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~「ケンシロウによろしく」6巻を本職のあん摩マッサージ指圧師が読んでみた~

ジャスミン・ギュ作 ケンシロウによろしく6巻 講談社
ジャスミン・ギュ作 ケンシロウによろしく6巻 講談社

 

 

段々と知名度が上がってきたことを実感する“破天荒マッサージコメディ”「ケンシロウによろしく」第6巻が発売されました。芸人さんの間で話題となって、人気バラエティー番組「アメトーーク」他、複数の番組で紹介されてきた本作品。紹介したバカリズムさんも本作でちらっと登場しています。

これは唯一無二の“あん摩マッサージ指圧師が主人公のギャグマンガ”、それが「ケンシロウによろしく」なのです。

 

ケンシロウによろしく ジャスミン・ギュ作 講談社

 

往年の少年ジャンプの名作『北斗の拳』の主人公ケンシロウが元ネタで、それを講談社のヤングマガジンに掲載するという(※もちろん少年ジャンプは集英社。現在『北斗の拳』の版権は別の出版社)。本作主人公の沼倉は幼少期に読んだ『北斗の拳』のケンシロウに憧れ、母親を奪っていった相手に復讐するため、作中に出てくる伝説の暗殺拳「北斗神拳」の体得を目指し長年習練を積み、気付けば「あん摩マッサージ指圧師」免許を取得して天才マッサージ師になっていた、というもの。

 

私が知る限り、マンガで「あん摩マッサージ指圧師」という厚生労働省認可の国家資格免許をはっきりと明示した作品はありません。他ジャンルの作品でも聞いたことがありません。そもそも一般的に「あん摩マッサージ指圧師」という免許があることが知られていません。第1巻できちんとそのことを描いています。作中のあん摩マッサージ指圧師免許証はとてもリアルに描かれていて、本物を知らないとできない仕事。しかもよく見ると少しだけ本物と違う点があり、風刺が効いています。恐らく厚生労働省の国家資格免許を持っていないと気付かないレベルの細かさ。

 

なお主人公沼倉は「はり師」「きゅう師」「柔道整復師」の免許も取得しています。ストーリー展開としては「あん摩マッサージ指圧師」免許を持っていれば事足りるはずですが。こういう所もやけにリアルで、実際の術者をかなり取材して制作しているのだと思います。私も同じように「あん摩マッサージ指圧師」「はり師」「きゅう師」「柔道整復師」であるので、ああこれは「あん摩マッサージ指圧師」以外のエッセンスを入れているなと感じてしまいます。

 

これまでの1巻から5巻までと同様に、本職で現役の「あん摩マッサージ指圧師」であり、かつ「はり師」「きゅう師」「柔道整復師」でもある私が作中に登場する専門知識に関する部分をピックアップし、それらに対する感想と解説を書いていきます。なおこの文章は現在発売中のコミック6巻までの内容をもとに書いていており、雑誌連載中の内容は一切知らない状態です。また「あん摩マッサージ指圧師」や東洋医学に関する専門性の高い部分についてのみ触れていますが、若干作品のネタバレも含みますのでご注意ください。

 

1~5巻のブログは以下の通り。 

 

第1巻が発売されたときに書いた

~「ケンシロウによろしく」を本職のあん摩マッサージ指圧師が読んでみた~

 

第2巻が発売されたときに書いた

~「ケンシロウによろしく」2巻を本職のあん摩マッサージ指圧師が読んでみた~

 

第3巻が発売されたときに書いた

~「ケンシロウによろしく」3巻を本職のあん摩マッサージ指圧師が読んでみた~

 

第4巻が発売されたときに書いた

~「ケンシロウによろしく」4巻を本職のあん摩マッサージ指圧師が読んでみた~

 

第5巻が発売されたときに書いた

~「ケンシロウによろしく」5巻を本職のあん摩マッサージ指圧師が読んでみた~

 

いきなり専門知識以外のことに触れますが、6巻からは大きな展開がありストーリーとしては第2章に突入した感じです。毎巻登場する実際にあるツボ(経穴)だけでなく、人間性に関係する部分が出ている巻だと言えます。

 

細かい内容はネタバレになるので書きませんが、辛かった過去の記憶を消してほしいという方が沼倉のマッサージ店に来店します。無理難題に沼倉はどう対応するのか。助手は頭の中で「心的外傷後ストレス障害の指圧になるのかな・・」と考え

太衝(たいしょう)

内関(ないかん)

印堂(いんどう)

神門(しんもん)

三陰交(さいんいんこう)

足三里(あしさんり)

といったツボ(経穴)を思い浮かべます。

 

同業者としても確かに、という配穴(経穴を選ぶこと)内容。比較的有名な経穴ばかりです。一般の人にはピンとこないでしょうが、真っ当な意見という感じ。奇をてらっていないという。それに対して沼倉は熟考した上である一言をつぶやき肩を揉むのでした。そして相手は悪い記憶は全部忘れたというのです。

 

作品の内容に関わることで詳しくは書きませんが、このシーンはとても本質を捉えていると感じました。沼倉と相手との関係性もありますが、人を治療するときに手当てという言葉を用いるように、手を当てて触れることが治療の根幹にあるということを示しているように受け取れるのです。事前に助手の頭の中にあった具体的な経穴の数々。理論として非常に理にかなっているのですが。これまでに沼倉は色々なパターンで有効な経穴(ツボ)を組み合わせて活用して相手を癒してきました。ところがこのシーンでは具体的な経穴は登場せず。手で触れるという描写がほとんどでした。

 

沼倉は指圧をメインにする「あん摩マッサージ指圧師」でありますが、「はり師」「きゅう師」の免許もあるので鍼灸もできます。実際に5巻では耳に鍼をしています。やろうと思えば指圧以外の手段を持っている。そこを敢えて素手で触れるという指圧、というより手当てを用いたように思えるのです。

 

もう一つ大切なことは相手に語りかけていたこと。これまでの沼倉は相手に説教や解説をするために語ることはあっても語りかけるようなシーンはほぼありません。自分の気持ちを込めた言葉を投げかけることは。それがここでは一言、相手にいうのです。臨床をしていると技術、知識だけでなく、言葉がいかに重要なのかを実感します。説明のために言葉は必須ですが、コミュニケーションとして会話が、心を通わせる言葉が、大切になってきます。これまでは圧倒的な技術で難題を解決してきた沼倉が初めて人間性を出した・用いた施術シーンだったと思います。ここでこのような(技術を用いない)やり方を描けるのは素晴らしいですし、作者は術者のことが分かっているのだと思いました。

 

続いて腰痛患者に対して用いた経穴。

命門(めいもん)

腰陽関(こしようかん)

腰兪(ようゆ)

背中の正中を通る督脈にある経穴です。どれも腰部にある経穴でいわゆる局所治療に用いるものです。

 

最後は経穴が出てくるのではありませんが猫をマッサージするシーンが登場します。前の巻でも猫にマッサージをするシーンがあるのですが、今巻ではたくさんの猫たちがマッサージをしてもらいたくて寄ってくる描写があります。これもやけにリアルだと感じていて、私も飼い猫にマッサージ(具体的には押圧操作や揉捏など)をして練習した過去があるのです。猫は非常に感情に素直で不快だと爪で引っ搔いてきますし、気持ちが良ければゴロゴロ喉を鳴らしてうっとりしてくれます。人間以上に反応がストレートなので(忖度しない)良い練習相手になったものでした。割と犬や猫で練習するという人は周りにいるものでした。餌を与えるのではなくマッサージで猫たちを集めてしまう沼倉。その姿を盗み見た人が改心してマッサージ師を目指すというシーンが作中にあり、マッサージで人を幸せにできると沼倉が主張することと重なります。

 

復讐するために暗殺拳である北斗神拳を体得しようとして、人体やツボについて勉強して結果的に「あん摩マッサージ指圧師」などの国家資格免許を取った沼倉。第2章に入り、新たな世直し物語が始まったことを予感させます。一見ナンセンスなギャグマンガのようにみえてストーリーが緻密。現代人が抱える心の闇についても描いています。とても奥の深い作品です。

 

私は『北斗の拳』をリアルタイムで読んでいた世代であり、本職のあん摩マッサージ指圧師です。そのため一般読者とは異なった視点になってしまいます。術者側から見ると、どう考えても不可能だろう、というフィクションらしい無茶が前面に出ながら、あん摩マッサージ指圧師として持っていなければならない心根のような大切な部分が見え隠れする作品です。次の巻が楽しみです。

 

甲野 功

 

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