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昨日は池袋シアターグリーンBIG TREE THEATERでProject Nyx第29回公演『宝島』を観劇しました。
こちらは2026年2月6日(金)~2月15日(日)まで公演しています。知人の染谷知里さんが主人王のパネラ少年役をすると知り会場に足を運びました。染谷知里さんの公演は昨年12月にも行っています。
元々演劇界から距離があった私。小学生の時に母親に劇団四季の公演に何度か連れていってもらったくらい。他には学校の演劇鑑賞教室。演劇といえるのか判断できませんが歌舞伎や能、狂言も授業の一環で観賞しました。自ら観劇に出向くような人ではありませんでした。大学に入って学生競技ダンスをするようになり、身体表現をする側を少し経験。社交ダンスを競技として行う競技ダンスの根幹は競争。審美スポーツにカテゴライズされるフィギアスケートや新体操と同様なスポーツ競技。他者との比較で成り立ちます。しかし競技以外でもデモンストレーションという観客にみせることもたまに行います。新入生歓迎イベント、学園祭、卒部イベントなど。その場合は人に魅せるダンスパフォーマンスを心がけます。学生競技ダンスをするようになってから舞台表現に興味が出てくるようになりました。そして今の仕事に就くことになり。パフォーマーの身体をみる機会が出てきます。競技ダンス選手はもちろん、歌手、演奏家、そして俳優。それまで縁のなかった舞台俳優さんとの接点が生まれます。
特に文学座卒の元俳優さんと交流があり、そこから俳優さんの知り合いができました。誘われて舞台を観に行くようになります。やはり文学座の舞台が多かったです。なお当時は文学座とは何?という感じで池袋に新文芸坐という映画館があるので文芸座のことかなと思いました。私は鍼灸マッサージ学生時代に邦画にはまっていた時期があり、多いときで週に4本邦画を観ていました。映像作品の演技にはその頃から興味がありました。しかしそれはスクリーンの向こうの人々。目の前で動いている演技をみるのとは大きな違いがあります。文学座があの三島由紀夫が在籍していたことやテレビでよくみるあの俳優も出身者だったとかを知るようになります。それどころか文学座アトリエは私が生まれ育った東京都新宿区にあり、新宿区の文化財に指定されていました。高校時代はこのそばを毎日通って通学していたのです。まさかの地元に縁があるとは。そんな感じで数年前から演劇との距離が近づいてきます。文学座関係の俳優と知り合いになり、出演舞台を観に行こうとなるとだいたい近所で公演します。新宿、四谷三丁目、文学座アトリエなど。とても助かります。
文学座はその名前の通り文学を大事にしていて台詞が多いそう。劇団四季のようなミュージカルはなく(劇中で“ミュージカルシーン”を演じるはありましたが)、会話劇が中心だそう。台詞もどちらかというと昭和以前の言葉が多い。令和の現代的な台詞はほとんどありませんでした。染谷知里さんが主宰する劇団ユニット『ちの湯』では現代劇で、それも今の言葉がたくさん登場します。スマホでライブ配信するとかコンビニの一番くじだとかが劇に登場します。舞台によって脚本から演出から違いがあるのだと分かってきました。客席が1方向の一般的な劇場しから知りませんでしたが、文学座アトリエは2方向に客席を作ることがありますし、『ちの湯』公演は実際に使われているバーで行うためセッティングが非常に工夫されています。
そんな中、初めての会場である池袋シアターグリーン。そして初めてのProject Nyx(プロジェクトニクス)。どのような舞台なのか。
当然のようにプロジェクトニクスとは何?という疑問。染谷知里さん以外知識ゼロ。事前にホームページで調べると『不朽の名作から知られざる傑作まで、忘却の彼方に漂うイメージに息を吹き込み、現代のパフォーマンスとして蘇らせる実験演劇ユニット。』とあります。続いて『宇野亞喜良の美術・衣装、金守珍の演出を基盤に、新宿梁山泊の水嶋カンナが06年に立ち上げた実験演劇ユニット。』。宇野亞喜良とは誰なのか。当日知るのですが。宇野亞喜良氏はイラストレーターで作中のドレスやイメージを描いている方。何と現在91歳という。そしてプロジェクトニクス主催の水嶋カンナ女史は作中で重要人物を演じていました。更に『宝島』というのは故寺山修司氏が子ども向けに書いた作品『宝島』が元になっています。寺山修司という名前は何となく耳にしたことがありましたが、この人もよく知りません。知り合いの俳優さんの情報を取りに行くとそこかしこに出てくる名前でした。寺山修司氏は昭和を生きた歌人・劇作家であり、40代で亡くなりました。調べてみると昭和10年生まれ。昨年亡くなった父と同じ年に生まれていました。宇野亞喜良氏は昭和9年生まれで、偶然にも父と同世代の人物が関わる舞台だなと思いました。
公演が始まると印象的な誌(散文?短歌?)がセリフとしてあり、また字幕で緞帳に映し出されます。寺山修司役が登場して自身のことを語ります。東京理科大学理学部応用物理学科を卒業した私は根が理科系で、その分文学的な素養がなく社会人となりました。詩人や文学というものから疎い人生。それでもその言葉には琴線に触れるものがありました。またこれまで演劇を観てきて、どれもがだいたいよく分からない話です。失礼かもしれませんが。行間を読むというのが苦手というか好きではなく。理系は何かときっちりと説明、注釈をつける、正解は一つというタイプになります。特に数学、物理を専攻していると。演劇、特に文学的な作品は全てを説明しないものが多くて、結局あれは何だったのだろうと思うことがあります。本作も原作者たる寺山修司が登場して語り、前衛的なコンテンポラリーダンスが繰り広げられ、今回も(自分にとっては)難解なものなのかと開幕当初から感じていました。
一方でこれまで観てきた舞台とは異なり、登場俳優の人数が多く歌にダンスにエンターテインメントショーの要素が強いものでした。私も社交ダンスをするのでダンスのことは分かります。あの舞台の広さであの人数がダンスをするというのは容易なことではありません。特に寝転ぶ振り付けは距離感を掴むのが大変です。バレエの素養があるなと思いました。また演奏と歌。黒色すみれという音楽ユニットだそう。最初は音響を流してあてふりをしているのかと思ったら生歌、生演奏でした。バイオリンの演奏が凄くて本当に弾いていると最初は思わなかったのです。他にもミュージカルパートがあり、子どもの時に観た劇団四季のミュージカルを彷彿させました。よく考えると子ども向けに書かれた作品『宝島』が原作なので内容は少年が宝のありかを示した地図と暗号を手に入れて船で宝島に向かうというもの。分かりやすいです。
またこれまでの舞台と違うのは“ほらふきおばさん”という進行役がいること。強制参加型と称して観客を巻き込みます。舞台の世界から現実の話を織り交ぜます。途中ストーリーの補足をしてくれるので話が頭に入ってきます。ここはお客さんと演劇から離れて対話しながら進めていくエンターテインメントのステージでした。私は2列目端で最前列に人がいなかったのでちょっと声をかけてもらいちょっと教えてもらいました(何を教えてもらったのかは秘密で)。他にもマジックあり、ギャグあり。本当にこれまで観た作品とは違っていました。
緞帳を降ろしてその前で舞台が続く。その間に舞台セットを変えていく。暗転を使わずに流れを途切らせない構成。
メイクが濃く、衣装が凝っていました。ずいぶん登場人物が多いなと思いましたが、あとでパンフレットで確認すると複数の役を一人で担っていました。同じ人が演じているかが分かりません。それだけメイクと衣装がいいのでしょう。カーテンコールで演者が並んだ時に、少ないと思ったのです。
セリフ、アクション。歌、ダンス。演奏、マジック。お客との掛け合い、グッズ販売への促し。文章、衣装。本当に多岐に渡るエンターテイメント要素が散りばめられていました。最後に撮影タイムがあるのも初めてでした。よく芸人さんがテレビ番組で「板付き」という言葉を使います。板の上、すなわち舞台に立つ。スタジオ収録で効果音やテロップをつけた編集されるものではなく、観客を目の前にしてライブで芸をみせる板付き。その意味が分かる気がしました。一方向からの観客を前に歌い、踊り、演奏し、語り、演じる。裏では舞台転換、衣装交換、役を変える。修正することができないライブを数十人でやる。舞台俳優達の力量を感じられます。テレビの向こうの人ではなく目の前で動く人。人間力がダイレクトに伝わります。社交ダンス経験者であり、人の身体をみる仕事をする者として、とても感じます。いい体験ができました。
甲野 功
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