開院時間
平日: 10:00 - 20:00(最終受付19:00)
土: 9:00 - 18:00(最終受付17:00)
休み:日曜、祝日
電話:070-6529-3668
mail:kouno.teate@gmail.com
住所:東京都新宿区市谷甲良町2-6エクセル市ヶ谷B202
少し前になりますがNHKの番組『ブラタモリ』で大山詣りが特集されました。大山詣りは神奈川県伊勢原市にある大山阿夫利神社に参拝するもの。私も数年前に大山阿夫利神社を訪れています。その際に大山登山ケーブルに乗り、阿夫利神社駅で下車、少し山を登ると立派な社殿があります。これが下社となります。そこから険しい山道を登っていくと本社にたどり着きます。本社にも数年前に登ってきました。更に大山登山ケーブルの一つ前の駅が大山寺駅であり、大山寺があります。大山阿夫利神社本社、大山寺を以前紹介したので、今回は下社について触れます。
大山阿夫利神社の歴史をおさらいします。2200年以上前の崇神天皇の時代に創建されたと伝えられています。崇神天皇は第10代天皇でほぼ神話の世界に近い存在。それほど古くからあるとされています。大山阿夫利神社がある、その名前の通り、神奈川県伊勢原市にある「大山」は山上によく雲や霧が生じたことから、別名「あめふり山」と呼ばれていました。雨乞いや五穀豊穣祈願の霊地として信仰を受け山岳信仰としての歴史も長く、奈良時代以降は神仏習合の霊山として栄えました。「あめふり」が「あふり」と変化していきます。平安時代に編纂された『延喜式』には「阿夫利神社」と記されています。
武士の時代になると武運長久の祈りの対象として、多くの武士たちが祈願するようになります。後に鎌倉幕府を興す源頼朝は平家打倒のために挙兵する際に大山阿夫利神社へ自らの太刀を納めたと伝えられます。この事が民衆にも広く知られるようになり、人々は競って木刀を奉納するようになります。これが「納太刀」の起源に。源氏だけでなく足利氏(室町幕府)、徳川氏(江戸幕府)の歴代将軍も大山阿夫利神社を信仰したとか。
江戸時代前後にかけては「石尊大権現」の名とともに庶民からも崇敬を受け、年間20万人もの参拝者が「大山詣り」を行ったという記録が。絶大な人気から大山への参詣道は大山街道として整備されました。この「大山詣り」を冒頭に紹介したブラタモリで特集したわけです。
明治時代になると神仏分離令が発布されます。時代の流れで神道と仏教が融合し、神様と仏様を同一視する考えが神仏習合です。今でも神社とお寺の区別がつかない人が多いのは神社の境内にお寺があったり、その逆があったりするためです。明治維新が成り、近代国家に突き進む明治新政府が神道を重要視する政策を取ります。このことで全国で神社とお寺を分離させる動きが起きます。その過程で廃仏毀釈という仏像を破壊する、お寺を燃やすといった行為が横行したところもありました。かつての大山阿夫利神社も神仏習合でありましたが、明治以降に阿夫利神社と大山寺に分けられます。大山寺は現在下社がある場所から山の中腹に追いやられることになります。大山寺の再興については前回紹介した通りです。
明治6年(1873年)に国学者の権田直助が神祇官として招かれ、山内の仕組みをまとめ上げ現在に至る体系を築き上げます。大正12年(1923年)に発生した関東大震災では大きな被害が出ます。昭和2年(1927年)には小田急線伊勢原駅が開業します。昭和12年(1937年)に大山観光鋼索鉄道(現在の大山登山ケーブルカー)が開通。昭和42年(1967年)に大山は国定公園となります。昭和52年(1977年)に大山阿夫利神社下社の造営が行われ、現在の下社拝殿が竣工。令和の大改修が行われ、令和7年(2025年)に客殿や授与所が完成しました。
主祭神は大山祇神です。
ケーブルカーで阿夫利神社駅に到着すると石灯篭が左右にある道を進んでいきます。広場に出て振り返るように向きを変えると参集殿(参拝者の方の休憩施設)の横にある石階段を登っていきます。狛犬が左右に鎮座する大鳥居をくぐると境内へ。振り返ると鳥居の先に絶景が広がります。登ってきた階段を上から見下ろすと急な山に作られたことを改めて実感します。鳥居の先には獅子山があります。富士山の岩を用いて近年復興されたもの。周囲に十二支が置かれた非常に立派なもの。日本三大獅子山に数えられると言われ、大山獅子と言われています。私は幾つか獅子山を見てきましたが最も巨大で立派なものです。下社拝殿は山を背に鎮座しています。山頂の本社は大きくないので規模ではこの下社拝殿が最も立派な建物になっています。拝殿の隣には客殿と茶寮石尊があります。雄大な山々とその先に見える相模湾の景色が素晴らしいです。
大山は登山としても人気です。拝殿向かって左側から登拝門を通り急な階段から始まる登山道を歩いていくと大山阿夫利神社本社および山頂に迎えます。その道のりは高校時代に山岳部だった私でもかなりきついと感じる険しさです。また右側を進むとやはり登山道があり、見晴らし台に向かえます。そこには二重社(滝)という古来より禊が行われていた滝があります。龍神が現れたという伝承が残り龍の像があります。こちらも本格的な山道ですので生半可な気持ちや装備で行くと大変な目に遭います。山岳信仰がよく分かります。
新宿都心から箱根に行くよりも近い伊勢原駅からバスとケーブルカーを乗り継いでいく大山阿夫利神社下社。その先を自力で進むもよし、引き返すもよし。紅葉の名所として知られてハイシーズンは大勢の人で賑わうとか。途中のケーブルカーに向かう参道はお土産もの屋が軒を連ねています。古くから土地の守り神であり人を集める重要地点であったことが分かる神社です。
甲野 功
コメントをお書きください