仁・大西咲菜組は3位でした。この結果をどう捉えるかは難しいところ。組んで数ヵ月しか経っていない廣島悠仁・大西咲菜組が3位まで上がったと考えるのか、個々のポテンシャルを考えれば優勝・準優勝のどちらかだったのではとみるのか。少なくともWDC系のジャッジにダンススポーツで育った大西咲菜先生のダンスがこれだけ評価されたと言えるのでしょう。カップルのキャリアを積んでいけば結果は変わるのではないかと私は期待しています。
廣島悠仁・大西咲菜組は結成したばかりで年齢も若いです。バルカーカップにもエントリーしており、団体の垣根を越えて競技会に出場していくようです。実力もさることながらどんどん慣例にとらわれず競技会に出ていく姿勢に期待しています。今回、統一全日本だけでなく国内社交ダンス界の時代が動いたと思った大会でした。
甲野 功
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