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先日紹介した、4月30日に開催された社会保障審議会医療保険部会における配布資料、『いわゆる「部位転がし」に関する調査について』。
タイトルに明確に「部位転がし」という文言が出ていることに衝撃を受けました。今回はこの調査資料から厚生労働省がどのような視点を持っているか紐解いてみます。
調査対象としたのは国保連合会、市町村、後期広域連合、協会けんぽ、健保組合とあります。「保険者」というのは保険証を運営しているところと思っていただければ。企業に勤めいてその企業が健康保険をしていれば勤め先の企業が「保険者」になります。「保険者」の区分として挙げた5種類があります。そこも軽く説明しましょう。
国保連合会とは国民健康保険団体連合会のこと。各都道府県の国民健康保険事業の運営が共同して目的を達成するために設立された公法人。各都道府県内の市町村や国民健康保険組合(国保の「保険者」)が会員となっています。
市町村というのは都道府県及び市町村(特別区を含む)が「保険者」となる市町村国保を指します。主に自営業、フリーランスなどが対象となります。上記の国民健康保険組合は業種ごとに組織されるから構成に対して、市町村国保は居住地で決まります。
後期広域連合は後期高齢者医療広域連合のこと。75歳以上(または65歳以上の一定の障害者)が加入する後期高齢者医療制度を運営するために、都道府県ごとに設立された特別地方公共団体となります。
協会けんぽは正確には全国健康保険協会といいます。企業独自の健康保険組合を持っていない、主に中小企業の従業員とその家族が加入する団体です。
健保組合は健康保険組合のこと。いわゆる大企業で企業独自で保険を運営できる「保険者」の組織です。
整理すると企業が保険を運営する「保険者」の団体が「健保組合」と「協会けんぽ」で、前者は大規模な企業で単独で保険運営ができ、後者は中小企業。
税金により運営するのが「後期広域連合」、「市町村」、「国保連合会」で、「後期広域連合」は後期高齢者が非保険者、「市町村(国保)」は自営業・フリーランスが非保険者、「国保連合会」は特定の業種・職種ごとに被保険者がまとまっている。
あとこの調査では対象になりませんでしたが、公務員や私立学校教職員が加入する「共済組合」もあります。
大まかにこんな感じです。
「部位転がし」の調査において、ほぼ全ての「被保険者」に向けております。これは各「保険者」で対応が異なる可能性があるかを調べているのでしょう。私が整骨院勤務時代も協会けんぽ、健保組合は保険請求が厳しいということを耳にしたことがあります。そして各「保険者」のカテゴリーに対して「部位転がし疑い」の審査を行うための抽出条件が主に4類型あるとしています。
①受療期間に着目するもの
②新規の負傷(部位)に着目するもの
③初検料に着目するもの
④その他
後期広域連合だけ④その他がありませんでしたが、残り全て4類型を抽出条件としています。言い換えると、④その他は特例と考えて、①受療期間、②新規の負傷部位、③初検料がポイントになると考えられます。調査方法は調査票をメールで送付しているので。「部位転がし」というのは請求する書類内容から考えないといけません。本当に内容通りの負傷ケースがあるかもしれません。それが偽装しているのかを確認するために注目すべきこと。
まず遅々として治らない。柔道整復受療費は急性外傷が対象です。何か月も何年も治らずずっと接骨院に通うというのは不自然です。これが①受療期間。
新規の負傷部位が多かった場合。大きな転倒をしたとして右肩関節と右手首を同時に捻挫するでしょうか。確かに考えられます。しかし加えて右股関節も捻挫する。これはどうも不自然さがあります。また何故か同じ日に2部位(2ヵ所)捻挫して、翌日また別の部位も捻挫する。できすぎた怪我にみえます。これらのように②新規の負傷部位に関して注目する。
あまりに長期間請求すると怪しまれるので(不自然なので)、意図的に一度治癒にしてしまう。そしてまた別の部位を負傷したことにする。これが「部位転がし」です。その際に改めて負傷した場合は初見料を請求します。よって③初検料に注目すると「部位転がし」なのか否か考察できるわけです。何故か負傷してから3ヵ月目の月末に治癒し、翌月の初めに別の部位を負傷したとして初検料が請求されている。
各「保険者」はレセプト(診療報酬明細書)の内容に不備があったり疑わしいと判断したりした場合は返戻(へんれい)といって、突き返して訂正を求めることがあります。柔道整復師の請求業務に返戻対応が入ります。返戻をするかどうかに「保険者」の姿勢がうかがえます。この調査はひと月程度の短い期間での調査ですから全体がそうとは言えませんが、「部位転がし疑い」を抽出した後の対応として、後期広域連合は返戻の割合が少なく、協会けんぽと健保組合は多い数字になります。また療養費不支給としたケースはほぼありませんが、各カテゴリーでその他(患者調査中、注記文書送付)、その他(患者調査中、国保連へ相談予定、再審査中)、その他(照会・警告文書送付、面接確認委員会で面接、患者照会中)がかなり多い割合になります。疑わしいので調査をするという姿勢が見受けられます。なお健保組合ではその他ではなく患者照会中のみ。被保険者は自社の社員及びその家族になるでしょうから照会するのが容易だと考えられます。直接確認できるわけです。
そして重要だと思うのが、<「部位転がし疑い」の申請内容の例>の項目。疑いとしているのは確実な不正だと言えないだけでかなり怪しいという請求例でしょう。例は詳細に報告されており、どんな意図で請求しているのか私は分かります。そして「保険者」側もかなり見ているなと分かります。「部位転がし疑い」は3つのケースに分類しています。
1.負傷と治癒を繰り返す
2.一定期間ごとに部位を変更・ローテーション
3.その他
各々具体例を出していて、よく分かっていると感じます。例えば後期広域連合の【1.負傷と治癒を繰り返す】に分類された例。
『・月初負傷月末治癒を1ヶ月毎に繰り返す(負傷名はバラバラローテーション・2部位死守)』
療養費請求はひと月毎にするのが一般的なので月初めに負傷し、月末に治癒することが望ましいのです。後期高齢者のお年寄りが、怪我がずっと治らないなら病院に転院させるべきです。だからひと月で治癒にしてしまう。しかし請求はしたので毎月のように月初に負傷して月末に治ったことにする。同じ場所を負傷するのは変ですから負傷名を変えている。繰り返すので負傷名がローテーションしている。更に負傷ヵ所は2部位であることを死守している。レセプトに死守などと記入するはずがないので、アンケート結果を答えた後期広域連合のコメントでしょう。“死守”などという表現をしているところに請求内容のいびつさを感じているのと、必死に部位数を2にしてたくさん請求したいんだろうねと見透かされている印象を私は受けます。
この調査報告は非常に短い期間のもの。調査方法を確立して今後は大規模な長期間での、いわゆる「部位転がし」に対する調査、を行うのではないでしょうか。
甲野 功
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