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~言葉のみで伝える~

先日、ひとり芸日本一を決めるショーレース「R-1ぐらんぷり2018」において、ほとんど目が見えない盲目の漫談家・濱田祐太郎氏が優勝しました。
このことは世間の大きなニュースとなりました。

 

視覚障害者のお笑い。視覚障害者を笑いにしてよいのか。

そのような議論を投げかける出来事です。R-1ぐらんぷり優勝者には全国ネットのテレビ番組出演が約束されていますし、今後もメディア露出が増えると思われる濱田氏。色々な議論が出てきそうです。

 

世間では、濱田氏が生まれつきの病気により左目は全く見えず、右目も明るさがわかる程度であるというほぼ全盲という漫談家、ということがクローズアップされていますが私の業界では彼があはき師(あん摩マッサージ指圧師、鍼師、灸師)の資格を持っていることが話題になりました。つまり鍼灸師、マッサージ師がR-1で優勝!という感じですね。

 

 

先月行われた私の母校にあたる東京医療専門学校鍼灸マッサージ教員養成科卒業論文発表会。そこに今年も足を運びましたが、閉会の挨拶で齊藤秀樹校長が話していた内容が思い返されます。実は同じ内容を昨年も語っていたのですが、盲学校の研究発表についてです。


ここで言う盲学校とは視覚障害者が通い、鍼灸やあん摩マッサージ指圧の勉強を行い、国家資格を取るための学校を指します。視覚障害者の就業支援も兼ねており、晴眼者(目が不自由なく見える人)の鍼灸専門学校とは趣が異なります。

 

母校東京医療専門学校の卒業論文発表会には例年、盲学校の教員も聴講に訪れています。反対に齊藤校長も盲学校の発表会に足を運びます。
盲学校の発表にはパワーポイントも紙も使いません。一切を言葉のみで行うそうです。目が見えない生徒がいることが前提ですから当たり前といえば当たり前なのですが、齊藤校長はその発表にとても感銘を受けているようです。

言葉のみで伝える。情報量は絶対に少ないはずなのに状況が頭に浮かびすっと入ってくると言います。


私もそうでしたが東京医療専門学校の発表はパワーポイントを使用しますし、事前に抄録集が渡されて文字情報を見たうえで話を聞きます。もしも言葉だけで行うとなると、このような機材を使って、このような体勢で実験を行い、など全てを説明しないといけません。画像もグラフもパワーポイント特有のアニメーション機能も一切使えないわけです。
想像するだけで大変な発表になることでしょう。

 

一言「こちらをご覧ください」で済むことを、自らの言葉にして説明する。この尊さを齊藤校長は2年連続で話しました。ある程度は盲学校から来てくださった先生への謝辞を込めたコメントであるかもしれませんが、繰り返すということはそれだけ大切なことなのだと私は受け取りました。

 

濱田氏はR-1の舞台でも話していましたが視覚支援学校(盲学校)に通い、国家資格を取得しました。もしかしたら同じように言葉で研究発表を行ったかもしれません。
そう言えば濱田氏のスタイルは漫談であり、効果音や動き、奇抜な衣装などに頼らず言葉だけで勝負するものです。
R-1ぐらんぷりでも言葉だけの芸で優勝したことが、先月の齊藤校長の話に繋がりました。

 

言葉のみで伝える。それは普段の臨床現場でも大切なことです。
患者さんを治療するときは大半もしくはほとんど患者さんがうつ伏せの状態で行います。人間の体は背面に大きくと強力な筋肉のほとんどがあるからです。例外は太ももの前に着く大腿四頭筋ぐらいでしょうか。
どうしても背面に施すことが多くなります。その場合、患者さんは下を向いていますから言葉のみで説明することがあります。重要なことは顔を上げてこちらを見てください、と視覚に訴えますが、それほど重要でない説明や雑談は言葉のみです。

 

患者さんは視覚情報が無い中で私の言葉を聞き判断するのです。技術もさることながら、言葉や会話がうまく使えないと信頼関係ができず治療効果があがりません。
顔の表情も見えないため、言葉選び、話のトーン、スピード、説明の流れなどを注意して行う必要があるのです。

 

私が国家資格を取ったばかりの頃、当時の職場の院長が「お前の声は安心させる」と褒めてくれたことがあります。また同じ時期に読んだ本で医の三種の神器というのが出てきて、一にメス、二に薬、三に言葉、というものでした。会話や言葉、声がとても大切なのだと学んだものでした。
10年以上前のエピソードとここ半月の出来事が線で繋がっていました。

 

言葉の持つ力、重要性を再認識させられました。

 

甲野 功

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