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~灸の話 逆子の灸~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 逆子治療に使うツボ
逆子治療に使うツボ

 

WHO(世界保健機関)が効果を認める鍼灸治療の症例の一つに逆子があります。


逆子とは妊娠して母体の中にいる胎児(赤ちゃん)が、本来頭を下にして収まっているはずが、頭を上になっている状態を言います。


出産(分娩)時、通常胎児は頭から出てきますが、逆子の場合足から出てくることになるのです。逆子の出産では頭が引っかかってしまうので自然分娩が困難になります。足を引っ張って出すので腕が伸ばされ、引き抜き損傷と言われる腕の運動障害が起きることもあります。出産時のリスクが高くなるため、現在では逆子になった場合、帝王切開(メスで子宮を切って胎児を取り出す分娩方法)を選択することがほとんどなのです。

 

妊婦にとっては逆子を元の正常位に戻して帝王切開を避けたいと考えます。理由は幾つかあります。
・身体にメスを入れることを避けたい。
・日本では、お腹を痛めて産んだ自然分娩への信仰が強い。
・メスを入れた体は年齢を重ねたときに不調の原因になりうる。
・一度帝王切開を行うと次の出産も原則帝王切開になる。
・帝王切開をすると次の出産まで時間を空けなければならない。
といったことが言われます。


帝王切開では麻酔科で行うため、陣痛の苦しみはないのですが、切開した傷跡は麻酔が切れれば痛いといいますし、跡が残ることを気にする方もいるようです。また、更年期を過ぎたあたりから傷跡が原因で不調をきたすことがあると言われております。私は初診問診時に出産経験があるのであれば自然分娩か帝王切開かを聞いています。

 

そしてこれは実際に言われた話です。

30代半ばの妊婦さんに逆子治療を依頼された際に、子供が3人欲しいので年齢的に間を空けずに妊娠したいので帝王切開での出産を何とか避けたいので逆子を治してほしいと言われました。

 

このように逆子そのものよりも、帝王切開が問題になるのですが、胎児が逆子になればそれを治したいというのが妊婦さんの希望です。

産科医師や助産師には徒手操作で逆子を回転させる手法があるようですし、逆子体操というものもあります。それら以外に伝統的に効果があると言われてきたのがお灸なのです

 

最も有名な方法は至陰という経穴(ツボ)にお灸を据える方法です。
至陰は足の小指の先、爪の付け根の外側にあります。ここに艾を捻った直接灸を据える、あるいは温灸で温めます(直接灸の方が昔から一般的です)。

鍼灸師ならば『逆子の灸=至陰』と誰もが頭にあるとても有名な方法です。私も治療院で直接灸をほとんど使いませんが、逆子治療で至陰に灸をするときは必ず直接灸にしています。比較的効果は高く、私が実際に見ることができた症例において全員が成功したとは言えませんが8割くらいは逆子が戻りました。至陰の灸は標準になります。

 

至陰に加えて三陰交(内くるぶしから指三本分上の部分)や陰陵泉(膝下、脛の内側で、骨の縁をたどって止まるところ)も使うことがあります。この2つは膝上の「血海」を加えて婦人三穴と言われる婦人科疾患の特効穴です。更に足の裏にある湧泉を使う場合もあります。湧泉は妊娠出産に関係する腎経の最初の経穴であります。

 

ここまで紹介した経穴は全て足にあります。なぜお腹にいる胎児に対して足の経穴を使うのでしょうか?

 

まず逆子になる原因について。
科学的な原因は解明しておりませんが、東洋医学では足が冷えることで起きると考えます(他の説もあり)。頭寒足熱という言葉がある通り、身体は頭を涼しく、足を温かくすると健康になりやすいのです。
妊婦さんの足が冷えると胎児は冷えを嫌って、頭を上にしてしまうのです。実際に逆子の患者さんの足を触ると、冷えて浮腫んでいる場合があります。お灸で足を温めることで胎児の頭を下に持ってこさせようというわけです。

 

足にはたくさんの経穴があります。至陰が第一選択になるのは何故でしょうか。

それは経絡や陰陽の考えによるのです。


出産に大きく関わるのはの臓。ですから腎経、脾経の重要な経穴を使うことで効果があると考えられます。しかし腎経、脾経はに属し、収縮させる作用があります(陰陽論)。子宮が収縮すると流産に繋がります。特に三陰交は子宮収縮の効果が高いとされ、妊娠初期に三陰交に強い刺激を加えると流産する恐れがあると言われています。

ですから、できれば陽の経絡を使いたい

 

陽経でありながら陰経に効果がある経穴、それが至陰なのです。至陰は字のごとく“陰に至る”経穴。陽経である足太陽膀胱経に属します。胎児に効果があり、負担を強いない経穴として至陰が選ばれるというのが定説です。

 

同じ理由で陰陵泉よりも陽経でツボの四天王的な存在(四総穴)でお腹全般に効果がある足三里を使用することもあります。また、今回は場所を示しませんがふくらはぎの「飛揚」を使う人もいます。飛揚は絡穴といって陽から陰に連絡している経穴なのです。


安全性ならば陽経、効果を考えれば陰経の経穴といったところでしょうか。

 

逆子になった場合、お灸を試すことを勧めます。
(ただし、逆子が治ってもまた逆子になることはあります。私の次女は3度逆子になり、3度治して自然分娩で出産しました。)
逆子になったら鍼灸師に相談して損はないと思います。

 

<参考 経穴の場所、教科書の記述より>
至陰 BL67 足太陽膀胱経の井金穴 足の第5指爪根部近位線に引いた線と外側縁に引いた線との交点に取る。
三陰交 SP6 足太陰脾経 内果尖の上方3寸、脛骨の内側縁と後脛骨筋との間に取る。
陰陵泉 SP9 足太陰脾経 合水穴 脛骨内側縁を指頭で撫で上げたとき、指が止まるとに取る。
湧泉 KI1 足少陰腎経の井木穴 足指を屈曲して、第2・第3指の間のみずかきと踵を結ぶ線を3等分し、みずかきから3分の1のところに取る。
足三里 ST36 足陽明胃経の合土穴、四総穴、胃の下合穴 腓骨頭の直下と脛骨粗面下端との中間。前脛骨筋中に取る。

医道の日本社 新版経絡経穴概論 より

 

甲野 功

 

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