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~テコンドー経験者に対する技術研究~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 テコンドー経験者に対する技術研究
テコンドー経験者の学生さんに手伝ってもらいました。

 

 

昨年から、面識のある鍼灸マッサージ専門学生や新卒の鍼灸マッサージ師さんと練習というか研究をしています。互いに練習台になるという形式でやってみたい手技や技術を行うというもの。

新たな、慣れていない技術はいきなり臨床で患者さんにするわけにもいかないので練習は必要です。学生時代なら学校に練習相手がいますが、一人で開業した身ではそのような存在がいません。ですから自分でお声がけをして場を設けるしかありません。

 

私がこの仕事に就いた原初の理由が、大学から始めた競技ダンス選手のサポートをしたい、です。最近では元フィギュアスケート選手の浅田舞さんが本気で競技ダンスに取り組むことで注目されています。バラエティー番組で取り上げていますが、競技会はテレビ番組に忖度しませんのではっきりと実力通りの結果が出ます。練習風景をみても本気で取り組んでいることが分かります。あのような必死に練習して上を目指している選手をサポートしたくて、20代半ばに脱サラをしこの仕事をしようと決めました。下積みといっていいのか分かりませんが経験・研究を積み重ねて7年前に独立してあじさい鍼灸マッサージ治療院を開業。当初から社交ダンス選手及び愛好家を対象にした専門コースを設けています。

 

痛みや不調を取り除くことも大切ですが、他のスポーツに比べれば非常にスポーツ障害が少ない競技であるのでパフォーマンスアップに繋がることをずっと研究しています。

競技ダンス選手のパフォーマンスを上げるために身体面へのアプローチから何ができるのか?

それは永遠のテーマです。ダンス指導はプロのコーチがいます。治療なら私より遥かに素晴らしい先生がいます。私にしかできないことは何か。

関わることで上達が早くなる、気付かなかった体の使い方を知る、選手の理想と現実のギャップを身体のケアによって埋める、といったことが具体的な目標です。そのために何をするかというと、主に動作の解析をしてそれによって効率よく動ける状態にできないかを考えます。上級者の動きを見てどのような体の使い方をしているのか。フィジカル面の強さ(筋力や柔軟性、バランス、テクニックなど)は何かを見極める。また来院した目の前にいる選手の身体面を観察して長所、短所、癖など特徴を読み取って何かしらの物理刺激を与えてよくする。そういうことを考えてきました。その過程であん摩マッサージ指圧師、鍼灸師、柔道整復師の国家資格の勉強をしてきて、またそれ以外にも必要だと思われる技術と知識を収集してきました。

 

更に技術を伸ばすためによく知らないスポーツ・動作を題材にして試してみようと考えるようになります。

昨年の東京オリンピック、今月の北京オリンピック。一流のスポーツ選手の動きはテレビで観るだけでも色々なことを教えてくれます。映像からどのように身体を動かしているのかを観察をしました。そこから対面で動きを観察して身体に作用させて効果を出せるか実戦的な練習をしてみたいと思うようになりました。

 

そこで以前から面識のある鍼灸マッサージ学生さんがテコンドーを習っていることを思い出して協力を依頼しました。

私は今までテコンドーの動きを生で観たことはありません。ずっと経験のある競技ダンスに比べて圧倒的に情報が少ない種目。その動きをみてパフォーマンスアップできるようなアプローチができるか試してみたいと、考えたのでした。果たして自分の培ったものが通用するのかと。

 

まずテコンドーとは。韓国の国技で独特な足技が特徴的な格闘技というイメージです。私が小中学生くらいのときにテコンドーブームがありました。テコンドーというか踵落としに。足を頭上まで振り上げて踵から真下に降ろす蹴り。それまでになかった斬新な攻撃で少年マンガに多数取り上げられました。ヤンキー漫画で有名な「ろくでなしブルース」でも敵キャラが踵落としを使っていました。K-1ではアンディ・フグ選手が踵落としを試合で使用していました。テコンドーというとこれくらいの印象しかありませんでした。

 

昨年の東京オリンピックでテコンドー日本人女子有力選手が出場したのでテレビで観戦しました。するとほぼ全局面で半身の状態で攻撃と防御をしていました。ボクシングや空手とはかなりスタンスが違う感じです。踵落としとか飛んで回し蹴りといったマンガでみた技は出てきません。実際の試合をみると想像とはかけ離れていました。ただ半身の構えは大きなヒントになりました。

 

そして学生さんに来てもらった当日。学生さんにどういうことが困っているか(どういう風になりたいのか)を聞きました。細かいことは色々とありましたが、足が上がるようにしたい、という要望に絞りました。知らなかったのですがテコンドーにはローキック(下段蹴り)がありません。胴体か頭部を蹴りで狙います。そうなるととにかくつま先を上に持ってこられないといけません。また体を回転しての蹴りはポイントが高いが、動作が大きいので攻められやすく試合ではほとんど出さない、回し蹴りも隙が生まれやすい、いわゆるサイドキックを多用するようだと知りました。空手でいう掛け蹴り、ブラジリアンハイキックのように足を上げてそこから蹴りの軌道を瞬時に変えるようです。そして常にステップを踏んでいて跳ねている状態である。

テコンドーの競技特性を短期間で理解するのはやはり無理な話で、シンプルに足が上がる(上げられる、上げやすい)状態に持っていくことを目的としました。

 

以降、順を追ってやったことを列記していきます。

 

●立位の状態チェック

学生さんに立ってもらい背面から左右のバランスをチェックします。肩峰(肩の外側先端)の高さ、下腿の角度(床に対してふくらはぎの角度が左右で違いが無いか)、アキレス腱の状態などを目視で確認しました。左肩の肩峰が右に比べて下にあり、なで肩のようなラインをしていました。これは右首肩周り筋肉が固くなっていて肩甲骨を挙げているのかと推測します。右利きで定期試験が終わったばかりですし。

 

●閉眼で揺れ方を聴取

立ったまま目を閉じてもらいます。しばらくすると段々と体が揺れてくるので、どのように揺れてそれを戻そうとしているか聞きます。前後、左右。揺れ方を聞いて揺れ幅を目視でチェックします。前後でいうと後ろに傾くのを戻しているという自覚でした。人間の体の構造上、前に倒れるようにできていてそれを抗重力筋といわれる筋肉や、下肢にある靭帯などで支えています。後ろに傾くのは目視により骨盤が後傾していることが原因ではないかと予想しました。

 

●片足を上げてもらいやりやすさをチェック

片方の足を膝を曲げて上げてもらい上げやすさ、立ちやすさを聞きます。学生さんの自覚と私の目でみた他覚をすり合わせます。このとき、軸足で立ちやすいのか、上げる側の股関節が動きやすいのか、を整理してどういう状況で上げやすい・上げにくいを判断しているのか確認します。軸足の方は中殿筋の影響が強いので殿部の外側に注目し、股関節に関しては骨盤が太ももと連動しているのかを見ます。また足の指を使えているかも見ました。

 

●バランスパッド乗って片足を上げてもらう

当院にあるバランスパッドの上に乗ってもらって同様にします。バランスパッドは反発性のある柔らかい板で乗るとグラグラしてバランスが取りづらくなります。不安定さを増した状態で上げやすさに変化があるのかという質問と目視で動作に違いがあるかをみます。床とバランスパッドでほぼ動作に差がありませんでした。やはり片足で立つことに慣れているという印象でした。

 

●うつ伏せに寝てもらいその状態を観察

学生さんにベッドでうつ伏せ(仰臥位)で寝てもらいます。顔を入れる孔があるので顔の場所は基準があります。そのまま真っ直ぐ寝ているつもりの自然な学生さんの状態を目視で観察。足が左右どちらかに曲がって寝ている、足の状態が左右で違うかをみます。ちなみに学生さんは下半身が左に曲がっていて左足の方が右よりも回転(内旋)していました。左脇から左背中にかけてそこの筋肉が固いのだと予想しました。アキレス腱の形も左右で違いがありました。

 

ここまでが観察です。学生さんの体の状態を外側から観察し聴取した情報と擦り合わせてある程度の仮説を立てておきます。次に私が施術(身体への物理的介入)を行っていきます。

 

〇触診を兼ねて背面全身の按摩指圧を行う

筋肉をほぐしつつ状態を触って確認します。首肩周りが固めでした。日々の試験勉強のせいなのでしょう。腰背部は左側の方が固く張っていました。下腿、足部(足首から下の部分)は少し浮腫みがあるなという印象。それは左の方が強いと思いました。下腿は浮腫みを取るような意識で手技を行いました。

 

〇ストレッチを行う

柔軟性のチェックを兼ねて他動的に大きな関節を伸ばしていきます。膝関節、肩関節は問題なく。少し脇腹の部分が固いなと感じました。股関節は屈曲時に抵抗があります。一般的には問題がありませんがスポーツをするならもう少し柔軟性があった方がいいかと思いました。テコンドーという競技を考慮しても。少し重点的に伸ばします。

股関節とは別に仙腸関節の動きをよくするように手技を加えます。足を上げる動作には若干ですが寛骨(腸骨・恥骨・坐骨が結合した骨。骨盤を形成する骨の一つ。)の動きが加わります。仙骨と寛骨の間に仙腸関節があり、足を大きく上げるとき(股関節を深く屈曲するとき)に寛骨も若干動くと言われています。そこの動きが出るように手を加えます。

 

以上が(学生さんにとって)受動的なアプローチでした。寝た状態で受け身。ただされるだけ。この後から私が学生さんの動作をチェックして、学生さんにも頑張ってもらう時間になります。

 

●再び立ってもらい状態を自覚してもらう

体が軽い気がする、足がしっかりと床についている気がするという感想でした。私の感想は立位時の肩峰の高さ、下腿のライン、アキレス腱の状態など少し整った感じが目視で見てとれました。

 

●足を上げてもらう

足が上げやすくなったという感想でした。ただ術者の私を前にして気を遣っている、あるいはプラセボ効果でそう感じている可能性もあるので参考程度に考えます。

この際に幾つか改善できそうなポイントをみます。

①大腿と寛骨の動きをもっと連動させた方が良さそう

②内転筋群の動作が悪い気がする

③上半身が定まっていない

④足の指をもっと使ってもらい床を掴んだ方がいいだろう

主にこの4つでした。各々説明しつつ何をしてもらったか書いていきます。

 

①大腿と寛骨の動きをもっと連動させた方が良さそう

既に述べた仙腸関節の動きです。解剖学者では仙腸関節は動かないことが定説になっているようです。それは関節を動かす筋肉が存在しない、周りを靭帯ががっちり固定している、解剖した際に触ってみても手で動くようなことがなかった、といった理由からです。それらについては異論が出ていますが長くなるので説明を省きます。

立位で股関節を最大屈曲する際に学生さんの手をお尻(寛骨)に当ててもらい寛骨が回転するように私が学生さんの手の上からガイドします。もちろん大きく動くわけではないのですが手の感触から寛骨が動く感覚を読み取ってもらいました。私の目的としては足を上げる動作には骨盤も意識してくださいということ。大腿骨だけでなく仙骨、寛骨まで意識して動くと挙げやすい、ということです。

 

②内転筋群の動作が悪い気がする

①は蹴り足の話で、こちらは軸足の話です。体を支えている足が弱いことでバランスが悪くなり二次的に足が上げづらいものと考えます。このとき内転筋群が使えていないと私は考えます。内転筋群とは太もも内側にある足を内側に動かすとき(股関節内転)に働く筋肉群です。いくつか種類がありますが一まとめに内転筋群としておきます。日常生活で股関節内転するということはほとんどありません。そのため多くの場合、太ももの外側の方が内側より発達してきます。年を重ねるにつれて内転筋群が相対的に弱まりガニ股気味になります。

学生さんは若いので内転筋群が無いわけでなく使えていないと判断。そこでベッドに長座になってもらい内転筋群を意識するための抵抗運動をしました。私が手で足を押さえておき、学生さんに足を閉じる(股関節内転)ように力を入れてもらいます。抵抗をかけて状態で足を閉じることで内転筋群を使ってもらうわけです。このときにつま先の向きを普通、外側、内側の3段階にして行います。つま先の向きを変えるのは股関節内旋・外旋という動きで、内旋位・外旋位で使う内転筋群が変わるのです。満遍なく内転筋群を意識してもらいます。

 

③上半身が定まっていない

足を上げたときに上半身がふらつくとバランスを取ろうとして足が挙がらなくなると思います。いわゆる体幹が弱いというもの。観察した際に脇腹の部分、胴体の側面が安定していないと感じました。そこで学生さんにサイドプランクをしてもらい、私が脇腹を手のひらで叩いて刺激をします。横の軸を意識してもらうためです。更に腕を真上の限界まで挙げてもらい脇腹の下の方まで伸ばしてもらいます。これも横の意識をつけるためです。

 

④足の指をもっと使ってもらい床を掴んだ方がいいだろう

一般の方よりも足の指が使えている印象がありました。それをもっと使うようにと考えます。足の指で床を掴む、支持することができれば足を上げやすいだろうと。そこで足の指への抵抗運動を行いました。片方の親指を押さえて屈曲するように力を入れてもらいます。私が手で抵抗して十分に力が入ったと判断したら一気に抵抗を抜きます。これにより足の指を動かしやすくなると言われています。この操作を親指、四指(親指以外の4本の指)、5本全ての指で行い足の指と足の裏(足底)の意識をつけるようにしました。なおこの方法は高齢者の転倒予防にも用いています。

これらの(学生さんにとって)能動的な運動をした結果、立ちやすい、足を挙げやすい、という感想を得ました。定量的に計測していないので主観だけですが、一定の効果はあったと思われます。もちろん先輩鍼灸師を前にして気を遣うことはあるでしょうが。

 

●二軸性の動き

私がテコンドーの動きをみて感じた事は二軸で動いているようだということ。二軸とは体を左右縦に貫く軸を意識しているという意味。右足で蹴るとしたら左足および左半身の胴体が安定して体軸を作り右足および右半身を自由にするというもの。日本の古流武術に通じる体の使い方に近いようでした。この話を学生さんにして昔の日本人の歩き方、なんば歩きとか相撲は同側の手足が出るとかボクシングのオーソドックス・サウスポーの構えの意味とかを説明しました。身体をどのように動かすか身体意識を整理すると足を上げやすいのではと伝えます。

 

まとめ

結局、これまで競技ダンスで培ってきた理論、技術のみを用いて「足を上げる」という基本動作に着目しただけになりました。テコンドー特有の蹴りをした際にどうしたらもっと動きが良くなるかまでは行きませんでした。何となくインパクトの瞬間に、力の流れが澱んでいるというか繋がっていないというか気になるポイントがあったのですが、頭を整理して説明できず、どこに何をアプローチしたらいいのかはっきりしませんでした。今回は筋肉群とか軸とかかなり大きな範囲で考えたのですが鍼を用いてもっと狭い点(ポイント)あるいは個別の筋肉に対して刺激を与えることで効果が出せるような気がしました。

また常にステップを踏むという点は競技ダンスに通じるものがあるのでステップ動作に注目して足関節や体幹の安定についてアプローチしてみたらまた面白いとも考えました。こちらの方は既に持っている知識・技術で対応できそうだなと思いました。

 

今回私の要望に応えていただいた学生さんに感謝です。日本ではマイナースポーツにあたるテコンドーという予備情報がほとんどない競技を題材に試すことができました。人生で接点のないスポーツ(動き)に対して応用力をつける訓練を続けていこうと考えています。

 

甲野 功

 

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