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~鍼の話 鍼に痛みは必要か~

過去に実際にあった出来事です。


ある重い症例の患者さんが鍼治療を希望しました。

最初に受け持ったのは私とは別の鍼灸師でした。その鍼灸師は効果を出すために、神経パルスという方法を選択しました。神経線維に鍼を当てて、そこに交流通電を行う、低周波パルス通電と言われる方法です。深い位置にある神経を狙うため太くて長い鍼を使用し、神経に当てるために何度も位置を変えて行ったそうです。この方法は神経にダイレクトに刺激が行くので強烈な痛みを伴う場合があります
それは電撃様と称される、電気に感電したかのような鋭い痛み。私自身、授業で坐骨神経や脛骨神経で受けたことがありますが、我慢できるレベルではなく声が出て反射的に体が逃げてしまいます。

 

患者さんはあまりに痛みが強いので別の鍼灸師でも試したいと、たまた時間が合った私の時間に予約を入れてきました。


問診時にそのことを聞いていたので、私は筋パルスを選択しました。これは神経ではなく筋肉に鍼通電させる方法で血液循環を高める効果があります。何より神経パルスよりは患者さんの負担が少ないものと考えられたのです。

 

鍼治療後、患者さんから
あまりに痛さが違うので同じ鍼治療なのに(同じ種類の鍼、通電機器を使用している)なぜこれだけ痛みがちがうのですか?
と質問されました。

 

私は
あなたの症状は、既に説明を受けたと思いますが、かなり重いです。一般的な鍼治療で効果があるというデータはほとんどありません。神経に直接刺激を与えた方が、効果の出る可能性が高いと判断して、○○先生(別の鍼灸師)は神経にダイレクトに当てる方法を選択したのだと思います。
私は身体が拒否するほど痛み刺激が出ると体が拒否を起こして悪影響があると考えて、神経よりも(痛み)刺激が少ない筋肉を狙いました。
ただし神経の方が効果を出す可能性は高いように思います。話した感触でメリットよりもデメリットの方が上回ると考えてこの方法を選択しました。
と話しました。

 

個人情報なので病態や状況を不明瞭にして書いていますが、
・痛みを伴うが効果が出る可能性を高めるか
・効果が出る可能性が低くなるが患者さんの負担を減らすか
この相反するジレンマに対面したわけです。


別の鍼灸師は前者の効果を求め、私は後者の患者さんを重視したと言えます。
どちらが正しい選択なのかは分かりません。

 

私が何回か鍼治療をしましたが、改善はほとんど認められず、しばらくして別の医療機関に行ったようです。

 

細かいことは書けませんが、その患者さんは最初の病院の処置に不満があり、鍼なら何とかしてくれるのではないかと期待して来ました。症状は一般的には、鍼灸師が扱うレベルの症例ではありません。それでも望みをもって来ていただいた患者さんに特に効果を実感してもらえることは無く終わってしまいました。

 

この出来事によって「鍼に痛みは必要か?」という命題を突き付けられた気がします。

 

鍼治療には響きひびき)といってズーンと刺した場所以外まで刺激が伝わるような、重い鈍い痛みのような感覚があるものです。
この響きがなければ効果は出ないと考える鍼灸師がいます。良薬口に苦し、ではないが弱い刺激では弱い効果しか得られない、だから少し患者には我慢してもらってがっちり刺すことが良い、と主張する。過去にはっきりと「No Pain,No Gain(痛み無くして効果得られず)」と言う講師にも出会いました。

 

反対に、鍼に痛みは必要ない、優しい鍼をすべきだ、と言う先生もいます。痛みは身体の交感神経を高めて治癒能力を下げてしまう。鍼は痛いものだと思われては効果が出ない。痛みのない刺激(それくらい繊細な刺激)で効果を出すのが腕の見せ所だ、と語るのです。

 

患者さんの立場からすると、響きが無い刺激が弱いのではやってもらった実感が無くて効かない気がする、どんどんやってくれ、というスタンスの人もいれば、極力痛いのは避けて欲しいという人もいます。
ケースバイケースと言ってしまえはそれまでですが、臨床においては色々な選択を迫られ、何が正しいのかはっきりと分かりません。

 

私個人としては鍼に痛みは要らないと考えています。自分自身が鍼を受けるのが好きではないことが大きいのですが、医学的には患者さんに鍼を刺入する侵害刺激を与えているという現実をみたら、せめて不必要な痛みは避けるべきと考えるわけです。

 

これは鍼灸師の主義主張がありますから、正解はないと思います。

 

ただし、患者さんにとって一番良いと思う方法を模索しないことは不正解ではないでしょうか

 

甲野 功

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