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~今年も盲学校の生徒さんが学生ペア割に来ました~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 盲学校の学生さんからのお土産
学生さんからのお土産

 

 

昨年12月にある盲学校の生徒さんが学生ペア割に応募して来院しました

学生ペア割とは臨床現場を見学や体験したい学生さんに向けて、ペアで訪れて互いに体験と見学を交互にするというもの。数年前に都内のある鍼灸マッサージ専門学校学生さんが希望したものを当院で実施しました。過去にもたくさんの鍼灸マッサージ学生さんや進学希望者が利用してきました。視覚障害のない健常者を晴眼者というのですが、これまでは晴眼者の学生さんばかりでしたが昨年12月に初めて盲学校の生徒さんが学生ペア割で来院したのです。盲学校とは視覚障害がある者が通う学校で、その中にあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師を取得するための科があります。晴眼者の専門学校は職業訓練校という位置づけですが、盲学校は生徒の状況によりますが職業訓練の他に教育という側面があります。視力障害が起きた時期によって教育が異なります。途中失明の場合ですと既に文字を覚えるとかパソコン作業といった日常生活に必要な能力を得ている場合が多く、視力が低下あるいは失った状態で社会生活を行うための訓練をします。これが先天性失明の場合ですと文字を覚えることから始めるため教育内容もかなり変わります。社会福祉の面が強いという点で厚生労働省が管轄する専門学校との違いと言えるでしょう。

 

※なお平成19年(2007年)施行の学校教育法改正により学校種が<特別支援学校>となりました。そのため、「視覚特別支援学校」、「視覚支援学校」という名称になっているところもあります。それ以前は「盲学校」の名称が使われていました。今回は来院した学生さんの呼称を採用して「盲学校」と表記します。また盲学校・視覚支援学校で以前から使用してきた言葉であん摩マッサージ指圧師、鍼灸師を養成するための科を「理療科」といいます。あん摩マッサージ指圧師のみを「保健理療科」、あん摩マッサージ指圧師と鍼灸師両方だと「専攻理療科」と区別することがあります。この呼称は晴眼者の専門学校では用いられません。理学療法士ではないので注意してください。

 

按摩師(あん摩師)、はり師(鍼師)、音楽奏者は古くから視覚障害者の生業としてわが国に根付いていました。音楽家と並ぶ職業でした。かの杉山和一検校は江戸幕府4代将軍徳川綱吉に鍼治療を行いました。今の日本鍼術の主流となる管鍼法を生み出したと言われている杉山和一は盲人であり、検校とは盲人の最高位を表す階級です。杉山和一検校は江戸時代に盲人向けの按摩・鍼の教習所を設立し、これは現代では視覚障害者のための職業訓練養成所(つまり盲学校・視覚支援学校)にあたります。盲学校の歴史は長く江戸時代から存在しています。

 

私は過去に4名の視覚障害者の方と働いたことがありますし、先天性全盲のあん摩マッサージ指圧師の知り合いがおります。専門学校時代には視覚障害のある(弱視)教員に授業を習った経験があります。そのため視覚障害のある同業者とは馴染みがあり、偏見や奇異なる見方をすることはありません。それを感じ取ってくれたのか昨年SNSのX(当時はTwitter)で学生ペア割の応募があったのでした。そしてその時に来た方がまた学校の生徒を連れて学生ペア割に応募したのでした。

 

当日、来院されたのは3名。昨年来院された方がガイドする形で二人を連れてきてくれました。ガイドしてくれた方は比較的視力が残っています。他の二人は初めて来るのはやや困難のよう。このように一言で視覚障害者といっても障害の程度は様々で、持っている能力も幅があります。生まれついて視力が無い場合ですと“見る”という行為も“色”や“姿形”という概念も持たない方もいます。視野狭窄で視界の周囲が見えない、見えづらい方や視野欠損で視界の一部が見えない、見えづらい方ですとかなり健常者に近い形で日常生活を送ることができる場合もあるのです。また進行性の病状で時間とともに視力を失っていく方もいます。

今回の学生ペア割も視力の状況を確認するところから始まりました。どれくらい視力があるのか。予診票を書いてもらうことができるのか。いつ頃から視力障害があるのか。などなど。見学という文字通り見て学ぶことができるのか。それによって施術する内容は同じでも説明方法が変わります。

 

また学生さんがどのような目的で来院したのかも重要で聞いておきます。技術は視覚障害者を教えることの専門教員が盲学校で教えています。何を学びたいのか、知りたいのか。それを理解した上で私は内容を決めます。所属する学校以外の情報が知りたい。卒業後の進路、按摩や鍼の技術、業界環境など。卒業後の進路として開業することを選択した場合にどうしたらよいのか、ヘルスキーパー以外の就職先はあるのか。技術においても盲学校特有の(得意とする)技術というものがあります。あん摩マッサージ指圧師と言いますが按摩がメインでマッサージ、指圧はあまり力を入れていない場合があったり、鍼だと低周波鍼通電を好むといったり、晴眼者とは違う特徴があります。あまり授業で触れない技術について知りたいという要望がありました。また仕事に就けば晴眼者や一般患者さんと一緒になります。盲学校を出たらどのような仕事環境になるのか。晴眼者側の意見も聞きたい。声に出して伝えたこと、会話内容から不安に思っていること、私の方からこうしたらどうですかという提案。これらを踏まえて施術を行いました。

 

学生さんの希望で鍼と按摩の組み合わせ按摩指圧の徒手手技のみ、という2パターンをそれぞれに行いました。いつも口数多く説明する方ですが、今回は特に言葉を重ねました。見ての通り、ということはできません。見学側の学生は何となく動きで察することはできるようですが細かくは言葉で説明し触ってもらわないといけません。途中、つい見えている前提で言葉少なく説明してしまい反省しました。反対に晴眼者の学生より言葉の理解が深いと感じました。受け手はうつ伏せになっていて見えない状態が多く、音だけでは何を言っているのか分からないことがままあります。説明が長くて理解しきれないことも。それがきちんと言葉を紡いでおけば、長くてもすんなりと理解してくれます。音声からの理解力が高いことがうかがえました。動作については私の体を触ってもらうこともありました。どこをどのように動かしているのか。触覚で確認する。指で理解して覚えていく。技術者としては至極真っ当なやり方です。見て盗め、ならぬ、触って盗め。普段しない経験でした。

 

今回の学生ペア割で言われたのが、同じあん摩マッサージ指圧師、鍼灸師業界なのに晴眼者と視覚障害者では壁というか距離があるという感覚がある、ということ。盲学校ではそこだけで完結して外の世界が分からない。また我々視覚障害のある者を受け入れてくれるのかも不安という。これは晴眼者側も同じでほとんど盲学校・視覚支援学校のことは情報として入ってきません。多くの専門学校の学生は視覚障害者の学生さんと交流はなく卒業し、一緒に働くという経験も持たないことのではないでしょうか。私もこの仕事をしていなかったら視覚障害者の方と面識が生まれなかったかもしれません。そして鍼灸マッサージ専門学校教員免許を持っていることで教員側から盲学校の情報が入ってくる環境が機会を増やしている点でもあります。

 

毎回感じることはこちらが想像している以上にできることは多いということ。視力がないかわりに聴力や触覚、記憶力など他の能力が鋭く高い。障害は特徴に過ぎないという考えもありますが、同じ仕事をするうえで臨床面は努力次第で差は無くなる、あるいはそれ以上になると思います。集客や事務処理といった周辺業務でハンディキャップが生まれると現段階では考えられるので、機会の平等を環境やテクノロジーで整える必要があるでしょう。手土産にと神楽坂にある名店のお菓子を持ってきてくれました。そのお店は路地裏にあり見つけるのが結構難しいのです。2年前にできたので地元の人でもあまり知りません。そういうお店で買い物ができるのです。できることできないことを個々人で確認してフラットな付き合いをしたいなと思います。

 

今回二度目の盲学校の学生さんが来て、私も様々な学びがありました。同業者として助け合ってやっていけるといいなと思います。

 

甲野 功

 

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