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~按摩の話 MP揉み~

按摩において最も代表的な基本技術が揉捏(じゅうねつ)でした。これは筋肉を揉む動作になります。
そして揉捏の中でも特に多用し臨床で重要なものが母指揉捏です。

 

母指とは親指のことで親指を使って筋肉を揉むことを指します。揉捏には円を描くように揉む輪状揉捏と、縦に往復させて揉む線状揉捏の二種類があります。

私が臨床で一番使用するのが線状母指揉捏です。親指を使って筋肉を切る、あるいは骨からはがすような感じで揉んでいくものです。

 

一番使うのには理由があります。

 

人体の中で特に知覚が鋭い部位が指先です。ですから指先で患者さんの筋肉を捉えることが状態を把握するのに適しています。また、親指は力が入るので揉む行為に適しています。センサーとして道具として優れているのが親指(母指)であります。
そして円を描く輪状揉捏よりも線状揉捏をよく使うのは、筋肉の盛り上がり(筋復と言います)を捉えるやすいからです。山のように盛り上がった筋復を親指でなぞるように触ることで筋肉の状態をよく理解できるのです。
このような理由で線状母指揉捏を多用するのです。

 

このように私が按摩をする上で一番使うのは線状母指揉捏なのですが、これについて母校である東京医療専門学校では「MP揉み」と呼ばれる技法があるのです。線状母指揉捏をする際のコツなのですが、あまり他では見ることが無いテクニックです。

今回はMP揉みを紹介します。

 

まずMPとは何を言っているのでしょうか。それはMP関節のMPです。
MP関節とは手(足もそうですが)の指と手の甲をつなぐ、指の付け根の関節のことです。日本語にすると中手指節間関節と言います。手の甲を作っているのが中手骨という骨で、指の根本の骨を指節骨と言います。

 

このMP関節を使って(意識して)母指揉捏をすることがMP揉みです。なお親指のMP関節は考えず、人差し指から小指までのMP関節のみを意識します。MP関節を、出すように進めたり引くように戻したりするように動かして、母指揉捏を行うということです。

 

私は学生時代にこの動かし方を習ったときは意味が分かりませんでした
あん摩マッサージ指圧師の専門学校に入学する前、民間の整体学校でも揉捏は習っていました。そこでは親指をどのように動かすかが焦点で、他の4本指の事は重要ではありません。なぜ筋肉に触れていないMP関節の事など考える必要があるのか理解に苦しみました。

 

講師が言う通りに練習を続けてMP関節がよく動くように母指揉捏を繰り返しやっていました。そうすると程なくして言わんとする事が理解できるようになりました。
MP揉みで筋肉を揉むと、行きも帰りも筋肉を逃さない
ということに気づいたのです。

 

整体学校で習った揉捏は一方向のみに力が入り、筋肉をはじくような感じになるのです。すなわち押すだけ。押したら指を戻してまた押す。指の動きが往復するのですが“行き”だけしか筋肉を捉えていません。


このやり方ですと筋肉に親指を引っ掛けて押しているだけとも言えます。その場合受け手である患者さんの身体は揺れやすくなります。身体が揺れると頭も揺れて船酔いのように気持ち悪くことがあるのです。

私はよく素性を隠してマッサージを受けに行くことがあるのですが、やけに身体が揺らせられるところがあります。受け手の身体が大きく揺れていると、術者はやった気になるのでしょうね。あまりに頭が揺らされると不快に感じました。

これがMP揉みですと、ずっと筋肉を捉えて離さないので親指が“行き”も“帰り”も圧を入れていることになります。一方向から圧をかけるのではなく、周りを取り囲むように圧を入れることになるのです。
そうなるとピンポイントで狙った筋復だけを周りから押して揉んでいるので身体が揺れることが無くなります。私の線状母指揉捏では触っている筋肉は揉まれて動きますが患者さんの頭を含めて他の部位が揺れることはありません。

 

↑の写真の通り、腰部に母指揉捏をしていますが、指は動いていても患者さんの頭が揺れることはありません。片方の手は添えているだけで患者さんの体を押さえ込んでいるわけではありません。

 

往復で筋肉を揉めるので、それまでしていた方法よりも効率が2倍良くなります。当然短時間で筋肉を緩めることができるので時間短縮に繋がります。

また一方向でなく、複数の方向から圧を入れることができるため、患者さんの硬結(こり)を捉えやすくなるのです。私は鍼灸師でもあるので、按摩治療のあとに鍼を刺すとき、鍼を入れる方向(刺入方向)を決める目安になります。

 

慣れるまでは手間取ったMP揉みですが、習得するととても便利で効果的な技術でした。このおかげで鍼の技術も向上したと思います。また時間をかけずに効果を出せるようになったのでダンスの現場で時間との闘いになる場面でやれることが増えました。

 

一見誰でもできる筋肉を揉むという動作。その裏には細かなテクニックに長年研究されて生み出されたコツが隠れています。

 

甲野 功

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