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~あはき学生さんとの練習会~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 施術室の風景
学生さんとの練習会

 

 

昨日は鍼灸マッサージ専門学校の学生さんにお越しいただき練習をしました。一人で開業して10年。職場は孤独です。それ自体は特に問題ないのですが練習相手がいないことに困ることがあります。何といっても技術職でありますから、練習が必要なことがあります。これまでの技術の蓄えでやっていけるかもしれませんが日々腕を磨く姿勢が大切だと感じています。忙しい職場にいたときは充実していますがインプットすることがなく(その暇がなく)ただただアウトプットをするだけ。このままではそのうち限界が来るなと感じていました。

 

私の父親が以前話したことで私は“ダムの放水理論”と呼んでいることがあります。ダムの放水は、大きなダムに水がたっぷり溜まっている状態で放水すると美しい、小さいダムであまり水が溜まっていないと放水しても勢いはないし水が濁っている。どういうことかというと豊富な知識や経験を持ちながらそのわずかを出すことが良いということ。父親曰く、研究や勉強の全てを吐き出すような論文や発表はみていて美しくないというのです。余裕の無さもあるかもしれません。膨大な研究データからごくわずかを選んで発表すると不測の質問や指摘にも対応できますし深い内容になる。父の専門分野は工学系(冶金)なので完全に理解はしきれませんが、非常に納得できます。臨床でも知識を蓄えて技術を磨いたものを出さないと美しくない。通り一辺倒のことができても応用できない。知識が無ければ技術について質問されたときに対応できない。そういうことが考えられます。

 

というわけで練習相手を探して技術を磨く時間が必要です。自主練習だけでは足りない。人間相手にしないといけない。知り合いの業界関係者を招いて練習会を行うことがあります。前は5月11日に鍼灸マッサージ学生さんと進学希望のプレ学生さんの2名を招いて練習をしました。昨日はまた別の学生さんにお願いして練習をしたのでした。

練習相手は誰もいいというわけではありません。私も練習台になるのである程度信頼できる方にするようにしています。20代の頃は全く気になりませんでしたが、最近は無茶なことをされると体が壊れるという感覚が出て決ました。コロナ前は勉強も兼ねて色々なリラクゼーション店に素性を隠して行っていました。中にはただ痛いだけというところもありました。その頃はこれも勉強だからと割り切っていたのですが、最近は体が耐えきれなかったらまずいなという不安があります。男性だから強く押せばいいという認識があるところもあります。肋骨骨折になったら仕事に支障をきたします。段々怖くなってきました。ですから練習相手は人柄をみてこの人は大丈夫そうだと思える人に声をかけるようにしています。昨日は6月30日にオープンセミナーとして開催した「3流派の違い」に参加した学生さんです。学校、学年、話す内容などから身をあずけてもいいと思える。その感覚は一般の人が鍼灸院やマッサージ院を選択するときの気持ちと同じ。この感覚を大切にしています。

 

当日。学生さんに来てもらい、私の方から練習させていただきました。私は直接灸と単刺の鍼を練習したかったです。直接灸とは艾を捻って皮膚に直接置き、それを線香で点火するやり方の灸です。今年のテーマで実践練習の場を求めています。そして単刺の鍼。これは一度鍼を体に刺して、その後すぐに抜いて、また別の個所を刺すというやり方。刺した鍼をしばらく刺したままにしておくのが置鍼といいます。私は普段、置鍼を多用するのですが4月に単刺のやり方を体験して練習してみたいと考えていました。学生さんから私は使用しない軟鍼という種類の鍼をいただいたのでそれを使用しました。想像よりも鍼刺激に強くなかったので単刺を選択して良かったかもしれません。

術者としての特性でしょうか。学生さんの不調があると対応したくなります。かなり下腿(ふくらはぎ)が浮腫んでいると思いました。また日常足の冷えを感じているといいます。その症状に対して下腿の刺鍼と足底の直接灸に加えてオイルマッサージもしました。私の練習ということなのでいい機会ということで。

学生さんからすると体験する機会になります。聞くと鍉鍼や接触鍼を知りませんでした。鍉鍼とは刺入しない鍼で押す、擦るといった刺激をします。接触鍼は体に刺入できる毫鍼を皮膚にあてるだけで刺入しないやり方です。刺入しないことは共通していますが似て非なるもの。どちらも体験してもらいました。また美容鍼を受けたことがないというので徒手とかっさを用いた顔の施術を体験してもらいました。

直接灸の実践練習はまだまだ足りないと感じました。ただ以前よりももたついてしまうことに対して落ち着いていられるようになってきました。動作の無駄を省き、精度を上げていく。現場でも使う機会が少し増えてきたこともあり理想に近付いてきている感覚がありました。

 

今度は学生さんの練習相手になる番です。学生さんからも腰痛に対する按摩や指圧のアプローチ方法をしてみたいということでした。練習台になるだけでなく実践的な、特に学校の実技授業では言われないようなことを聞きたいようだったので、私は説明しながら行いました。そもそも私は腰が固いのです。腰痛を実感することはほぼありませんが背中ら肩にかけてかなり固いのです。それはよく分かっています。いい被検体でしょう。これだけ固いと腰を押しても圧が入らないし、私自身も辛いのです。その場合はまず殿部から下への按摩や指圧をすることで腰を緩めるということを話しました。殿部(おしり)から大腿後面(太ももの裏)、下腿後面(ふくらはぎ)、足底(足の裏)。学校で習っている手技で行ってもらいました。そこに足底に使うちょっとしてテクニックを伝えます。下肢が緩むと腰や背中も緩む。右側だけやって左右差を比較してもらいました。触感も見た目(腰のむくみ)も変化していることを実感してもらいました。他に背中の張りを取るために2点法などと言われるやり方、腰を緩めるために大腿前面の筋肉をストレッチさせることを伝えました。腰そのもの、すなわち局所に指圧をするなり鍼を刺すなりすることは分かっているのでそれ以外の場所を用いて腰を緩めるやり方を紹介するのでした。

さらに私が仰向けになり腹部の固さをとる方法を伝えます。私は腰以上にお腹が固いです。教員養成科時代にどの講師も驚いた固さです。もちろん実技のペアになった同級生も。鍼灸師になると腹診といってお腹の状態をみることが普通にあります。腹部が固いと裏側の腰も固くなります。反対にお腹の緊張を緩めると腰の固さも軽減します。ということでお腹を緩めてみようという取り組み。按摩には按腹というお腹に対する手技があります。学生さんに按腹をしてもらった上で今度は大腿前面(太ももの前)、下腿前面(ふくらはぎの前)を按摩や指圧をしてもらいます。すると同じ側のお腹が柔らかくなります。その変化を感じてもらい経絡の流注も考えてもらいました。

手の触感が鋭い学生さんは指先で硬結(こり)をみつけてそれが変化していくことを感じ取っていました。自分が刺激を与えることで相手の体が変化していくことに驚き、喜びます。最近まで試験が続き、試験対策の実技練習が多かったそうで新鮮だったようです。

 

お互いにメリットがあるようにしたい学生さんとの練習会。また課題から実践練習が必要だと思った時に知り合いの学生さんにお願いして練習会を開催したいと思います。

 

甲野 功

 

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