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~カンストが遅い職業~

凡人道 役満狙いしないほうが人生うまくいく 表紙
凡人道 役満狙いしないほうが人生うまくいく ひろゆき著 宝島社

 

以前、~貧すれば鈍する~というブログで紹介した本がこちら。

 

凡人道 役満狙いしないほうが人生うまくいく ひろゆき著 宝島社

 

改めて説明すると、著者のひろゆき氏はインターネット匿名掲示板「2ちゃんねる」の創設者で、現在は実業家に転身し住居をパリに移しております。ネット界で名を成した著名人であり、いわゆるお金持ち・成功者に分類されるのでしょう。


そのひろゆき氏が提案するビジネスの考えは、余計な冒険をせずに無難で手堅い道『凡人道』を進めというもの。


4年制大学は出ておけ、安易に脱サラして起業するな、99%の人は好きなことだけをして生きていけない!、などとても現実的な主張です。ホリエモンこと堀江貴文氏やYouTuberらと真っ向から対立するような意見。


私は勝手に持っていたひろゆき氏のイメージとは大きく異なった主張に、本書を読んで驚きました。時代の流れとは真逆な昭和的な価値観だなと感じたのです(小学生の頃までしか体験していない昭和が適切な表現なのかは怪しいですが、イメージということで)。

 

その『凡人道』で職業選択について述べた個所があります。ここだけはちょっと異質に感じたのです。

 

今後AI技術により多くの労働が自動化されていく未来が待っている中、決して少なくない職種が消えると考えられます。昭和の頃は駅の改札に駅員さんがいて切符を確認し特殊な切れ込みを入れていました。世界一の乗降者数を誇る新宿駅でも見られた風景です。それが今や地方の田舎でしか見なくなり、自動改札機によって朝から晩まで切符を確認して切れ込みを入れる人員は必要なくなりました。
このようなことがどんどん加速化していき、無人の自動車運転、無人のコンビニエンスストア、無人の宅配と進むでしょう。ウーバーイーツも近い将来無人の自動宅配ロボットあるいはドローンが担うことになるでしょう。

 

AIが発達し無人化が進む社会でどのような職業を選ぶのか。その基準として“カンストが遅い職業”を選ぶことを提唱しています。

「カンスト」とはカウンターストップの略成長というカウンターが止まることをカンストとしています。マスターすることに時間と手間がかかない仕事を避けよう、という意味です。

 

『凡人道』は各章にマンガが入っており、その内容を文章で解説するという形になっています。


ある章のマンガで、町の清掃員が登場し若い新入社員にこびりついたガムの剝し方を説明して悦に浸る場面が出てきます。
ひろゆき氏は清掃の仕方はほんの数日で習得できて新入社員との差はあっという間に縮まし、高度な知識や技術はそれほど必要とされないため、成長の天井は早く訪れるとしています。そうカンストが早くくるのです。


このような仕事は早晩AIの自動化に取って代わられてしまうので職を失うことになります。

 

やるべき職は、カンストが遅い、習得に時間がかかり長期間成長し続けられる職種になるもの、あるいは積み重ねが効くかどうかで判断する、ということです。積み重ねが効かなければキャリアがメリットにならず、若手にあっという間に追いつかれてしまいます。例として、コンビニバイトやFX投資は,やめておいたほうがよいと書いています。(※ひろゆき氏は投資自体を多額の資本が無いのならば地道に働いた方が割がよいのでやめておけ、という考えです。)

 

安定を求めるために苦難な道(この場合は職業)を選択せよ。


このように感じ取れて、ここは違和感を覚えるところです。他は冒険をせずに地道に真面目にやっていけというメッセージを受け取るのですが。数年で習得できて成長が終了してしまう職業ではなく、手間ひまがかかる職業を。
修行など無意味だ!転職を繰り返して停滞するな!といった堀江貴文氏が提唱する「多動力」と真逆の様な気がしています。

 

 

さて、この「カンストが遅い職業」に鍼灸師が当てはまると思います

 

鍼灸は本当に面倒で奥が深くて範囲が広くて曖昧で、何を持って最高峰なのかよくわかりません。当事者である私がそう思うのですからそうでしょう。あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師の資格を持つからこそ、強く思います。

 

私はリラクゼーション業界出身です。国家資格であるあん摩マッサージ指圧師免許を取らなくとも仕事はできました。しかし、そうだとしたら限界(つまりカンスト)は数年で来て成長は止まったと思います。あん摩マッサージ指圧の勉強、技術を習得して飛躍的に成長の限界点を越えて新たな頂が見えたと思います。そう、カンストが遅れたといえます。


ただ押す、揉むということはできましたが、按摩、指圧、(オイル)マッサージと似ているようで別個の3種類の技術と知識を得たことで、徒手療法の技術が上達しました。幅が広がりました。それまで浅かった医療系の知識を得ることで、指で体を押すという(一見)単純な動作に、筋肉や神経、骨、疾病、反射、といったものまで頭に入れて行うようになったのです。さらに柔道整復師の勉強をすることで骨、靭帯、関節、外科的処置、外傷などの知識が加わり対応できる状況が大いに広がりました。

 

それでもあん摩マッサージ指圧は鍼灸に比べればある程度ゴールというか最高峰というものが見えています。


鍼灸は範囲も技法もでたらめに広くて多くて、その全容が掴めません。徒手療法と異なり鍼とお灸という器材を用います。鍼の種類だけでも相当な数があり把握しきれません。お灸もそうです。
そこに膨大な技術が加わります。10年以上のキャリアと専門学校教員免許を持っていても未だに知らない、できない技術は山の様にあります。日々新しい手法が生まれています。対して時代の流れにそぐわず埋もれていった技術もたくさんあります。対応するジャンル、疾患は多岐に渡り、美容、スポーツ、精神疾患、内臓疾患、婦人科系疾患、あげくに新型コロナウィルスまで行う(その鍼灸師個人がやるかどうか、できるかどうかは別として)わけです。もう広すぎて目がくらみます。

 

これほどカンストが遅いジャンルは珍しいと思います。何かに絞ってしまえば先が見えるかもしれませんがそれでも鍼灸という技術にこだわるならば学ぶこと習得することは膨大にあるでしょう。終わりが見えません。

 

鍼灸師という職業はそういった意味でこれから有望かもしれません。おそらくAIで代用することはできないでしょう。AIを活用することはできても。


何か、例えば美容のみといったように、絞ればAIで自動で鍼施術をすることはできるかもしれませんが。今扱っているジャンル全てを網羅するようなことはできないと思いますし、基準が曖昧すぎてAIに学習させることが困難だと思います。脈診という手首の橈骨動脈の状態から全身を把握するものがあるのですが、この状態はこれ、と統一した見解と基準がありません。ベテラン鍼灸師でも意見が分かれます。誰かが基準を作ればいいのですが、個人の意見が強くまとまらないのが日本の鍼灸師のさが。

 

私は鍼灸とは生涯を掛けて学び習得するものだと思っています。そうすることによってあん摩マッサージ指圧という徒手療法のカンストを遅らせることができると考えています。鍼灸を東洋医学を深めることで新たな着想が加わり技術の上達が続くのです
鍼灸そのものもできることが増えれば、対応できる患者さんや症状が増すということで成長する余地が広がります。結果として収入や地位向上に繋がるでしょう。

 

私の知り合いの鍼灸師がこう話します。

 

学校でこの中で鍼灸師として食っていけるのは一握りだよ、と言われて、それはやりがいがある、と思った

 

誰にでもできるような仕事はカッコ悪い、困難だからこそできるようになれば有利になる、そう感じたそうです。知り合いは苦難があった方が燃えると言います。私なんかよりずっと純度の高い鍼灸師です。

 

 

ひろゆき氏の『凡人道』を読んで得た“カンストが遅い”という概念。まさに鍼灸師が当てはまるように思いました。上を目指すと果てしなく大変なのですが、それこそがこれからの時代を生き残る職業としての証なのかもしれません。

 

甲野 功

 

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