開院時間
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土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
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電話:070-6529-3668
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昨年11月のことですが、東北の適格消費者団体がある整骨院の施術を「治療」と称する広告について検討し同院の広告には医師法違反の問題があると判断し、整骨院側に照会書を出しました。その結果、整骨院は「治療」という表現が「施術」に書き換えるとともに、適格消費者団体が医学的根拠に基づくものかを照会した広告の表現は全て削除されたことが発表されました。
私は業界の法律や判例、ガイドライン等を調べてきました。ところが適格消費者団体なる存在も知りませんでした。このような組織があり、整骨院に対して是正勧告ができることも知りませんでした。どのようなことが起きたのか調べてみました。
まず、今回発表した『消費者市民ネットとうほく』は内閣総理大臣認定の適格消費者団体であり、消費者の安全・安心な生活を送る権利が守られる社会の実現に向けて活動しているといいます。
内閣総理大臣認定適格消費者団体認定 NPO法人 消費者市民ネットとうほく
ここで適格消費者団体について。
適格消費者団体とは、不特定かつ多数の消費者の利益を擁護するために差止請求権を行使するために必要な適格性を有する消費者団体として、内閣総理大臣の認定を受けた法人のこと。内閣総理大臣の認定という強い根拠のもと、差止請求権を行使できます。それだけ適格であるということでしょう。認定有効期間があり認定は更新世です。全国に27団体しかありません。今回登場する消費者市民ネットとうほくがその一つ。消費者庁ホームページに情報が公開されています。法人番号が1370005003910で宮城県仙台市にあります。今年1月に適格消費者団体への認定申請を行い4月8日に更新されました。また認定有効期間は、令和14年4月24日までとなっています。
ことの発端は令和6年(2024年)11月21日に仙台市にある整骨院に対して、ホームページ上の広告が広告規制に抵触しており問題ではないかと、消費者団体市民ネットとうほくに情報が寄せられたため、照会書を送りました。
内容を抜粋すると以下の通り。
『
1 貴院のホームページでは「その場しのぎの治療ではなく、怪我を根本的に治すことを実践しております。」との紹介文が掲載されておりますが、貴院は医師の資格をお持ちの方が運営しているのでしょうか。医師の資格がない場合には、その施術を「治療」と称して、医療行為類似の施術を提唱していることは、医師法に抵触する可能性がありますが、この点はどのようにお考えでしょうか。
2 貴院のホームページでは、アスリートコース(プロおよびアマチュアスポーツの競技者のための治療)を設けているとのことですが、その中の以下の記述は、どのような医学的根拠に基づくものでしょうか。貴院が提唱するこれらの効能の医学的根拠をご教示いただくとともに、参考になる文献等があればご紹介をお願いたします。
(1)筋肉に見合う血管量にすぐに増やすことが可能
(2)関節の周りの小さな関節軟骨(いわゆる「関節ねずみ」)や小さな骨片を徹底的に取り除く
(3)座骨神経に起こる神経異常を完全に消去する
』
照会内容について掘り下げてみましょう。
まず1については、ホームページに「治療」という表現をしているがこれは医師法違反に抵触する可能性があるが、医師免許を持つ者がいるのか、いない場合は医師法違反の可能性についてどう考えているのか、と問いています。医師法とは医師に関する法律なのですが、医師免許を持たない者が医業を行うことや医師であるかのように振舞うことを規制しています。当然ですが偽医者が人に薬を投与したり外科手術を行ったりしたら大事故になりかねません。法律で禁止します。そして医師という社会的責任が非常にある職種であるため、非医師があたかも医師のように見せかけることも禁止しています。ここまでは常識の範囲でしょう。そこに「治療」という言葉が課題になります。“治療”は医師にしかできない行為であるから、ホームページに「治療」という文言を用いるのは医師法違反になる。「施術」と置き換えるべきだと。この件はずっと問題になっていて、医師側は治療という言葉を医師以外が用いることを禁止すべきだと訴えることが多いです。一方、施術という単語を辞書で調べると“治療のこと”と書かれていてほぼ同じ意味。また国の出した過去の文章には鍼灸師等の非医師の行う行為を「治療」と表現した事例があります。
余談ですが冨樫義博氏の少年マンガ『HUNTER×HUNTER』において少年ジャンプ掲載時に敵キャラの台詞に「治療」とあったのが単行本になってから「施術」に変更されているケースがありました。フィクションの、しかもファンタジーの内容でも、医師が行っている事ではないから治療ではなく施術に言葉を変えた方がいいと集英社が判断したのでしょう。
業界状況を説明しておきます。令和6年(2024年)11月当時ですと、まだ「あはき・柔整広告ガイドライン」が正式施行されていません。このガイドラインを作る際に治療という文言について話し合い(広告検討会)が持たれていて、あはき柔整(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師)において、各免許の者がその業務内容を頭につけた場合の治療は認めるという方針に至りました。そのため当院はあじさい鍼灸マッサージ治療院と治療が入った屋号ですが、鍼灸マッサージが前に来ることで医師が行っていることではないとはっきり分かるので構わないという会議の結果でした。また「あはき・柔整広告ガイドライン」ではホームページは広告にあたらないという判断をしています(※医療広告ガイドラインでは医療機関のホームページは広告にあたるとしている)。2024年11月当時の状況を加味すればある程度納得できるのですが、ホームページの「治療」という言葉を用いることが医師法違反になるのではないかという質問はやや疑問が生じます。それよりも2が本題のように感じます。
『
(1)筋肉に見合う血管量にすぐに増やすことが可能
(2)関節の周りの小さな関節軟骨(いわゆる「関節ねずみ」)や小さな骨片を徹底的に取り除く
(3)座骨神経に起こる神経異常を完全に消去する
』
整骨院が提唱する上記の表現について、どのような医学的根拠に基づくもの説明し、参考文献等の明示を求めています。医学知識のある者であればこれらの内容は疑問しかないでしょう。血管量?血液量の誤りかもしれませんが、血管量を増やすというのは血管を太くするとか本数を増すということでしょうか。血管が再生することはありますが意図的にすぐに増やすことなど、再生医療などを行わないか限り、不可能でしょう。関節軟骨や小さな骨片を徹底的に取り除くというのは外科手術を行うしかないように思われます。坐骨神経(※照会書には座骨神経とありますが解剖学用語としては坐骨神経が正しい)の神経異常を完全に消去できたら医学上の大発見ではないでしょうか。これらの効能を謳う医学的根拠を求める。それがなければ医師法違反になるのではないか。どちらかというと「治療」という言葉を使うより、こちらの方が問題だと私は考えます。
適格消費者団体消費者市民ネットとうほくは照会書書面が到達したら2ヶ月以内に回答を書面で送付するように頂きますようお願いしています。そして
『貴院のご見解をうかがった上で、今後の対応を検討したいと考えております。』
と文面をしめています。
その後、整骨院から回答が得られなかったため、令和7年(2025年)3月31日に要請書兼照会書を送付します。
「要請書兼照会書」
内容を抜粋します。
『
<要請事項>
貴院のホームページでは「その場しのぎの治療ではなく、怪我を根本的に治すことを実践しております。」との紹介文が掲載されておりますが、貴院は医師の資格をお持ちでない方が運営しているものと思料されます。医師の資格がない場合には、その施術を「治療」と称して、医療行為類似の施術を提唱していることは、医師法に抵触する可能性がありますので、今後は、貴院の広報等において「治療」と称するのはお控えいただくよう要請いたします。
<照会事項>
1 貴院のホームページでは、アスリートコース(プロおよびアマチュアスポーツの競技者のための治療)を設けているとのことですが、その中の以下の記述は、どのような医学的根拠に基づくものでしょうか。貴院が提唱するこれらの効能の医学的根拠をご教示いただくとともに、参考になる文献等があればご紹介をお願いいたします。
(1)筋肉に見合う血管量にすぐに増やすことが可能
(2)関節の周りの小さな関節軟骨(いわゆる「関節ねずみ」)や小さな骨片を徹底的に取り除く
(3)座骨神経に起こる神経異常を完全に消去する
2 貴院は、「神経交換」と称する施術により「神経を新しいものに作り直す」と述べるとともに、「神経ばかりではなく、血管、筋肉繊維、軟骨も新しくする」として施術の効能を宣伝しております。これらは、具体的にどのような身体的な変化を生じさせるものかをご説明いただくとともに、その医学的な根拠をご教示ください。
』
整骨院から回答が無かったため令和6年度末に更に文書を送付しています。その内容は要請事項として「治療」という言葉を使わないように“要請”しています。整骨院ですから医師がいるとは考えにくいですし、確認をとったのでしょう。医師法違反の可能性があるとして「治療」という言葉を変えるように要請しています。前回は照会だけでしから2通目は要請事項としています。
照会事項については項目が追加されています。「神経交換」と称する施術により「神経を新しいものに作り直す」と述べている。また「神経ばかりではなく、血管、筋肉繊維、軟骨も新しくする」として施術の効能を宣伝している。これらの内容について具体的にどのような身体的な変化を生じさせるものかの説明とその医学的な根拠を求めています。「神経を新しいものに作り直す」というのは現代医学でも実現不可能な領域です。抹消神経が再生することは知られていますが整骨院での施術によって新しいものに作り直すことは医学知識上不可能と思われます。さらに血管、筋肉線維(※照会書には筋肉繊維とあるが筋肉線維が正しい)、軟骨も新しくすると。医学知識があれば常識ですが筋肉は細胞分裂をほぼしないので新しくなりません。筋肉に癌がほとんどなく、肉腫という悪性腫瘍は成長期の若年者に好発することが知られています。それができたらアスリートの寿命は飛躍的に伸びているはずです。再生されないのが肉離れが選手生命に致命的なダメージになるのです。軟骨も再生しないことで有名です。膝の軟骨が再生されないから高齢者はすり減って膝が痛くなります。再生医療で軟骨の再生に向けて研究が進んでいますが、整骨院の施術で新しくできるとは到底思えません。
令和7年(2025年)3月31日時点であはき・柔整広告ガイドラインが施行されています。それとは別に医学的根拠に乏しいと思われる宣伝に対して、具体的な身体変化と医学的根拠を求めています。文面の内容からより本気度を感じます。最初の照会書を無視された形でより厳しく追及しているように。
これに対して整骨院側は令和7年(2025年)5月22日に回答書を出しています。
「回答書」
抜粋します。
『
要請書兼照会書への回答
① 広報において全て治療を施術に書き換える
① 照会事項に記載されている表現を削除する。照会事項は世界中の本格治療を実践するエリート医療者の共通認識と思っていましたが、当院では色々と思う所があり、今後専門知識の説明や広告をしない方針に変更します。
※参考までに、ご指摘の大半の医学的な根拠は東大病院の論文や、アメリカ国籍のエリック・カンデル博士(ノーベル生理学・医学賞受賞)などにも記載がありますので、もし興味があれば調べてみてください。当院もこれらを参考に研究していました。
② 3ヵ月以内に新ホームページを作り、9月末までに差し替えいたします。何かご不満等があればお手数ですがその都度ご連絡ください。
』
ここで整骨院側は、『広報において全て治療を施術に書き換える』としています。広報と広告は別のものだと私は考えていますが、広報においてという条件で「治療」という言葉を全て「施術」に書き換えると回答しています。そして前回の要請書兼照会書で指摘されていた内容について削除すると回答しました。ただ『照会事項は世界中の本格治療を実践するエリート医療者の共通認識と思っていましたが』と、何かそちら無知なだけで“エリート医療者”はみんな知っていることですよ、と言わんばかりの文章があります。また『当院では色々と思う所があり、今後専門知識の説明や広告をしない方針に変更します。』と“色々と思う所があり”という理由で削除を決めています。更には『※参考までに、ご指摘の大半の医学的な根拠は東大病院の論文や、アメリカ国籍のエリック・カンデル博士(ノーベル生理学・医学賞受賞)などにも記載がありますので、もし興味があれば調べてみてください。当院もこれらを参考に研究していました。』としていますが、具体的な文献名や論文名、文献のURLなどを一切記載しておりません。
制度上のことかもしれませんが、整骨院からの回答書内容を公開するというのも厳しい処遇だと私は感じました。
この回答書を受けて、またホームページの確認をした上で令和7年(2025年)11月27日に整骨院にたいして終了通知書を出しています。
「終了通知書」
これにより1年間続いた整骨院に対する広告表現の指導が終了しました。
整骨院の指導命令が柔整師法で認められているのは保健所(厚生労働省)、所轄の都道府県知事です。それ以外に広告面で消費者庁以外に適格消費者団体も指導することができることを知りました。内閣総理大臣認定ということで想像以上に権限があるのだと感じました。今回の報告はタイトルだけ見ると「治療」という言葉は整骨院では使えません、といっているようにみえて、中身はかなり踏み込んだ具体的な広告内容への指導です。照会という形を取っていますが、実質指導ととれます。本当に医学的根拠があるならばそう回答すればいいわけですが、そんなことはないだろうという感じがします。認識していなかった団体とその機能。適格消費者団体のことを知りました。
甲野 功
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鍼灸師 (月曜日, 22 6月 2026 12:29)
鍼灸師です。いつも甲野先生のブログ記事から大変勉強させていただいております。
当院のサイト内においても適切な表記に努めたい為、初めてコメントさせていただきます。
本記事内に
あはき柔整(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師)において、各免許の者がその業務内容を頭につけた場合の治療は認めるという方針に至りました。具体的には「鍼治療」は構わないが「治療」は不可という。
との記載がございます。
私も「〇〇鍼灸治療院」の屋号で鍼灸院をおこなっており、当院サイト内においても「鍼灸治療」と表記しており「治療」単体での表記はしておりません。
ですが今回改めて下記資料の最終決定を確認しましたが、言及されているのは施術所名が「〇〇治療院」はNGで「〇〇鍼灸治療院」はOKである、ということだけであり広告物(ウェブサイト)に「治療」の表記はNGで「鍼治療」はOKであるという記載は見当たりません。
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001412674.pdf
私自身も思い込みをしているのかもしれず、甲野先生は検討会を公聴されていたとのことで、「治療はNG・鍼治療(鍼灸治療)はOK」は検討会で出ていただけの案である(本記事は誤記)なのか、上記資料以外の厚労省見解の最終決定であるのか、知見をご教示頂けないでしょうか。
あじさい鍼灸マッサージ治療院甲野功 (月曜日, 22 6月 2026 21:23)
鍼灸師さん
細かいところまでお読みいただきありがとうございます。
ご指摘の件があはき・柔整広告ガイドラインに「鍼治療が可能である」という表記があるわけではございません。X上に
厚生労働省「統合医療」情報発信サイト[eJIM]
@eJIM_PR
というアカウントがあります。
そこで以下のようなポストが存在しております。
https://x.com/eJIM_PR/status/2067366692968403347
『
過敏性腸症候群に対して、鍼治療と偽(シャム)鍼治療を比較した研究では、鍼治療は偽鍼治療を上回る有用性を示しませんでした。
https://ejim.mhlw.go.jp/pro/communication/c03/11.html
#厚生労働省eJIM
』
ここでは鍼治療と書いております。このサイトでは過去に何度も「鍼治療」という表現で投稿しており、訂正される様子が確認できません。
厚生労働省の名前を持つアカウントが「鍼治療」という文言を使っているため、またそれを確認してから数年経過しているため、”治療は認めていないが、鍼治療は使用している(=厚生労働省は認めている)”と判断しております。
また数年前にX(当時はTwitter)上でこの疑問を投げかけましたが回答するものはおりませんでした。厚生労働省の名前が付く公式アカウントが使用しているならば禁止していないと判断して文章に掲載しました。
しかしこの文章の流れですと広告検討会で認められたような意味合いに読み取れますので文章を訂正いたします。
鍼灸師X (火曜日, 23 6月 2026 20:06)
早速の回答ありがとうございます。訂正の旨承知しました。
提示いただいたXを確認いたしました。たしかにその記載がございます。
頂いたURLとご回答を確認したうえで私は、
・一般的な日常用語の呼称として「鍼灸治療」と呼ぶのは適切
・提供者側が広告宣伝として「鍼灸治療」という表記は不適切の可能性あり
なのかと考えました。もはや言葉狩りに近いですが。
我々はこのたった漢字一文字や「治療」と「施術」という表記の違いなど細かいところがシビアに気になりますが、厚労省・行政としてもコロナ禍で休業要請の対象としてあはきを医療分類にしながら、別資料では「鍼灸治療が医療と紛らわしい」などの表記が混在しており、厚労省の通知として発した情報でも担当者ベースでの認識が統一されていないように感じます。
開業に伴う保健所の私の担当者はあはき法を何も理解していない形骸化した対応が行われました。
甲野先生の昭和35年判決や医業類似行為に対する記事は非常に勉強になります。昨今のKINMAQ訴訟をはじめ業界についてメスを入れて発信頂いている先生方には頭があがりません。
ウェブ上に残るため、名乗らずに匿名でのコメントで申し訳ございません。
引き続きブログ記事を拝見させていただきます。ご対応ありがとうございました。