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~絶対に戻ってくるブーメラン~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 絶対に戻ってくるブーメラン
絶対に戻ってくるブーメラン

 

 

最近ネット記事で気になる表現が“ブーメラン”。特大ブーメラン、みたいな使われ方をして、誰かを批判した結果、しっぺ返しをくらうという意味合いで用いられます。もちろんブーメランとは狩猟に使われた投擲する武器。対象物に当たらないと手元に戻ってくるとされます。くの字に曲がった形状をして回転しながら飛んでいきます。何が気になるかというと、ブーメランを比喩で用いるには何か違うのではないかということ。どちらかというと攻撃が跳ね返ってくるように意味合いで記事やSNS投稿で用いられていて、それならばドラゴンクエストに出てくるマホカンタの方がしっくりきます。ドラゴンクエストは世界的に有名なロールプレイングゲーム(RPG)で各種魔法が登場します。マホカンタは鏡のようなバリアを張る魔法で敵が攻撃してきた魔法を反射させて反対に食らわせるもの。攻撃が跳ね返ってくる意味合いならばブーメランより適切なのではないかと思うのです。

 

そもそもブーメランは返ってくるのか?という疑問。私が子どもの頃は駄菓子屋でブーメランが売っていました。もちろんおもちゃです。小学校低学年くらいの私はこれを投げたらマンガのように戻ってくると信じて買いました。当時の少年マンガはブーメランは投げれば必ず戻ってきましたし、くの字に曲がっていれば無条件でブーメラン効果が得られるものでした(具体的な作品を上げると『魁!!男塾』)。子どもの私は期待して空き地で投げましたが曲がるだけで戻ってきません。昭和の頃は過剰広告が当たり前で“絶対に戻ってくる!”くらいの文言が外装に書かれていたものでした。どれだけ投げても近くにも戻らないブーメランのおもちゃを何度も拾いに行った私はブーメランそのものを信じられなくなりました。

 

それから約10年の月日が経ち。私は東京理科大学理学部応用物理学科に入学していました。大学2年生の授業で物理科と合同のものがありました。それは毎回、教授が物理学の実験をしながら学ぶもので、小中学校で外部の有識者が行う理科教室を高度にしたような内容でした。その授業である日、“投げたら絶対に戻ってくるブーメラン”を作る日がありました。絶対に戻ってくる。幼少期の経験から疑わしいと思いつつ、東京理科大学物理科教授が言うのだから嘘は言わないだろうという気持ちで参加しました。出席者でそのブーメランを自作します。長方形の厚紙を2枚十字に貼り付けて端を同じ方向に斜めに折ります。プロペラのような感じ。それを縦にして回転させながら前に投げると自分の所に戻ってくるのです。

原理は揚力を用います。揚力は飛行機が浮上するときに働く力で、翼の形状により翼の上下で気流の差が生まれて生じます。これと同じ原理でプロペラ状のブーメランを縦に回転させて内外で気流の差を生じさせて揚力を生み出します。厚紙を曲げた方向に寄りますが、投げた方向と垂直方向に揚力が生じます。その力は理想上一定なので糸がついて杭に固定されたボールのように円軌道を描いて飛びます。つまりこのブーメランを投げると水平面で円軌道を描いて飛翔し投げた者のところに戻ってくるのです。物理学科ですので運動量mvによって距離(円軌道の半径)が変わるという話になります。mは質量、vは速度。つまり重たい素材にして強い力で投げる(速度を速くする)と運動量は大きくなりより大きな円を描いて飛んでいくというわけです。流体力学と古典力学の内容です。

 

話を最初に戻して、比喩としてのブーメラン。この“投げると絶対に戻ってくるブーメラン”で考えるととても意味深なものに思えてきます。実際に授業でブーメランを投げると確かに自分のところに戻ってくるのです、真後ろから飛んでくるのです。それは円軌道なので当然です。ですから投げたはいいがブーメランを目で追っかけていないと後ろから不意打ちで襲われます。正直怖い。真後ろから、後頭部めがけて、飛んでくるのです。その実体験がネット記事等のブーメランという比喩にやけに合致するなと。真っ直ぐ投げても横に逸れていきます。そもそもブーメランは対象物に当たらなかったら手元に戻ってくるものです。真正面に投げても逸れていく。つまり批判が相手に当たらない。そして跳ね返ってくるのではなく大きく円を描いて後ろから飛んでくる。不意打ちをくらわせるように。安直に批判を投げかけて、その後を確認していないと不意打ちで後ろからやられる。そして強く投げて、重たいものにすれば、より大きな円軌道を描き忘れた頃に戻ってくるのです、後ろから。何かやけに実際と符合するような気がします。

 

大学の一授業ですが印象深くて覚えている“絶対に戻ってくるブーメラン”。それとやけにネットで用いられるブーメランという比喩に違和感を覚えつつも納得できる気もしています。

 

甲野 功

 

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