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~有印私文書偽造疑いで尼崎市鍼灸師の再逮捕報道~

神戸新聞ホームページ 偽造書類で療養費23万円を詐取疑い 尼崎の鍼灸師の男を再逮捕 より
神戸新聞ホームページ 偽造書類で療養費23万円を詐取疑い 尼崎の鍼灸師の男を再逮捕 より

 

 

先週、鍼灸師の男が再逮捕されたというニュースがありました。

 

神戸新聞ホーム 2026/7/2 20:10

偽造書類で療養費23万円を詐取疑い 尼崎の鍼灸師の男を再逮捕

 

地方紙のニュースです。内容は以下の通り。

 

兵庫県警尼崎南署は1日、詐欺と有印私文書偽造・同行使の疑いで、尼崎市の鍼灸(しんきゅう)師の男(40)を再逮捕した。

 

逮捕容疑は、昨年3月~今年6月、同市内の医師が作成したとする書類3通を偽造した上、全国健康保険協会(協会けんぽ)兵庫支部に療養費の支給申請書類として提出し、現金約23万円をだまし取った疑い。調べに容疑を認めているという。同署によると、男は6月、市に偽造した療養費の支給申請書類を提出した疑いで逮捕され、その後、起訴された。

 

偏見かもしれませんがこの手の逮捕報道は圧倒的に柔道整復師が多く、鍼灸師が逮捕されたことが驚きです。兵庫県の尼崎市で起きた事件です。医師が作成する書類を3通偽造。それを用いて協会けんぽに療養費の支給申請を行い現金約23万円を騙し取った疑いです。現金とありますが、実際には療養費として支給されたものでしょう。

この報道を目にしたのがつい最近でした。よく見てみると“再逮捕”とあります。つまり鍼灸師の容疑者は既に逮捕されていたわけです。更に遡って調べてみると以下の報道がありました。

 

神戸新聞ホーム 2026/6/11 16:00

偽造書類で架空の施術費を請求疑い、40歳の鍼灸師の男逮捕 尼崎

 

先月6月11日にリリースされたニュースです。

 

兵庫県警尼崎南署は10日、有印私文書偽造・同行使の疑いで、尼崎市の鍼灸師の男(40)を逮捕した。

逮捕容疑は、2024年6月~昨年6月、同市内の保険医2人が作成したとする書類5通を偽造した上、療養費の支給申請書類として市に提出した疑い。調べに容疑を認めているという。

同署によると、市が申請書類を精査した際、保険医の作成が確認できなかった。架空の施術費を受け取ろうとした疑いがあるという。

 

地名、警察署、容疑者の在住地、容疑者の年齢、そして鍼灸師という職業が一致しているので同一人物の事件と判断して間違いないでしょう。報道によれば鍼灸師の容疑者は2024年6月から2025年6月の機関に尼崎市内の保険医2名が作成したとされる書類5通を偽装。それを療養費の申請書類として尼崎市に提出したといいます。尼崎市の方で申請書類を精査したところ、保険医の作成が確認できなかったという

この報道にある6月11日段階では偽造した書類が5通で、実際に療養費が支給されたかは書かれていません。まず虚偽の、保険医が作成汰ものではない、書類を作成した容疑で逮捕。その後、警察が捜査を進めて7月2日の報道では保険医が作成したとされる書類3通を偽装して療養費申請を行い、約23万円を実際に受け取っていたと判明したようです。6月の逮捕では起訴されていて、再逮捕へ。容疑者は容疑を認めているとあるので報道通りの犯行を行ったのでしょう。

 

これだけの情報では詳しいことが分かりませんが、一般的な状況を説明し予想してみます。

最初にこの手の逮捕が(鍼灸師に比べて)柔道整復師が多いと書きましたが、それは療養費のシステムが違うからです。柔道整復師は急性外傷(具体的には骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷)の処置に関しては療養費を保険者へ申請することができます。ただし骨折と脱臼については応急処置は別としてその後の施術を行うには医師の同意が必要になります。見方を変えると捻挫、打撲、挫傷では医師の同意が無くても施術を行い、それにかかった費用を療養費として請求することができます。柔道整復師の療養費不正請求は慢性症状や疾患ですらないものでもこれは捻挫だとして療養費を請求することが大多数です。そこに水増しとか部位転がしだとかの不正テクニックが派生します。

 

鍼灸師の場合は特定の疾患・症状に対して“医師の同意があれば”療養費を請求することができます。これには医師の診断と、この症状は鍼灸師によろしくお願いしますという医師の同意がないと療養費が認められません。療養費は健康保険なので鍼灸師の療養費と医師の治療に両方使うことができません。医師が同意するということは、その症状では病院などの医療機関では保険が使用できません。つまり医師が鍼灸師に同意書を書くと、その症状においては医療機関(病院など)で診察や治療をすることができなくなります。もちろん健康保険を用いず実費ならできますが、今の日本で美容整形や歯科など一部を除いて保険を使わないということはまずありません。そのため医師の同意が取りづらくなります。

柔道整復師の場合、骨折・脱臼の応急処置後の施術では医師の同意が必要ですが捻挫などには同意が必要ないので療養費を不正請求しやすいわけです。

 

おそらく逮捕された鍼灸師は医師が作成しなければいけない同意書を偽装し、それを保険者(この場合は協会けんぽこと全国健康保険協会の兵庫支部)に提出し、それが通り、鍼灸の療養費として現金を協会けんぽから支給されたのではないでしょうか。本来医師が作成する文書を偽装して作成することが有印私文書偽造で違法行為であり、更にそれを用いて虚偽の療養費を支給されたことがあはき法違反なのか詐欺なのか分かりませんが違法行為になるのでしょう。2段階で逮捕されたのはこういうことなのではないでしょうか。

更に細かくみると報道では“保険医”と表記されています。保険医とは、健康保険法に基づいて厚生労働大臣の登録を受け、公的医療保険(保険診療)を適用した医療を提供できる医師のことです。単に医師国家試験に合格して医師免許を取得した者は医師ではありますが保険医ではないのです。保険診療は行う保険医になるには、初期臨床研修を修了した上で管轄する⁠地方厚生(支)局に登録手続きを行う必要があります。おそらく鍼灸師の容疑者は実在する保険医の名前を騙って書類を作成したのではないでしょうか。そしてその保険医が実際にはそのような書類を作成していないことが発覚した。

 

私は鍼灸師として(あん摩マッサージ指圧師としてもそうですが)療養費を請求したことがなく具体的なことが分かりません。柔道整復師の請求業務はよく分かっているのですが。ただ鍼灸師の療養費請求は柔道整復師に比べてハードルが高いことは知っています。個人的な感想として、よくもまあ書類を偽造しようと思ったものだ、と呆れます。20年近く鍼灸師をしていますがこのような事件は初耳です。誰もやろうとは思わないと考えていました。さらに個人的な考察ですが、容疑者が自らこのような不正を思いついたのかどうか。誰かに偽装工作を指南されたのではないかという疑念があります。ローカルニュースであまり話題になっていないように感じますが、非常に重大な事例だと考えています。

 

甲野 功

 

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