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~WHOの分類に伝統医療が入るというニュース~

1月9日の産経ニュースで以下のような記事が出ました。
漢方薬や鍼灸など「伝統医療」WHOが認定へ 日本の漢方、地位向上へ

この記事は鍼灸界にとって朗報と言えそうです。どのようなものか見ていきましょう。

以下記事開始

漢方薬や鍼灸(しんきゅう)など日本や中国の伝統医療が、今春にも開催される世界保健機関(WHO)の総会で認定される方針であることが8日、関係者への取材で分かった。具体的には、国際的に統一した基準で定められた疾病分類である「国際疾病分類」(ICD)に、伝統的な東洋医学の章が追加される。100年以上、西洋医学一辺倒だった世界の医療基準の転換点となるとともに、中国と異なり独自に発展してきた日本の伝統医療の再評価につながる。

 

関係者によると、WHOが伝統医療に注目したのは、同機関で扱う医療の統計が西洋に偏り、伝統医学での治療に依存しているアジアなどでほとんど統計が取られていないとされる「情報格差」を埋めることが目的にあるという。

ICDは1900(明治33)年に初めて国際会議で承認、日本でも同年に採用された。約10年ごとに改訂され、現在は全22章から成るが、日本や中国などに根差した「伝統医療」が新しい章として加わる。病名や患者の体質を示す「証(しょう)」が約300項目記載されるという。

 

ICDの作成にも携わった千葉大の並木隆雄診療教授(和漢診療学)は「WHOに公式に認められれば、日本の伝統医療の地位向上に役立つ。科学的な調査のもと、漢方の有効性も検討でき、成果は国民に大きく還元される」と話した。

 

日本の漢方は古代中国に起源があるものの、西洋医学と融合し、中国とは運用方法や処方の作り方も異なるなど独自の発展を遂げた。鍼灸も奈良時代に漢方とともに伝えられ、「日本の医療」として進化。特に中国はボールペンの芯ほどの太い鍼(はり)を使うが、日本は髪の毛ほどの細い鍼を使うところに特徴がある。

 

病気に対し狙いを絞って対処する西洋医学に対し、東洋医学では、病気は全身の体内バランスが崩れて起こるという考えを持ち、同じ症状でも患者の体質によって治療を変える。日本では昭和51年に147種の漢方エキス製剤が医療保険に適用。漢方医学は平成13年から医学教育に、14年からは薬学教育にも導入された。

以上記事終わり

 

世界的な機関であるWHOが「伝統医療」を認めたという内容です。
WHOが認識している伝統医療とは何を指すのでしょうか。記事の本分を読むと“日本や中国などに根差した”という修飾があるので、確実に東洋医学を指しているとは思います。それと“証(しょう)が約300項目記載される”という言葉からも東洋医学を指しているようではあります。ただしもしかすると、鍼灸よりも漢方が中心のなのかと推測しています。その理由はあとで述べます。

 

具体的に何が変わるのかというとICDに「伝統医療」の項目が追加されるということ。ではICDとは何か。詳しくみていきましょう。

ICDとは国際疾病分類の事です。国際疾病分類(International Classification of Diseases:ICD)は、死因や疾病の国際的な統計基準として、WHOによって公表されている分類であり、死因や疾病の統計などに関する情報の国際的な比較や、医療機関における診療記録の管理などに活用されています。


ICDは当初、第1回国際死因分類として1900年に国際統計協会により制定され、現在の最新版は1990年の第43回世界保健総会で採択された第10版であり(後に2007年版として改定が行なわれている)、ICD-10となっています。
第7版からは死因だけでなく疾病の分類が加えられ、医療機関における医療記録の管理に使用されるようになったいるとのこと。なお今回の改訂でゲーム障害という項目も増えるというニュースも出ています。

 

現行のICD-10を具体的に示すと以下の通り。
1 感染症・寄生虫症
2 新生物
3 血液・造血器疾患および免疫機能障害
4 内分泌・栄養・代謝疾患
5 精神と行動の障害
6 神経系の疾患
7 眼および付属器の疾患
8 耳および乳様突起の疾患
9 循環器系疾患
10 呼吸器系疾患
11 消化器系疾患
12 皮膚・皮下組織疾患
13 筋骨格系・結合組織疾患
14 腎尿路生殖器系疾患
15 妊娠・分娩・産褥
16 周産期疾患
17 先天奇形、変形および染色体異常
18 症状・徴候・異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの
19 損傷、中毒およびその他の外因の影響
20 傷病および死亡の外因
21 健康状態に影響を及ぼす要因および保健サービスの利用
22 特殊目的用コード
このようになっています。


22個の大項目の下に中項目、小項目がありかなりの数の分類があります。

統計を取り研究するためにICDがあるわけですから、ここに記載されるということは研究対象になると言えるのでしょう。西洋医学(現代医療)だけでなく東洋医学(伝統医療)も研究対象にするということになるのです。

 

記事には鍼灸の地位が向上するとありますが、その点について私は少し懐疑的です。

漢方は飲み薬ですからバイアスがかかりづらく(術者の技術差がほとんどない)研究対象にしやすいでしょうが、鍼灸は考え方も技術も大きな広がりがあり、はたしてまとまるのでしょうか。中医学(中国の東洋医学)と経絡(日本の伝統的な鍼灸)でも主導権争いをしていますから。記事にある証の項目も、どのように分類するのか気になるところです。


大学病院麻酔科で勤務した経験から言えることですが、医師は証が分かればそれにあった漢方薬を一覧から選んで処方します。つまり証が決めることが漢方薬に繋がるのです。ICDで統一の基準で証分類ができることでこの統計を取りやすくすることが狙いなのではないかと思うのです。


以前書きましたが漢方は経絡(気の流れ)をあまり考慮しなくても構わないので(気の多寡は考えますが)西洋医学の医師が入りやすいのです。反対に鍼灸師は、むしろ経絡で考えることが多いです。

 

そう考えると漢方メインの分類になるのではないかと予想してしまいます。
それでも伝統医療がWHOに評価されて東洋医学的見地が世界に認められてば、このニュースが鍼灸師にとって追い風になるのではないでしょうか。もちろん蓋を開けてみないと分かりませんが。
追い風になる分、在野の鍼灸師にも鍼灸師を養成する学校機関にも医学的責任がついてまわることになるでしょう。

 

甲野 功