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~ちの湯「夢の果て、あたなたへ」観劇~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 ちの湯公演 夢の果て、あなたへ
ちの湯にどめまして公演 「夢の果て、あなたへ」を観ました

 

 

昨日は染谷知里さんが主宰する演劇ユニット『ちの湯』の舞台、『にどめまして公演「夢の果て、あなたへ」』を観てきました。

 

ちの湯公式サイト 次回公演

 

作・演出を手掛ける染谷知里さんは女優でNHKの時代劇にも出演経験があります。数年前からの知人です。染谷知里さんは複数の所属がありますが自身が主催する『ちの湯』もその一つ。名前の由来は私の予想ですが知里の“ち”に温泉がすきで“湯”としているのではないでしょうか。『ちの湯』公演はちょうど2年前の2023年12月18日に初公演を観劇していました。本公演は2回目となります。場所は東京メトロ丸ノ内線四谷三丁目駅からすぐのCON TON TON VIVO。地下の音楽バーといったところ。幸運にも自宅から非常に近くて助かります。夜20時開演なので仕事後にいけます。この日が初日で初公演に参加しました。

 

夢の果て、あなたへ

作・演出:染谷知里

出演:五十嵐明(青年座)、諸治蘭南蔵院瑠璃神谷沙奈美

 

会場は本当に狭いバー。満席でしたがざっと20人くらいの観客でしょうか。それでもぎゅうぎゅうです。前回はこんな狭いところで演劇をするのかと驚きました。名門劇団である『文学座』の俳優さんと縁があり、何名か来院しました。その方の出演作を観にいくようになり文学座アトリエや新宿の劇場に足を運んできました。幼少期は親に劇団四季の舞台を観に連れていかれ、小学校や中学校の時は新宿にある新宿文化センターで観劇観賞にも。その経験からしても圧倒的に狭い空間でした。誇大表現でも何でもなく手に届く位置でお芝居をし、文字通り目の前に俳優がいました。その圧倒的な近距離と狭小空間を工夫した舞台造りをしていました。このときも作・演出が染谷知里さんでしたが、更にメインキャストも務めていて八面六臂の活躍とはこのことだという感じ。作中で感じたのは非常に今風の台詞まわし。ファミマの一番くじ、ちいかわ、バグる。ウーバー。これまで観てきた演劇にはない日常の言葉。トレンディドラマを観ているような感覚でした。

 

前回から2年。染谷知里さんの新しい舞台が同じ時期に同じ場所で行われます。その初日公演に行きました。

 

二度目ですので場所も内装も分かっています。中に入ると前回とは異なる舞台セット。厳密には舞台はないのですが。バーカウンターの前にテーブルとイスが置かれて観客が3方を囲んでいます。前回と正面が180°逆。緞帳などありませんから舞台の幕が開くという表現は適切ではなく、前説の染谷知里さんの言葉からスムーズに本番に移行します。

作品のあらすじをホームページに掲載されている範囲で紹介します。主人公ひとみは深夜時間帯だけバーNEMURUでアルバイトをしています。ある日一本の電話を受けて15年ぶりに離れた父が帰ってくることを知ります。バーNEMURUにはほとんど眠らない友人が訪れます。話は主人公ひとみを中心に進むのですが語り手として染谷知里さんが要所要所で登場します。

 

大きなネタバレにならない範囲で気になったことを書きます。冒頭ひとみは一人箱根の温泉に行き、そこで母からの電話を受けて衝撃を受けます。事前情報でこれは染谷知里さんの実体験だと知っていました。実際に染谷知里さんはよく箱根に行きます。私も頻繁に箱根に行くので箱根の情報を教えたことがあります。その描写は実体験をもとにしているので非常にリアルです。電話の内容はずっと疎遠だった父が帰ってくるという。15年も会っていなかった。

 

話は終幕後にとびますがカーテンコールで染谷知里さんは劇の内容は半分くらい自分の体験だと語りました。初日を終えた安堵感なのか目に涙を浮かべて。父と娘の話。奇しくも今年父を亡くし、自身も娘がいる父の立場でもある私にはとても心に響きました。私の父も娘たちと色々な感情があり、死後その複雑さを私は知ることになりました。とても他人事に思えず。応援チケットを買うと冊子をもらうことができ、そこには劇の内幕が書かれているということでした。私は通常チケットで入ったのですが追加料金を支払い、冊子をもらいました。冊子を読むことで多数合点がいきました。

 

今回の劇も等身大で現代的な表現が多かったです。ポッドキャストで生配信をしている。宇宙人に向けて電波を発信しているエピソード。演劇ではなかなか見ない表現です。俳優が目の前にいて物理的距離が無いからできることなのではないでしょうか。一方向から上にある舞台をみる状態では分かりにくい。

また間違いなく染谷知里さんは場所を踏まえて脚本を書いたと思います。あてがきといって特定の俳優が演じることを見越して脚本を書くことがありますが、この場合はCON TON TON VIVOに合わせて書いている。バーの設定。この公演は観客が1杯ドリンクをオーダーしないといけません。つまり席に着いてお酒、ソフトドリンクを飲みながら、飲んでから観劇する。本当にドリンクが出されるバーカウンターを劇で使用しています。観客が飲んでいたコップや瓶が作中に登場する。現実の延長線上に演劇がある。そしてバーカウンターを乗り越えて演技をする俳優。舞台裏というものがほぼない空間でバーカウンターを行き来することで場面展開をはかります

 

前回作品と大きく異なったのはダンサーが登場したこと。コンテンポラリーで動きは完全にプロダンサーでした。あの狭い空間で踊るのは空間把握能力が相当優れていないとできません。資料をみるとやはりダンサーが出演していました。別ジャンルですがダンスを嗜む者としてその技術に感銘を受けます。

 

今回も様々な表現がみられました。小道具、音響、場所の使い方。劇場ではないからできる、やる余地がある。前回と同じようなことはしない。どんな演出にしようかアイデアを出したのでしょう。台詞はすごく現代口語もありながら、染谷知里さんの語る言葉は文学的。詞でした。それは染谷知里さんの内面から湧き出た言葉なのでしょう。あまりにカジュアルな台詞との対比が際立っていました。また最近のコンテンツで多い、全てを説明することがない。夢がポイントでどこまでが夢でどこまで現実なのかが曖昧。そしてその答え合わせをしない。判断は観た人に委ねる。一部難解でどういうことなのか疑問に思う部分も。そして父と娘がどうなったのかは明かされず。

 

私は子どもが夕食を作っていたのですぐに帰宅しましたが、終幕後は会場に残ることもできました。演じた俳優やスタッフとバーで飲食ができる。打ち上げ、観劇後のアフタートークも。場所を提供しているお店も追加注文が入ります。普通の演劇ではできないシステム。本当に手作りでみんなが楽しめる工夫がありました。染谷知里さんの人間力が全面に出た作品でした。

 

甲野 功

 

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