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~鍼の認知は必要なのか~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 「鍼。」の一言ツイート。
「鍼。」の一言ツイートが考えさせられることに。

 

昨日面白い出来事がありました。


タレントのベッキーさんが「鍼。」とだけTwitterでつぶやきました。それを巡る反応が興味深いものだったのです

 

ベッキーさんは世間に広く認知されたタレントです。最近結婚しましたが、過去には大きなスキャンダルがありました。しかし国民的なタレントであることは間違いありません。老若男女ほぼ皆さんが知っている有名芸能人でしょう。

そのベッキーさんが突然一文字「鍼」、そして「。」と文章を終える丸というツイート。他に何の説明も加わることもありません。芸能人が企業や団体にお願いされてツイートをする#PRというタグもありません。この文章を書いている時点で真意が全く読めないという奇妙な状況です。

 

このツイートに対して鍼灸師は大いに反応しました

 

「鍼」という文字はほぼ鍼灸師しか使わないません。常用漢字ではありませんので名前に使うことも許されていないとか。医療用で用いるハリ、例えば注射針では「針」の方を用います。
漢字としては鍼も針も同じとされていますが、私も含めて鍼灸師の多くは「はり」を「鍼」と書くことが多いです。
なお厚生労働省認可の国家資格でありますが、正式な表記は「はり師」となり、漢字を用いておりません。鍼灸師という言葉は「はり師」、「きゅう師」の総称です(一般的にはりときゅうの両方を一度に取得するので二つ繋げてしまいます)。


したがって「鍼」と見たら間違いなく鍼灸師の行う鍼(はり)のことだと我々は思うわけです

 

あのベッキーさんが鍼について言及した!
鍼を受けているのかな?
世間に広まるかも!

 

といった期待があるわけですね。
実際のところはその後続くツイートが無いので判断できませんが。

 

この鍼灸師達の期待に反して、一般の人の反応は


どう読むのかわかりません


というものが幾つかありました。

 

ベッキーさんはあれだけ有名ですから関わろうとする人がたくさんいるわけです。
アンチの人もいるので大喜利のようなものや小ばかにしたようなリプライ(返信)をすることもあるのです。鍼を「はり」と読めて鍼灸師が行う鍼と分かった上で返信しています。芸能人が鍼について触れるとだいたい大人気マンガ「ハンター×ハンター(冨樫義博作)」に出てくるイルミというキャラクターの画像を載せることが多いです。イルミは特殊な針で自分の顔を変えたり、人を操ったりするのです。顔にたくさん針をさして顔が変形する(変形させる)描写があり、美容鍼で顔に鍼が刺さった画像を有名芸能人が投稿すると、ほぼ引用されます。今回のベッキーさんのツイートでもありました。


からかうようなもの、また鍼灸業界からのもの、を除いた反応で目に付いたが、鍼という感じの読み方が分からない、という純粋な疑問。ここに鍼の認知度が垣間見えるのです

 

私は鍼灸師ですし、屋号に鍼という文字が入っているので毎日のように見ますし、打ち込んでいる漢字です。鍼をハリあるいはシンと読むのは当たり前すぎて意識することもありません。しかし、知らない人には読み方すら分からないという現実が浮き彫りになりました。
そのことに関して、漢字の読み方すら知られていないのか、と嘆く鍼灸関係者の反応がありました。まだまだ世間に届いていないというわけです。

 

ここで私が思うことは
本当に鍼は世間に認知された方がいいのか?
ということです。

 

私は生業として鍼灸を行っていますから患者さん獲得のために鍼および灸がみんなに知られてくれた方がいいだろう、とは思います。しかし必要のない層まで認知されてもいいのか、という疑問というか懸念も持っています
本音は
必要な人に届けばいいわけで、日本国民全員に世界中の人々に知ってもらわなくてもいいのではないだろうか
という考えです。

 

その理由は鍼灸の、特に鍼の独特な立場が関係しています。

 

常々思うのですが鍼術は範囲が広すぎて全容が掴めないのです。

西洋医学にあたる「標準治療」が鍼にはありません。例えば腰痛に対して一般的、標準的な鍼術は何でしょうか。どこの経穴(ツボ)にこの太さの鍼をこの方向にこれだけ深く刺してこの時間そのままにしておく、といったベースがありません。大量の鍼を刺すひと、1本しか刺さないひと、腰には刺さないひと、鍼は刺さずに触れるだけのひと、バラバラです。使用する鍼も毫鍼、鍉鍼、円皮鍼、皮内鍼、中国鍼、などなど、種類も様々です(違いの説明は割愛します)。
統一されたやり方がありません。というのも腰痛といっても発生原因や患者さんの状態によって細かく分類を分けるのが鍼灸であり東洋医学なのです。私もそうですが、腰痛だから毎回同じやり方で鍼をするということはありません。

 

そのためなまじ世間に認知されても困ってしまうのです。100名鍼師がいたら100通りのやり方があるもの。何をもって鍼と認識するのかは複雑です。それならば例えば腰痛になり、病院にかかり、それでも何か満足いかないという状況になって鍼灸というものがあるらしいと調べてもらう方がいいように思います。

 

鍼灸師が発信する内容は基本的に“その鍼灸師に都合の良い”鍼です。


もっと鍼のことを知ってもらいたい!と主張するひとは多いのですが(都合の良い)という鍼の前につく形容詞が隠れていることがあるのです。例えば美容を専門にしている鍼灸師がアピールしたとします。それが認知されて、鍼灸師ってエステティシャンみたいなものでしょ?と広く認識されると困る鍼灸師がいるわけです。訪問鍼灸をしている人には美容をしている人が寝たきりの家族を任せられるわけないでしょう、と患者さん家族に思われたらどうでしょうか。

 

また世間の人が「これが鍼!」と思い込まれるのも厳しい状況を生みます。顔面に鍼を刺すのは美容しかないと患者さんに思われて、顔面神経麻痺や花粉症でも顔に鍼をしますよ、と伝えたろこと、そんなはずはない!と怒られた経験があります。こちらは専門家なのですがね。


私は新規患者さんを診るときに鍼灸の経験を必ず聞くのですが、その方がいう(以前受けたのは)「普通の鍼よ」という言葉は要注意ですね。

 

何かのきっかけで鍼が選択肢に入るように認知されるのは構わないと思います。例えば不妊症について悩んで調べていたら鍼灸にたどり着いたといったように。
みんなが鍼を知ってくれという期待は、なかなか問題が多いように思ってしまうのです。


イソジンが店頭から消えているという報道をみると、分かりやすい表面的な報道で大多数が行動に起こし本当に必要なところに行き渡らないことや転売行為(薬事法に抵触します)といった混乱と問題が起きることは必至です。
同じように鍼については、必要になったときにしっかりと分かる人に相談できる環境がある方が重要だと考えていて、ある程度正確なことを理解されないまま知名度があがることは良いことではないのではないでしょうか

 

それならば鍼灸師が個性を発信し、何かあったらあの鍼灸師に相談してみればいいだろうという環境を構築しておく方が望ましいと考えます
鍼は、鍼そのものより“誰の鍼を受けるのか”の方が重要であることをやる側はよく理解していること。

 

鍼ってどう読むのでしょうか?と言われてもいいのではないかと考えます。それよりも興味あるから教えてくださいと気軽に問い合わせがくる存在であることの方が大切なのではないでしょうか。

 

甲野 功

 

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