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6月20日、21日の2日間開催された春東部戦を観戦してきました。学生競技ダンス連名、略して「学連」。学連は全国の加盟した大学が社交ダンスを競技として行う競技ダンスの組織になります。全国組織(全日本学生競技ダンス連盟)があり、その下に北海道、全東北、東部日本、中部日本、関西、中四国、全九州と地方ブロックがあります。今回観戦した春東部戦の正式名称は『第117回東部日本学生競技選手権大会』といいます。東部日本ブロックの大学が全て参加する大会です。東部日本ブロックは東都大学と東京六大学に分かれています。東京六大学は野球とおなじで慶應義塾大学、東京大学、早稲田大学、立教大学、明治大学、法政大学のことで東都大学は東部日本ブロックで東京六大学以外の大学をいいます。私の母校である東京理科大学は東都大学であり東部日本ブロックに所属しています。春に東都大学戦、東京六大学戦が行われて、春東部戦で全東部日本ブロックが集まるわけです。そして来月の全日本選抜戦への出場校、出場選手が決まるのです。
東都戦、六大学戦、東部戦はそれぞれ春と秋に行われるので区別するために春○○、秋○○と頭に春・秋をつけて区別するようになっています。
当院では先週まで“春東部応援キャンペーン”を実施していて、春東部戦に出場する学連選手がよりお得になるようにしていました。キャンペーン期間中に何名か選手が来院しました。来院選手の応援と視察を兼ねて会場の獨協大学に足を運びました。
東部日本ブロック主催の大会では最大規模の大会、春東部戦。今年の春東部戦は去年とは重みが違います。
今年2026年から完全10種目戦に東部日本ブロックは移行しました。これまではスタンダード(ボールルーム、モダンとも)4種目、ラテンアメリカン4種目の合計8種目で争われてきた東都戦、六大学戦、東部戦。それがスタンダード種目にヴィニーズワルツ、ラテンアメリカン種目にジャイブが導入されました。アマチュアやプロの競技会ではヴィニーズワルツ、ジャイブは最終予選や準決勝戦から導入されます。そのため成績上位者しか踊らない種目です。学連は大学4年間という限られた期間であるため単科目戦が重要視されます。スタンダード部門ならばワルツ、タンゴ、ヴィニーズワルツ、スローフォックストロット、クイックステップの5種類、ラテンアメリカン部門ならチャチャチャ、サンバ、ルンバ、パソドブレ、ジャイブの5種類の合計で順位を出します。低い級(クラス)なら4~2種類と競技会で踊るダンスの種類は減りますが、各種類全ての総合成績で順位を出します。学連ではダンス1種類ごとで順位をつける文化があります。東部日本ブロックではレギュラー戦と言われる選手権大会は全て単科戦です。7月に行われる全日本選抜(通称、夏全)だけが5種目総合(予選は4種類、準決勝戦から5種類の総合成績)で、12月の全日本選手権(通称、冬全)は1種目だけの単科戦になります。そして1996年にパソドブレが正式導入されてから30年ぶりに種目が増えて10種目戦になったのです。10種目戦ということはヴィニーズワルツ、ジャイブも予選から行い決勝まで行うということです。
10種目戦になったことで出場枠が増えます。東部日本ブロックのレギュラー戦は各大学で1種目につき2組まで出場できます。1組が1種目でも構いません。レギュラー戦は出場部歴に制限がないため4年生からエントリーを埋めていきます。他の大会は1年生のクラス、2、3年生のクラスと分かれています。しかしエントリー数に制限がないので各大学出場希望者は全員出られます。レギュラー戦はその通称のとおり、出場枠に制限があるので大規模校だと希望しても出場できない場合があるのです。昨年まではスタンダード・ラテンアメリカンともに最大各8組まででしたが今年から各10組まで出られます。同じペアが2種目出ることが多いのでミニマムで5組です。春東都戦では10種目単独エントリーにしました。対して春六大学戦では3組に限りヴィニーズワルツあるいはジャイブの3種目目もエントリーできるというやり方にしました。六大学戦は6校しか参加しないので1種目、各校3組までエントリーが認められていますが、更に特例で1組が3種目(ただし3種目目はヴィニーズワルツかジャイブに限る)も出られるようにしたのです。この春東部戦は東都方式と六大学方式のどちらを選択するか話合わせて東都方式を採用しました。どういうことかというと出場できるチャンスが昨年より増えたということです。例えば2年生に1種目ずつにしてたくさん出場するチャンスを与えることができるという。その反面、エントリー枠を埋めないといけないため部員数が少ない小規模校はより不利になります。というのは学連における基本原則の一つに、競技会は学校を背景とする団体競技、という項目があります。大学の背番号を背負って競技に臨み、団体(大学の)成績が出るのです。これがアマチュア、プロと学連の非常に大きな違いと言えるでしょう。
団体成績が重要というのが今年顕著になります。それが東部Ⅰ部校・Ⅱ部校制度の復活です。東部日本ブロックでは春東部戦で団体成績上位12校を東部Ⅰ部校、13位以下を東部Ⅱ部校としています。他のスポーツで多い1部リーグ、2部リーグのようなものです。分かれるとどうなるかというと秋東部戦にⅠ部校は無条件で出場できますが、Ⅱ部校は東部Ⅱ部戦という大会に出場して団体成績6位以内に入らないといけません。そこで6位以内に入ると準Ⅰ部校として秋の東部Ⅰ部戦に出場ができるのです。これが新型コロナ前までのシステムでした。2020年は新型コロナのパンデミックで競技会自体がほとんど開催されません。何とか冬全ができたくらいで夏全は史上初の未開催に終わります。翌2021年はⅠ部校、Ⅱ部校に分かれ東部Ⅱ部戦が開催されましたが東部Ⅰ部戦には全大学が参加しました。活動休止で大学を選抜している余裕が無かったのでしょう。2020年以降、学連の選手は激減し複数の大学が廃部になります。実質形骸化したⅠ部校・Ⅱ部校制度、2022年からは分けることがなく、東部Ⅱ部戦が行われず、東部Ⅰ部戦ではなく秋東部戦として開催されて春同様に全大学に出場権が与えられました。それが今年。コロナの影響が完全に無くなり、コロナ前に戻そうということで実質6年ぶりにⅠ部校・Ⅱ部校制度が復活しました。
今の現役学生にはⅠ部校とⅡ部校で何が違うのかと実感がわかないことでしょう。私は現役時代4年間で一度もⅠ部校になったことが無かったのでその境遇がよく分かります。まず夏休み明けの東部Ⅱ部戦で団体成績を残さないと東部Ⅰ部戦に出られない。出場レギュラー戦が減るのです。1、2年生の時は気にしませんが4年生にもなれば貴重な大会が一つ減るのです。そのためⅡ部校は東部Ⅱ部戦に照準を定めて夏休みに必死に練習します。また上位12校が参加しない東部Ⅱ部戦は非常に勝ち上がりやすいのでねらい目である反面、プレッシャーが大きいのです。負けるわけにいかない、という。私の場合、2年生と4年生のときは東部Ⅱ部戦で団体成績が6位以上を取れず東部Ⅰ部戦に出場できませんでした。最後の4年生で出場できなかったのです。当時は弱小校真っ只中にいた東京理科大学が10年以上ぶりにⅠ部校になれたのは2004年の頃。私はとっくに卒部していました。多くの同窓生がⅠ部校を未経験だったのでした。その時代の後輩をみると東部Ⅱ部戦のプレッシャーがないのでコンディションを調整しやすく秋東都戦、東部Ⅰ部戦と成績が良いのです。変な消耗をしない。Ⅰ部校になり冬全団体3位という黄金期を迎えて数年はⅠ部校だったのですが、落ちるときはあっさりとⅡ部校に。その年の東部Ⅱ部戦は対策が取れていなくて東部Ⅰ部戦は出場できませんでした。個人では史上最強のカップルがいたにも関わらず。今年になってⅠ部校とⅡ部校の違いを身に染みて現役生は感じることになるでしょう。コロナ以降入部したOB・OGには分からない。
このように春東部戦の団体成績が重要になるところに10種目に増加。エントリーの配分も難しくなります。まず枠を埋めないといけない。次にエースをどの種目に入れるか。まだまだ正式導入した日の浅いヴィニーズワルツとジャイブは層が薄いです。ここに4年生を入れて手堅く高順位で点数を稼ぐのか。やはり層が厚い種目にエースを投入するのか。また2年生をどの種目にするのか。
そしてフォーメーション競技です。フォーメーション競技とは4~8組でダンスをする団体競技です。1校ずつ踊り、曲も各校用意して振り付けも自由です。組数、使用する種目数、入退場合わせて時間などの規定がありますがかなり自由度が高いです。競技ダンスのメインは個人戦です。フォーメーション競技をきちんとやっているのは国内では学連だけでしょう。学校を背景とする学連ならではと言えます。しかし個人戦に集中したいためフォーメーション競技はおざなりになりがちです。冬全ではフォーメーション競技があるので後期は頑張るが前期は力を入れない大学が多かったのです。ところが。Ⅰ部校・Ⅱ部校制度が復活するとなると春東部戦団体成績を上げないといけません。フォーメーション競技は点数が取れるので出場する方が有利ですし、もちろん高い順位ならなおいいわけです。フォーメーション競技の順位が重要になります。コロナ禍といえる2022年には15校だったフォーメーション競技参加数は今年22校まで増えています。エントリー数は23校だったので各校極力参加していることが分かります。なお今回春東部戦の出場校が28校なので大多数が出場しています。中には4組~7組と8組そろわず出場する大学も。当然8組で出た方が見栄えがいいし表現できる構成が圧倒的に増えます。とにかく出場しようという気合と順位を上げたいという熱気が昨年よりも感じました。
もう一つ春東部戦の団体成績が影響するのが夏全(全日本選抜戦)です。東部日本ブロックからは団体18以上の大学に参加権が得られます。夏全は個人最強を決める大会として(かつては別ブロックでも行いましたが、今は)大阪で行われ、5種目総合戦です。そこに出場するには18位以上が必要なのです。私が現役の時は2年生のときは出場できませんでした。毎年Ⅰ部校は手が届かないが夏全に出られるように18位以内を目標にしていました。その境界にいたのです。なお私の同期に東京理科大学以上初の夏全優勝者がいますが、それだって春東部戦の団体成績が悪ければ出場できなかったのです。コロナ禍では大学数が減って、2022年に夏全出場できなかった大学はわずか2校でした(そのうち1校が東京理科大学)。夏全出場はかなり簡単になりました。ところがコロナが明けて学校数が戻ってくるとだんだんと狭き門になってきました。今年は28校が春東都戦に出場しているので10校が夏全に出場できずということになります。夏全出場を考えても団体成績が重要で、フォーメーション競技も手が抜けないのです。
そして夏全出場には東部推奨枠という個人枠があります。これは2003年から導入された制度で、春東都戦において決勝に残ったカップルは団体(大学)で出場権が取れなくても個人推奨で出場できるというもの。過去に東京理科大学は団体で夏全出場を逃すも個人で出場したという事例があります。その後できたシャドー制度にも適応され、シャドー選手は春東部戦で決勝に残らないと夏全出場が叶わないのです。その点で10種目になった今年はチャンスが増えたと言えます。まだ層が薄いであろうヴィニーズワルツ、ジャイブに出場すれば決勝に残りやすいと考えられます。
このような今年ならでは事情を踏まえて会場に行きました。
6月20日。初日。土曜日で患者さんが帰ってから会場に向かいます。この日はラテンアメリカン部門の競技会です。時間の都合上、準決勝からの観戦でした。来院している選手は強豪なので予選を突破しているので会場で観ることができました。前回のミニ東部戦に比べてより仕上がっていました。
会場の熱気が凄かったです。春東都戦、春六大学戦と比べ物にならない。声援に本気度が違うという感じです。観客数も相当増えていました。シャドーカップルは決勝に残らないといけない。団体成績を取らないといけない。選手以上に声援に必死さを感じました。
ジャイブのレベルが一段と上がっていました。今年から単科戦に導入されたジャイブ。春東都戦のときは2年生が決勝に残りましたが、そのようなことは春東部戦では起きません。実力者が残るという感じです。その中でもジャイブ特化型といいますか、ジャイブが特に上手い選手が目につきます。今大会ジャイブで優勝した3年生の選手は特にそう感じました。
3年生の台頭が激しい。コロナ以降、層が薄くなり2年生や3年生が決勝に残る、優勝することが珍しくなくなりました。練習ができなかった上級生よりも後に入った下級生の方が練習できる。そして人が少ない。昨年卒部した4年生の場合、上位陣は2年生から決勝に残っていました。コロナの影響が無くなった今も3年生が4年生よりも上に来るケースが多々あります。これは学連選手の進化がとても速いことが考えられます。上達スピードが年々上がっているのです。それは短期間でも言えて、春東都戦、春六大学戦と決勝メンバーや順位が変わりました。
2日目。この日はスタンダード種目とフォーメーション競技。最終予選から会場に。コロナ前は3次予選まであった春東都戦は2次予選に予選が減っています。5種目とフォーメーション競技があるためスケジュールがタイトになっているのです。コロナ前は事前にフォーメーション予選会を行い春東都戦には8校しかフォーメーション競技に参加できませんでした。それが一発勝負になっています。来年以降は予選会を別日に行わないと2日に分けても厳しくなるかもしれないと感じました。優勝者のオナーダンスもかなり“巻き”が入っていましたし。
スタンダード種目も決勝メンバーがかなり変わりました。諸々の事情で強豪選手が出ていないことも関係しましたが。それを抜きにしてわずか1~2ヵ月でかなり変わると感じました。会場にいた知り合いのプロも学連のレベルが上がっていると感想を漏らしていました。
特に注目したのがヴィニーズワルツです。基本的なナチュラルターン、リバースターン、チェンジステップ以外のステップを入れる選手が出てきました。非常に難しいフレッカールに挑戦する選手もいました。今年から正式導入ですが日々ヴィニーズワルツのレベルが上がっていることを感じます。ジャイブのようにヴィニーズワルツ特化型の選手が生まれてくるのではないでしょうか。
個人的な大ニュースとしては東京理科大学の後輩がスローフォックストロットで優勝したこと。経験者の1年生が最初の大会でワルツを優勝したことを除くと2019年以来のスタンダード種目でのチャンピオン誕生になるかと思います。しかも東部戦というレギュラー戦で。春東都よりも順位が大幅に上がりました。六大学が入った上での優勝。まさに成長スピードが加速しています。そして団体成績は7位で東京理科大学のⅠ部校が決定しました。コロナ禍の2021年以来ですが、実質2018年以来のⅠ部校返り咲き。今年は創部60周年の節目の年でⅠ部校になったことは非常に喜ばしいことです。東部Ⅱ部戦に出場せず東部Ⅰ部戦出場が確定です。
フォーメーション競技はより熱い戦いでした。近年は冬全くらいしか本気度が感じられなかったのですが、春東都戦では声援もすごかったです。現在絶対王者である電気通信大学のフォーメーションは圧巻でした。その電気通信大学の打倒を狙う慶應義塾大学、上智大学らもレベルが上がっている感じがします。
最後に団体成績を記載しておきます。
第1位 東京大学
第2位 電気通信大学
第3位 慶應義塾大学
第4位 上智大学
第5位 青山学院大学
第6位 東京農業大学
第7位 東京理科大学
第8位 成蹊大学
第9位 東京科学大学
第10位 新潟大学
第11位 専修大学
第12位 明治学院大学
ここ以上が東部Ⅰ部校
第13位 東京外国語大学
第14位 早稲田大学
第15位 獨協大学
第16位 立教大学
第17位 法政大学
第18位 駒澤大学
ここ以上が夏全出場
第19位 一橋大学
第20位 明治大学
第21位 東海大学
第22位 日本大学
第23位 千葉大学
第24位 筑波大学
第25位 東京都立大学
第26位 武蔵野美術大学
第27位 中央大学
第28位 大東文化大学
春東都戦が終わり、夏の全日本選抜に向けた準備が出場選手に求められます。
甲野 功
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