～按摩の話　曲手（きょくて）～

按摩の中には色々な技術・方法がありますが、圧迫、軽擦、揉捏、運動法は按摩以外の手技にも使うことがあります。反面、按摩独自の技術もあります。

それが曲手（きょくて）です。

教科書には“あん摩独特の手技で＜叩打法の変形＞とみなされている”と記載されています。じゃあ叩打法とは何ですか？という話になりますが、体を手で叩く技術です。昔は孫がおじいちゃん、おばあちゃんに肩たたきをしたと言いますが、それが叩打法です。

↓こういうのです。

その叩打法の変形が曲手というもので、指で体を叩くというか、こするというか、とにかく独特な手の使い方をします。巷にある整体院、リラクゼーション店ではまずお目にかからない特殊な技法です。マニアックといいますか。

余談ですが、お店に行ったときに「曲手をしてください」と尋ねてください。曲手の存在を知らない、あるいは知っていてもできない、のであればその人はあん摩マッサージ指圧師免許を持っていないと考えて構わないでしょう。

自分自身、これまで色々な店に行きましたが、一度も受けたことがありません。

（余談ですが、あん摩マッサージ指圧の資格を取ろうと専門学校を見学していた頃、東京医療福祉専門学校の見学で、この曲手を見てとても驚きました。）

曲手には、
・車手

・挫手（くじきて）

・突手（とつて、つきて）

・横手（別名：鳴骨の術）

・柳手（別名：ばら手）

・頭の曲手

・耳鐘の曲手

・袋打の術（ふくろだのじゅつ）
が東洋療法学校協会編集の教科書「あん摩マッサージ指圧理論」に紹介されています。

名前からして拳法か忍術のような響きですね。

車手は下から上へ伸ばした指（親指以外の四本の指）をタイミングよく曲げていきローラーのように転がす技です。

突手は指先で叩くようにして、絶妙なタイミングで指を曲げます。下手にすると突き指となり、受ける相手も術者も痛いだけという技術です。

横手（別名、鳴骨の術）は主に小指の外側を扇を仰ぐように使います。

熟練するとリズミカルな音がして骨を鳴らすような様から鳴骨の術という異名があります。学生時代に聞いた話ですと、視覚障害者の多い按摩師は音が鳴る、鳴らす技法が大切で、その音で良しあしを判断したのだとか。叩打法もそうですが音が鳴ることが重要な要素なのです。

袋打の術（縮気打ともいいます）。

両手を軽く握り叩いた時に空気が抜けて音が鳴るようにします。ほとんど叩打法です。床屋で受けることがあるかもしれません。床屋さんに間違って伝わったのか手の組み方が異なり、衝撃が強いことが多いのです。

 

実際のところ効果のほどはいかようなのか？という話もあり、使わない先生も多いようです。なんせ教科書には曲手の効果について触れている記載がない？のです。

しかしながら私は、車手、突手、横手、袋打の術は多用しています。按摩師としは残しておくべき技術と考え実践しています。個人的な偏見ですが曲手がうまい人は同業者から一目置かれます（？）。曲手ができますか？と言って、はいもちろん、と答える術者は気骨あるあん摩マッサージ指圧師ですね。

甲野　功

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