開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:[email protected]
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202

5月23日~5月25日に行われた『AMASHI fes 2026 in 熱海/あマ指をアップデートする3日間』(以下、あましフェス)。メインデーが日曜日の5月24日でした。この日は午前中からイベントが開催されました。バーベキューパーティーを経て午後に行われたのが
『隣の芝生はどうなっている?? あマ指専科の実技デモンストレーション』
でした。
あましとはあん摩マッサージ指圧師のあん摩・マッサージ・指圧の頭文字をとったもの。漢字・カタカナ・平仮名にすると“あマ指”です。あましフェスの参加者はあん摩マッサージ指圧師かあん摩マッサージ指圧専門学校の学生、あるいは進学希望者、そして業界に興味がある方です。
私は鍼灸師も持っているあん摩マッサージ指圧師になります。あん摩マッサージ指圧師と鍼灸師を3年間で取ることができる鍼灸マッサージ科(通称、本科)がある専門学校がほとんどで、あん摩マッサージ指圧師だけの科(あマ指専科)がある学校は日本に3校しかありません。視覚支援学校を除く晴眼者の専門学校ではあん摩マッサージ指圧師だけを取るとなると3校のいずれかに行くことになります。その3校が
・浪越学園日本指圧専門学校(以下、浪越)
・総本山長生寺長生学園(以下、長生)
・京都仏眼教育学園京都仏眼鍼灸理療専門学校(以下、仏眼)
です。
この実技デモンストレーションは3校の卒業生が同じ患者像に対してどのようなアプローチ方法で向き合うのかをみるもの。専門技術の内容になっています。想定する症例は「筋筋膜性腰痛タイプ/長時間デスクワーク型」としています。架空の患者、38歳・男性・会社員(IT系)がいるとして以下に示すような条件があるとします。
主訴:腰部の鈍痛・重だるさ(3年前から)。
発症契機:在宅勤務開始後に悪化。
痛みの特徴:長時間座位後に増悪動き始めに強く、動くと少し楽になる。
生活状況:1日8~10時間座位・運動習慣なし、睡眠は確保できている。
身体所見:腸腰筋・中殿筋・脊柱起立筋に著明な緊張と圧痛、股関節屈曲制限(軽度)。
医療機関:整形外科受診済み、画像上は異常なし、「筋肉の問題」と説明を受けている。
目標:痛みの軽減、仕事中の不快感を減らしたい。
この情報から何を読み取るのか。専門用語が多数登場しますが国家試験を突破したあん摩マッサージ指圧師なら理解できる内容で、特に難しい症例とは言えません。
この条件で実技をみせるのがお三方。
・横山奈央先生:SuNao院長。長生卒。
・岡本菜己先生:菜奈あんま指圧マッサージ院(按摩指圧傳左衛門)院長。仏眼卒。
・黒澤一弘先生:紡指圧院長。浪越卒業。
この順番で施術をみせていきます。
トップバッターの横山奈央先生は長生術を用います。長生では独自の長生術という技術を教えており、最近まで外部にはよく分からない技術でした。私がその存在を知ったのは割と最近のこと。脊柱の調整という江戸時代以前の日本ではあまり無かった技術体系を確立しています。横山奈央先生は親も長生卒だそうで、学園卒業五は父に弟子入りしたとのこと。2022年に独立しています。
施術前に患者役をベッドに座らせます。骨で支えられれば痛くないといいます。脊柱、骨盤、仙腸関節の状態を把握します。仙腸関節を真ん中に持ち上げさせて仙骨ではなく股関節で座るようにしたい。胸部をたてて頭部を支えられるようにしたい。デスクワークの人は前鋸筋を緩めて胸骨をたてるようなイメージ。このような方針でした。
技術的な特徴として、よる・つめると表現していましたが、背骨を動かす時に皮膚を寄らせて、止めて、一つ圧を入れる。四指側で土手を作り寄せてあげて母指で当てる。リズムを4拍。1、2、3ではなく1、2、3、4。細かいところですが私にとってはとても興味深いものでした。
そして膝頭(ひざがしら)という技。筋肉を緩めた上で、背中に術者の膝頭を当てて背骨を動かすもの。アメリカのカイロプラクティックに近い技術があり、非常に稀な技術です。かつては長生外に見せることは無かったといいます。客観的に膝頭の技術を見られたのは大きな成果でした。
二番目は岡本菜己先生。仏眼卒。仏眼は元々視覚障害者支援から始まった学校で視覚障害者(かつて盲人といった)の按摩技術が継承されています。また関西伝統指圧という関東とは違う指圧方法を学んでいます。特に岡本菜己先生は松浦英世先生から学んだ按摩術に誇りを持ち、按摩屋さんと自負しています。
岡本菜己先生は晴眼者(視覚障害がない)ですが技術は視覚障害者(盲人)按摩の特色があると思います。晴眼者の按摩というと吉田流按摩があり、これは東京医療福祉専門学校で継承されています。私はそこのところも興味があって研究しています。
最初の横山奈央先生はベッドを使用しましたが岡本菜己先生は布団で行います。布団は落ちることがなく安全と。視覚障害者の按摩師もベッドは危険なので布団で行うことが多いようです。岡本菜己先生はAKAの素養もあります。AKAとは医師、理学療法士が用いることがある関節に対するアプローチ方法です。私は鍼灸マッサージ教員養成科時代に習いました。そのテクニックを入れつつ、輪状揉捏と母指押圧で筋肉を緩めていきます。また親指と人差し指のまたで腸骨稜に圧を入れて揉捏する動きがありました。コツとして筋肉の起始と停止を近づけて圧を入れるということを話していました。
私が気になったことは、岡本菜己先生が膝立ちで押す際に立っていない足の向きが膝立ちの足と90°向きがついていることでした。私は母校の呉竹指圧をするのですが膝立ちの体勢では足の向きは同じで平行にします。岡本菜己先生のように直角にしません。そういうやり方もあるのかと思いました。
最後は黒澤一弘先生。浪越卒で浪越指圧をします。それ以前に私と同じ東京理科大学を卒業していますし、東京呉竹医療専門学校教員養成科の先輩でもあります。2つの学校で先輩です。あん摩マッサージ指圧師ですが解剖学に長じており東京呉竹医療専門学校と東京都立大学で非常勤講師をしています。太極拳の素養があり脱力に強いこだわりがあります。
浪越指圧はほぼ母指だけで押圧します。つまり母指圧に特化した技術。創設者の浪越徳次郎氏はマリリン・モンローにも指圧をしたという逸話を持ち、世界や世間にうって出た偉人。その浪越指圧で黒澤一弘先生は引きの指圧、コントロールされた痛覚、というキーワードをあげます。身体意識、身体操作に独特なものがあります。私は過去に何度か講義を受けて、実際に指圧を体験しています。そのため話していることはかなり頭に入るようになりましたがまだまだ理解しきれないところがあります。特に意識面。押すという動作に精神面を加える。浪越徳次郎氏の「指圧の心は母心」というものに通じます。意識の使い方を研究しないといけません。
分かりやすい話では患者がうつ伏せのときは手を回内、横向きのときは回外するというもの。なるほどなと思いました。また業界状況として理学療法士との競合ということがでてきました。なぜ理学療法士とあん摩マッサージ指圧師が業務上競合するのかという話は横に置いておいて、黒澤一弘先生は勉強の平均値は理学療法士に勝てないと言います。普段医師を相手にしているわけです(医療機関で働いていない理学療法士がいるじゃないかという意見も横に置いておいて)。それをはっきり言うのはより深く解剖学を学んでいるからなのでしょう。
長生、仏眼、浪越をそれぞれ出たあん摩マッサージ指圧師の実技。鍼灸を持たない。私の場合はあん摩マッサージ指圧師でありますが鍼灸師、柔道整復師の要素も加わります。徒手療法一本で生きている先生方の特徴が比較できる素晴らしい企画でした。昨年の私のテーマである“按マ指を探求する”に合致しています。細かい部分も踏まえてあん摩マッサージ指圧とは?という問いに向き合う時間でした。
甲野 功
コメントをお書きください