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~「あはき師」が多かった時代の認識~

あじさい鍼灸マッサージ治療院院 本科のある学校と専科のみの学校
本科のある学校と専科のみの学校数の比較

 

 

以前、未だにあん摩マッサージ指圧師と鍼灸師を同時に取ることが一般的だ、という過去の認識を持っている人がいるということを書きました。術者側でもそれが残っていて、新卒者の大多数が鍼灸師のみという現状で問題が生じることが起きるのです。

 

改めて、私の持つ国家資格免許は

あん摩マツサージ指圧師免許

はり師免許

きゆう師免許

柔道整復師免許

の4つです。

最低3年間勉強して年に一度の国家試験に合格し名簿登録されると免許が得られて効力が発揮します。免許を持つ者をそれぞれあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師となります。免許名がマッサージではなく“マツサージ”、きゅうでなく“きゆう”としているのは当時の法律では小さい“つ”や“ゆ”をそのまま表記する慣例があったからです。あん摩マッサージ指圧師は略してあまし師、はり師ときゅう師はまとめて鍼灸師、柔道整復師は柔整師と省略することが多いです。はり師ときゅう師においては、免許は分かれていて国家試験も分かれていますが多くの場合双方同時に習い、同時に受験するのでまとめて鍼灸師と呼ぶことが一般的です。視覚障害者の場合、はり師のみという人もいますし、稀に晴眼者(視覚障害のない健常者のこと)で片方の国家試験だけ落ちてはり師のみ、きゅう師のみという方も存在します(多くは再受験して免許を取得します)。

 

この4つの資格免許は歴史的な背景もあり、開業権が正式に認められています。医療系国家資格では医師、歯科医師を除くと自由に開業できるものはほとんどありません。病院は許可制度なので自由に開設できるわけではないのですが。過去(戦後くらいのころ)には上記4つの資格は一つの法律でまとめられていました。そして柔道整復師が柔道整復師法として独立し、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師をまとめた法律、通称あはき法が残ります。

 

あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の3つをまとめて「あはき師」と省略します。あるいは三療師など。これらの業務は古くから視覚障害者の生業として根付いてきました。そのため晴眼者と視覚障害者で養成施設が異なります。前者は専門学校・大学であり、後者は盲学校・視覚支援学校・大学になります。晴眼者の「あはき師」養成施設は医学部と同じ扱いで新設することが制限されていました。視覚障害者の養成施設は福祉の一面を担ってきました。

 

大きな変化が起きたのが、1998年に福岡県において国(旧厚生省)に対して争われた柔道整復師専門学校新設を求める裁判でした。通称「福岡裁判」といわれるもので、新たに柔道整復師を養成する専門学校を福岡県に新設しようとした業者が県に申請を出したのですが却下されます。条件は満たしているはずなのに申請を認めないのはおかしいだろうという。あはきに関するあはき法には第19条に視覚障害者の生活を守るためにあん摩マッサージ指圧師養成施設を新設する制限を定めています。しかし柔道整復師に関してはそのような法律はありません。地方裁判所の判断は原告勝訴、被告である厚生省の敗訴だったのです。

この判決の結果、柔道整復師専門学校新設は解禁となり爆発的に専門学校、大学が増えることになります。同時に鍼灸師専門学校も数を増やしていきます。1999年以降専門学校がどんどん作られることになりました。それまで20数校だった晴眼者向け鍼灸養成施設(専門学校・大学)はそれ以降数倍の数になるのです。あん摩マッサージ指圧師養成施設は法律があったため増えることはなく、1999年以降に新しくできた養成施設は専門学校1校だけです。

 

これによりどういうことが起きたかというと、あまし、鍼灸を同時に免許が取れる学校数と鍼灸のみの学校数に大きな差を生むことになったのです。令和5年現在、鍼灸師とマッサージ師を両方取ることができる学科、通称「本科」(鍼灸マッサージ科)のある学校は全国に19校です。それに対して鍼灸科のみの学科、通称「専科」の学校は72校です。この数字は今年第31回国家試験のデータから既に閉校しているものを除いて出しています。学校自体は残っていても募集停止になって数年後には無くなる学校もあるかもしれないので参考といった感じです。何にせよ19校と72校では大きな差があることがわかるでしょう

 

今年の国家試験合格者数で比較してみましょう。

今年第31回のあん摩マッサージ指圧師国家試験における本科のある専門学校合格者数は794名です。同じくはり師国家試験における本科のある専門学校合格者数は933名、きゅう師国家試験では931名。本科のある学校には本科とは別に専科も併設しているところがあり、あまし単科の学校があるものが1校あるので正確な数字ではありませんが、794名が今年生まれた(晴眼者の)「あはき師」となります。大雑把に約800名としましょう。晴眼者向けの専門学校・大学における今年第31回はり師国家試験の合格者は2,769名、きゅう師国家試験の合格者は2,772名。浪人による再受験を考慮して少なく見積もり約2,700名が鍼灸師なったとします。「あはき師」800に対して鍼灸師2,700という3倍以上の差がついています。この数字は概算で、視覚障害者は抜いています。そして今年31回に限ったもの。

 

福岡裁判前の状況でみてみましょう。2002年実施の第10回国家試験から新設された学校の受験生が受験しているので第1回~第9回までの各種国家試験合格者数の合計を出します。この数字は上記の晴眼者だけのものではなく、視覚障害者も含めた全体の数です。第1回から第9回までの国家試験合格者総数はあん摩マッサージ指圧師が16,510名、はり師が19,461名、きゅう師が19,413名。鍼灸師の数は約1万9千名というところ。あん摩マッサージ指圧師単独は約1万6千名で3千人くらい差があります。本科のある専門学校にも専科があり、その学生数がこのような人数差が生まれたものと考えられます(視覚障害者の場合はあん摩マッサージ指圧師のみの人が少なくありませんし、あん摩マッサージ指圧師のみの専門学校もありますから、人数差の影響は専科学生数の方が大きいのでしょう)。2001年の国家試験まではあん摩マッサージ指圧師の数倍鍼灸師が誕生しているということなかったのです。

 

このように大体20世紀のうちは鍼灸師のみという人もいましたが「あはき師」が大多数だったと言えるのです(稀な例ですが専科を卒業し鍼灸師になり、その後さらにあん摩マッサージ指圧師科に入り直してあん摩マッサージ指圧師となり「あはき師」になる、あるいはその逆であん摩マッサージ指圧師から鍼灸師も取って「あはき師」になるというケースもあります)。

 

何が言いたいかというと現在キャリア20年を超すベテラン臨床家の方は「あはき師」である確率が高いのです。福岡裁判以前からある養成施設を伝統校、裁判後にできたものを新設校とこの業界では呼ぶ慣習があります。伝統校で鍼灸師のみの(現在まである)学校は関東鍼灸専門学校北海道鍼灸専門学校森ノ宮医療専門学校のみ。同じように伝統校であん摩マッサージ指圧師のみは長生学園と日本指圧専門学校のみ。これらの伝統校は本科(鍼灸マッサージ科)及び専科(鍼灸科)を有し、「あはき師」を輩出してきました。そのためベテラン“鍼灸師”といってもあん摩マッサージ指圧師も持っている「あはき師」であることが珍しくありません。反対にあん摩マッサージ指圧師として活躍しているが実は鍼灸師も持っているという場合もあるのです。

 

特に鍼灸に関してですが、現在の大多数の新卒が鍼灸師のみであり臨床経験が豊富な鍼灸師が「あはき師」だった場合に、指導が難しいというか条件が異なることの弊害が生まれるのです。それは技術面もあるのですが認識の違いも生みます。あん摩マッサージ指圧師免許も持っている前提で話をする、指導することで法的に問題があることに気付かない。あはき法によって鍼灸、あん摩マッサージ指圧は業務独占という、免許無しに患者さんに行うことは禁止されています。それは医師免許を持つ者を除いて誰であっても。鍼灸が上手になるにはマッサージができないといけないと鍼灸のみの若手鍼灸師に語ってしまう。それによってあん摩マッサージ指圧師免許を持っていないのに整体と称していわゆるマッサージ行為を恒常的にしてしまう。実際にいるのですが、あん摩マッサージ指圧師の存在を知らないで専門学校に入る人も、あん摩マッサージ指圧師と鍼灸は必ずセットだと思って専門学校に入る人もいます。お世話になった先輩鍼灸師の免許をきちんと調べないで、鍼灸師になれば当然マッサージもできるものだと信じて専科に入学して後悔する。鍼灸師しかもっていない従業員に当然のように患者へのマッサージ行為を命じる。国家資格の免許という法で守られる業務を破るという捻じれた状況。

 

「あはき師」が大多数だった時代の認識をそのままにしていることで、鍼灸師はマッサージ行為ができると誤った認識を生む一端になります。

 

甲野 功

 

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