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~アフター「鍼灸の日」・鍼灸受診率を上げるために 他と比較する~

去る4月9日は”しんきゅう”で「鍼灸の日」。

一般社団法人「日本鍼灸協会」が鍼灸の受診率を向上させようと2017年に認定しました。2年目となる今年は昨年以上の規模でイベントが開催され、マスメディアにも報道されました。
その一部が東スポwebの記事です。敢えて一般的に知名度のある東スポを選びましたが、他にも多数メディアが報道しました。

有名タレントを使ってイベントを告知する方法。世間に届くようにするためにはとても効率が良いやり方ですし、失礼ながら大ベテランの先生方や学術団体ではなかなか行動に移せない取り組みだと思います。中心になって活動しているのは20~30代の鍼灸師で、SNSと連携を取り新しいイメージを作る取り組みでした。

 

私も鍼灸師でありますから、微力ながらSNSを通して4月9日「鍼灸の日」をアピールしてみました。後日このような文章を投稿するのも、当日にやっておけ、という話なのですが、イベントが過ぎたからこそアピールできることもあると考えています(本当は忙しかったのが実情なのですが)。

 

東スポwebの記事を見ても、『はり治療は、顔や体のコリをほぐす効果が期待できる』ということと『女性3人は美容鍼灸を体験し、顔に何本ものはりを刺し、ハリネズミのようになった』という点を鍼について触れているだけ。それもメインゲストである加藤一二三さんのコメントに繋げるための文面になっています。
マスメディアの反応は鍼灸よりも加藤一二三さんがイベントに出たこと、そのコメントに注目しています。もちろん主催者側もそれは百も承知でしょう。だからこその知名度のあるゲストであるわけですし。

 

これらの記事やイベントを通して、世間に鍼灸の方へ目を向かせるその次に、実際に鍼灸治療を受けてみようと、行動を促す施策をすることが大切なはず。そうでなければ花火のように華麗に咲いて僅かな時間で消えてしまい、また来年まで誰も覚えていない、ということになりかねます。
そのために「鍼灸の日」のイベントを点ではなく線に繋げていかないといけません

 

そこで私は考えます。どうしたら鍼灸の良さをアピールできるのか。

 

幾つかやり方を思いつているので、ここで書いてみたいと思います。

まず一つは「他と比較すること」。

 

鍼灸師がどれだけ鍼灸は良いものですよ、とアピールしても売りつける当事者の話ですからどうしても信憑性にかける。なぜ欠けるかというと比較対象が無いからではないかだと思うわけです。当日イベントで中心にあった美容鍼もエステと何が違うの?だったり、体のコリをほぐすというけれどマッサージではダメなの?、という疑問に果たして答えているのか。西洋医学と東洋医学の違い、メリットとデメリットは何か、これらをはっきりと説明しないといけないと考えます。

 

それができるのは私のようなあん摩マッサージ指圧師免許を持つ鍼灸師がする責任だと思うのです。またクリニックや大学病院で西洋医学の代表たる医師と一緒に働いた経験も説得力をつける意味で必要でしょう。


徒手療法と比べて鍼灸のメリットデメリットを、西洋医学と比べてのメリットデメリットを少し説明していきましょう。

 

例をあげます。
Q.もしも肩こり・腰痛をどうにかしたいと思ったら、人はどうするのか。
A1.我慢する、ほっておく(自然に治るのを待つ)。
A2.自力でどうにかする(体操や養生法などをする)。
A3.マッサージ、整体を受ける。
A4.薬を飲む、塗る(市販のもの)。
A5.病院に行く。
A6.鍼灸を受ける。

 

こういった選択肢が考えられます。鍼灸の受診率が上がらないのはつまり他の選択肢より選択する理由(魅力)が無いからでしょう。選択順位が上がらないのです(もちろん人によりますが)。
その理由として鍼灸は「痛くて熱くて怖そう」というイメージが世間にはあります。これはデメリットです。このイメージについてはまた別に書きますが、このようなデメリットが「効果がある(はず)」というメリットを上回るから選択されません。メリットを伝えるためには他と比較した方が分かりやすいのです。家電量販店でも各メーカーのスペック比較表がある方が選びやすいですよね。

 

〇まずマッサージをはじめとした徒手療法との違いです。

 

鍼の長所は体内に直接アプローチできること
筋肉や腱、時に関節や骨まで鍼を通して刺激を与えることができます。これは絶対に皮膚表面からしか触れないマッサージには不可能なことです。灸では温熱刺激を加えられることです。当然これも人間の手が高温になることはありませんから灸の利点です。

 

マッサージの方が受け手は安心です
刺される、熱いという恐怖心は皆無です。対して鍼灸でも、刺さない鍼(鍉鍼(ていしん))というものがありますし、灸も温灸や隔物灸など火傷の心配を無くし熱すぎないやり方はいくらでもあります。

 

マッサージは反応が速いのは確かです
触診を兼ねている部分もあり、硬いところ痛みがあるところ(専門用語で反応点といいます)を指で見つけたらすぐに押すことが可能です。どれだけ鍼灸師の技術があっても消毒して鍼を皮膚に置いて刺入するのでは指圧にスピードでは敵いません。(鍉鍼なら一緒かもしれませんが)。

 

体の奥を感じる力は鍼治療の方がはるかにマッサージより上です
体内まで鍼を入れることで表面からは分からない硬さを鍼先から感じることができます。これはどれだけ指先の感覚を鍛えても限界があるので鍼を使った方が良いです。

 

強く触れない状況にも鍼灸は対応できます
ギックリ腰の急性期。痛みで動けない人の腰を押すのはほぼできません。鍼をした方が局所には対応しやすいです。また筋肉がやせ細った患者さんで強く押すと損傷してしまいそうな場合には鍼を刺す刺激の方がより良いことがあります。

 

以上が簡単な徒手療法(マッサージなど)と鍼灸の違いです。こういったことは肩こり・腰痛に限らず多くの症状にも言えることです。
なお、述べてきたことについて、私は徒手療法と鍼灸のどちらも厚生労働省免許を持った上で使用します。その経験上の一個人の意見です。


臨床現場において私は患者さんの希望を優先させるのが基本ですが、どうか考えても鍼灸を選択した方がいい場合は説得します。その際にきちんと徒手療法のここができないことを鍼灸ではできますよ、と説明し納得した上で行っています。

 

〇次に西洋医学と東洋医学との違いについて。

 

ここでいう西洋医学はお薬、医療、医者の受診など現代医療全般のことを指していると考えてください。東洋医学とは鍼灸だと考えてください(漢方やアーユルヴェーダのような他の伝統医療を除くということ)。

 

西洋医学は技術のムラが少ないです
保険適応される医療は原則誰でもどこでも同じ水準であることが基本。ですから、薬はその典型ですが、誰でも効果がほぼ変わりません。名医でも新米医師でも薬の効果は変わりません。鍼灸の場合、鍼灸師の技量や人柄が効果に大きな差が出ます。悪く言うと当たりはずれが西洋医学よりも大きいと言わざる得ないでしょう。ただし正確に表現すると「当たりだけが大きく、はずれは小さい」となります。とても効果が出る鍼灸師は存在しますし、あまりに下手で悪化させる鍼灸師というのは現実に少ないです(ゼロとは言いませんが。それを言うと病院もそうだろうという話になります)。

 

東洋医学は医療過誤が少なく、副作用が比較的少ないです
確かに肺に穴が開く気胸が鍼治療には特に危険ですし、灸には火傷の危険性がついてまわります。しかし実際に起きる確率は結構低いです。気胸にしても日本で一般的に使われる細い鍼ですと相当深く入れて乱暴にしないと組織を傷つけることができません。比較すると、肋骨骨折などが起きる徒手療法の方が医療過誤が発生する率は高いのです。
まためまい、脳貧血といった副作用もありますが、麻酔科での経験上、ブロック注射後の副作用に比べればとても軽いものです。特に薬物を使用する西洋医学に比べればとても副作用は小さいと言えるでしょう。

 

料金は自由診療が基本なので鍼灸の方が高価です
日本は国民皆保険制度ですから医療機関であれば原則保険治療が受けられるので実費が安く抑えられるのが一般的。対して鍼灸では自由に料金が決められるので保険治療より高くなりがちです。ただし医師の同意を得た特定の疾患ならば鍼灸にも保険が適応されますし、自治体によっては補助をしてくれるところもあります。医療機関でも保険が効かない治療もありますから、ケースバイケースということ。全体的には鍼灸の方が費用はかかるということです。

 

東洋医学は西洋医学の苦手なところを補える
待ち時間が長い、医師が患者さんの話を聞いてくれない、検査結果ばかりで実際に身体を診てくれない、薬や手術の副作用が強い、など西洋医学の不満点がいくつか挙げられるかと思われます。もちろん全くない場合もありますが、完璧ということはほぼ不可能。西洋医学が苦手としている部分を東洋医学はだいたい得意としているのです。
鍼灸院は予約制で待ち時間が無いところが多いですし、しっかり話を聞いてくれます。料金を含めて独自に決めらることが病院よりも多いので融通がききやすい。

 

私は東洋医学を西洋医学の苦手な部分を補う補完医療だと考えているので、病院には行くな、薬など飲んではいけない、という考えはありません。病院でできないことをしてあげることが鍼灸師の役割と考えています。

 

ここまでざっと西洋医学(現代医療、病院、薬など)と東洋医学(鍼灸)の違いや長所短所を比較してみました。細かく書き出すとキリがありません。くどいようですがクリニックや大学病院で勤務した私個人の経験を踏まえて言えば、病院も鍼灸院もどちらも足を運ぶべきで対立するものではないと考えます。特に鍼灸国家試験の大半は現代医療の分野ですから鍼灸師はベースにしっかりと現代医療の知識を持っています。その上で敢えて鍼灸を(鍼灸も)選ぶメリットを提示できれば患者さん、利用者さんのためになるのではないでしょうか。

 

各々状況によって、長所短所を理解した上で、鍼灸の良さを比較検討してアピールする。鍼灸“だけ”が素晴らしい!と声高に掲げても他のジャンルから反発を生みます。鍼灸師は「鍼灸ナンバー1」で良いとは思いますが、「鍼灸オンリー1」でいると世間に良さが伝わらないのではないでしょうか。

 

甲野 功