開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:[email protected]
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202

開業してから3年くらい経ってからでしょうか。鍼灸専門学校への進学希望者に対して相談に乗るようになりました。最初はFacebook経由でメールが届き。その後様々な相談が寄せられ、院まで来て話を聞く人が出てきました。ある方は専門学校入学後も進路相談を続けていきます。そのうち進学前、在学中のサポートを経て免許を取り、開業するところまでいった元学生さんが出てきました。この活動は現在も継続中で、進学前から当院に来て相談や勉強をしている鍼灸学生さんが何名かいます。
先日当院で行ったセミナー後に食事に行きました。そこで質問がありました。「お金を持っている人が鍼灸を受けてもらうようにするにはどうしたらいいでしょうか?」というもの。前後の内容を補足すると、自由診療(保険を使わない実費の施術)は1回につき数千円から万を超えることが相場の鍼灸。やはり、ある程度お金を持っている層(富裕層)でないと鍼灸を受けてもらえないと質問した学生さんは考えている。そうであればお金持ちが鍼灸を受けるようにする、継続して来てもらえるようにするには何をしたらよいでしょうか。そのような意図での質問です。
私はその場で回答をしましたが、しっかりと考えて掘り下げた方がいい質問だと思います。
まずお金持ちとは。富裕層と言われる人たち。細かい話ですが資産持ちとお金持ちは若干違います。例えば土地や株券、金塊などを多数取得している資産家。確かに富裕層でしょう。しかしここに挙げた資産はすぐに現金化できません。今すぐ買い物したいからといって使えるお金ではありません。土地の売買は相当な手間と時間がかかるでしょう。株式や金塊の売却も少なくとも数時間から数日はかかるのではないでしょうか。何が言いたいかというと富裕層でもすぐに使えるお金がある人を対象にしないといけません。可処分所得という言い方をしますが、自由に使えるお金があることが大事です。どれだけ給料が良くてもそれぞれに事情により自由に使えるお金がない人もいます。
次に鍼灸にお金を使える人でないといけません。鍼灸に対する可処分所得がある。ここが大事で、例え月に100万円を自由に使える富豪がいたとしても、鍼灸にはお金を使いませんという人ではいけません。個人的な経験則ですがお金を持っている人はこだわりがあり、本当にお金を使う所を見極めます。衣服は着られればいいやと安い服をずっと着ているが、投資には数百万円くらい平気で動かす。食べ物に興味がなくいつも安く済ませるが、旅行に行くお金は気にしない。そんな人種が多いように思います。車には数千万円かけるがスーパーの値引き品を率先して買う。真のお金持ちは見た目から分かるようなことはあまりしない。目立つと身の危険があるかもしれません。芸能人のように自分を広告塔にする仕事であれば分かりますが、本当にお金がある人はかなり見た目や日常は質素です。
そして鍼灸にお金を使う人でないといけません。どれだけ自由にお金を使えたとしても鍼灸に使おうと思う人でないといけません。人によっては鍼灸を受けることが100円であっても10円であっても高いと感じます。むしろ、鍼灸を受けるからお金をください、そうでなければやりません、という場合もあるでしょう。無料でもダメ。鍼灸師の私が言うのも問題があるかもしれませんが、もともと鍼灸が苦手だった私だから書きますが、このような人はいます。国家資格でいいものだと私は信じますが、鍼が刺さる恐怖、皮膚の上で艾が燃える恐怖を強く覚える人がいます。私のようにあん摩マッサージ指圧師になるために鍼灸師もついでに取得したような人間もいて、若いときは本当に鍼が嫌でした。お金の有無ではなく、鍼灸を絶対に受けたくないという人がいるという選択肢を頭にないといけません。
そうすると諸々条件が出てきます。まず鍼灸を受けることに抵抗がない、受けてみたいという人がいる。その人が数千円ほどのお金を支払うことができる(受けてもいいが数百円しか払いたくないではダメ)。かつ術者のやり方を気に入る、納得できる人。これまでの経験上、万人が気に入る鍼灸施術方法は無いと思います。それだけ多種多様な技術があります。そして術者そのものとの相性も関係します。このように条件を挙げていくとどんどんハードルは高くなります。できれば経済的に余裕のある層が住んでいて、他に競合がいないため自分にしか選択肢が無く、かつ鍼灸の理解があり、術者である自分を気に入ってくれる人が多くいるところ。そういうところで仕事をすればいいでしょう。更にその層に向けた広告、広報活動をする。
このようなことを書き上げても理想論に過ぎません。鍼灸を受けてもらう入り口部分をあれこれ考えても具体性に欠けるのです。環境が良いのかは蓋を開けてみないと分かりません。可能性ばかりを述べても学生さんには絵に描いた餅です。何よりそれができるならば私がやっています。家賃の条件を考慮しなければどうとでも言えます。
というわけで、数千円から1万円くらいの鍼灸施術料を支払ってくれる患者さんが定着するにはどうしたらいいか、という条件に狭めて考えてみます。技術とか内装とかそういうことも挙げられるのですが、私が学生さんへの回答は“話がおもしろいこと”でした。ある程度自由にお金が使えて鍼灸にもその金をかけられる人。そのような人は知的好奇心が強いと思います。これは私の経験則ですが。そういう方は効果があるのはもちろんのこと、話していて楽しい、面白いと思ってくれると継続してくれるようです。この楽しいとか面白いという表現は芸人さんのような話術があるということではなく知的好奇心を満たすという意味になります。相手に話をしていてためになる、勉強になった、また話をしたい、という経験をさせる。
日本の医療機関は「3分診療」といった言葉あるように、待ち時間が長く診てもらうのは短時間という現状があります。全ての症状がそうとは言いませんが、どんどんこなしていかないと業務が回らないのは確か。実費の鍼灸院が生き残る手段として、話をじっくり聞いてもらえる、ということがあります。当院も最も短いコースで30分。時間を取ります。一瞬で効果を出せるので鍼を1本刺して3分で終わらせて4000円とできればいいのかもしれませんが、できませんしする気もありません。じっくりと患者さんと向き合うことがしたいです。長いと2時間施術を行うことがあるので会話が大事になります。話したくないという方には話しかけませんが、肌感覚で鍼灸にお金を使う人は話すことが好きです。自然と学ぼうという姿勢があり、だからお金が手に入るような。そのような人には話す内容を工夫します。対話、ディベートがしたい場合が多いような気がします。私が分からないことがあれば質問して理解しようとします。こちらから意見を述べることもします。上手な相槌を打って話してもらうこともできますが、お金を持っている人はこちらの意見や情報を求めていると感じます。余裕がある。
また次も話したい。そう思わせることが、“鍼灸にお金を払ってくれる人”に響くと考えます。じゃあ話を面白くするにはどうするのかというのはまた別の話で。
甲野 功
コメントをお書きください