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~マッサージの話 スウェーデンマッサージの概要~

スウェーデンマッサージ入門 広橋憲子著 医道の日本社
スウェーデンマッサージ入門 広橋憲子著 医道の日本社

 

 

これまでの技術を再確認してマッサージの技術をもう一段階上に持っていこうと考えています。これまでの(オイル)マッサージの技術、そして持っていた常識を超えて使える技術を学ぼうと「スウェーデンマッサージ入門」という本を買って勉強しています。このこと前に書きました今回はそもそもスウェーデンマッサージとはどのようなものなのかを確認したいと考えています。

 

おそらく一般的にはマッサージというと、衣服の上から筋肉を揉む動作、と想像すると思います。繰り返しますが、厚生労働省認可のあん摩マッサージ指圧師から言わせるとそれは按摩(あんま)あるいは指圧(しあつ)の技法になります。我々あん摩マッサージ指圧師が言うマッサージ(massage)とは、皮膚に滑剤(滑らせるもの、オイルかパウダーが基本)を用いて直接肌に触れる技術となります。そのため当院のコースでは「オイルマッサージ」という表記をしていますが、ここでいうマッサージとは皮膚を直接触るマッサージのことです。まず、これまでの私のマッサージの常識としていた概念や知識をまとめておきます。 

 

マッサージの技術はフランスから導入された
医聖とも言われる歴史上の偉人ヒポクラテスも「医師たるものマッサージを習得しておかなければならない」と発言したそうです。もちろんカタカナ表記であることから分かるように海外が発祥です。なお按摩は中国、指圧は日本が発祥です日本には明治20年にフランスから軍医である橋本乗晃によってもたらされたとされています。最初は軍医によって輸入されたのです。そしてマッサージの本場はヨーロッパという印象があります。

 

マッサージは主に静脈血、リンパ液に対して働きかける
マッサージの原則は求心性といって、末端から心臓(あるいは体の中心部)に向かう方向に流していきます。先述した按摩や指圧が主に筋肉にアプローチするのに対して、マッサージは静脈・リンパへ主に働きかけます。液体である静脈血、リンパ液を流すことを目的とします。静脈血とは、心臓から出た酸素や栄養分が豊富に含まれた動脈血が各組織に行き渡り細胞でガス交換(酸素が供給されて二酸化炭素が排出されること)された二酸化炭素や老廃物を多く含んだ状態の血液です。水道に例えると上水道が動脈血で下水道が静脈血といえるでしょうか。リンパ液は静脈血で処理できなかった分を回収する別ルートのイメージになります。よって静脈血もリンパ液も末端から心臓あるいはリンパ節に戻るものとして、その役割を助けるためにマッサージを行うと考えられています。
流れをよくするためにオイルを用いるのですが、LT(リンパ浮腫療法士)の手技ではオイルを用いずに皮膚の上に直接手を当てて求心性に流していく技術があります。そういった意味では滑剤を用いなくとも求心性に静脈血、リンパ液戻すことを重要視するのがマッサージの大きな特色でしょう。

 

皮膚の上から直接触るのは滑剤(オイル)を用いて滑らせるためである。
このように静脈血、リンパ液の流れを手助けすると考えれば滑りを良くして流す方が効果的です。按摩で最も用いられる技法が揉捏(揉むこと)、指圧では押圧(押すこと)であるのに対してマッサージでは軽擦(軽く擦る)となるのはそのためです。静脈、リンパは柔らかく圧をかけた方がいいので滑りをよくした方が効果的。かつ摩擦による皮膚へのダメージを軽減できます。

 

・他と比較すると体の動きがとても大きい
大雑把にいうと<按摩の揉む>、<指圧の押す>に対して<マッサージは流す>ため、ストロークが長くなります。それこそ足の指先から足の付け根まで一気に流すようなことがあるわけです。按摩や指圧に比べると移動距離が大きくなるのです。そのため按摩、指圧に比べるとずっと足腰が使えないといけません。鍼灸もそうですが、指先の器用さが際立つだけでなく、体を大きく動かすための下半身がより重要になるのがマッサージです

 

・力を入れない
繰り返しになりますがマッサージでアプローチするのは主に静脈、リンパ。よって筋肉よりも力を入れる必要がありません。むしろ力を入れて流すと猛烈な痛みを生じ、揉み返しがくることがあります。これは私自身の経験で、免許をとったルーキー時代にふくらはぎを強くマッサージしてあとで痛みが出たと言われたことが実際にありました。むしろ強く押さないですることが技術的に難しいと言えます。女性術者の方がよくマッサージをするのは男性よりも一般的に力がない分余計な力みがないから有利なのでしょう(加えて皮膚を出すため自ずと男性の方が敬遠されるとも言えるのですが)。

 

こういった既存の知識と考えを踏まえてスウェーデンマッサージはどのようなものか「スウェーデンマッサージ入門」から引用して紹介していきます。

 

スウェーデンマッサージの歴史
ヨーロッパで行われているマッサージの源流の一つがスウェーデンマッサージとされています。日本はフランスからマッサージを取り入れましたが、そのヨーロッパで行われているマッサージの源にあたるものだそうです。スウェーデンマッサージの基礎を作ったのはスウェーデン生まれの詩人で医師でもあったP.H.Ling(1766-1839)。医学や各種運動療法を学ぶ傍ら20代のときにフェンシングの練習を開始しその練習を通じて身体動作について様々なことを学んだといいます。医学部教授となりスウェーデンロイヤルアカデミーの会員となり、健康と治療のための体操であるスウェーデン体操とスウェーデンマッサージを作り上げたといわれています。創設者が医師であったこともあり、現在でもスウェーデンマッサージは疲労回復、気持ちがいいという慰安目的よりも治療に用いるものという印象がヨーロッパでは強いと書かれています。Lingの死後、19世紀後半から20世紀にかけてオランダ、ドイツでマッサージの研究が進められ、アメリカにもスウェーデンからの移民によりマッサージがもたらされました。

 

スウェーデンマッサージの特徴
スウェーデンマッサージの特徴はまず基本姿勢を徹底的に教えるといいます。既に書いたようにマッサージは鍼灸はもちろん、同じ徒手療法である按摩や指圧に比べて体を大きく移動させます。そのため基本姿勢がとても重要です。これはタイ古式マッサージとはまた違った動きです。その基本姿勢には2種類あります。
フェンサーポジション(フェンシング選手の姿勢)
ライダーポジション(乗馬の姿勢)

フェンサーポジションはベッドの横に立ってマッサージをする基本姿勢です。上半身が垂直位を保って移動するためのものです。創設者がフェンシング経験者らしいです。私もヨーロッパ発祥の社交ダンス選手であったのでとても納得できるものです。
ライダーポジションはベッドに向かって正面を向いて立ってマッサージをするときの基本姿勢。ここら辺も農耕民族だった日本人と騎馬民族だったヨーロッパ人の違いを感じます。社交ダンスを研究するにあたってこの文化の差は大きく、色々と苦労しました。こういったところも地域的なことを感じます。

 

スウェーデンマッサージではオイルの量が他に比べて少なめといいます。それは深い筋肉にアプローチすることが多いためです。これは既に書いた通り主に静脈・リンパにアプローチするという私が持つこれまでのマッサージの基本と一線を画すところです。つまり按摩、指圧に近い筋肉の深い部分まで効かせる意図と技法があるということです。

 

またテンポが他に比べてゆっくりであると言います。これまでの私の概念だと術者が大きく体を動かす分テンポあるいはリズムが按摩や指圧に比べて速いものだと考えていました。そこに筋肉まで効かせるということもあり、ゆっくりじっくり行うのがスウェーデンマッサージの特徴の様です。私にとってはなかなか衝撃的な内容でした。

 

個別に名称がつく基本テクニック
マッサージの基本手技というのは全て漢字で表記されるものが教科書に掲載されています。スウェーデンマッサージでは重複するものもありますが、独自の名称をもった基本テクニックがあります。その多くが初めて目にするものでした。写真と解説文を読めばどのようなものかはすぐに理解できましたが、名称がつくことでより理解が進みました。

 

ホールディング(同調):肩甲間部(背中)と仙骨(お尻の中央)に手を置き両手でゆっくりとゆらす
エフルラージュ(軽擦):心地よい圧をかけたまま軽く撫でさする これは日本の教科書と共通
ペトリサージュ(揉捏):適当な圧を加えて筋肉をこね、つまみながら揉む これも共通

フリクション(強擦)手のひらや指で強く揉み、強く擦る 日本の教科書にある強擦とは別のものと思われる
バック・クロス(背中の十字架):両方の親指、人差し指で筋肉を挟み十字の形に筋肉を盛り上がらせる これは私が専門学校の3年生時の特別授業で目にしたものでした
エッジング(少しずつ進む):親指以外の指四本を立てて筋肉を交互に手前に引く 筋肉へアプローチする技術
シィザーリング(S字テクニック):両手で筋肉をS字状にする これも筋肉へアプローチする技術
ミルキング(乳搾り):首の後ろを付け根から頭に向かって牛の乳搾りのように滑らせる 方向が一方ではなく戻る
ミルキング2(乳搾り):肩から首にかけてのミルキング
シャンプー(頭を洗うように):頭部全体をシャンプーするように指先でまんべんなくこする 
スクリュー(巻きつける):髪の毛を指の間に巻き付けて軽く引っ張る
ハッキング(切打):指を伸ばして小指側で叩く(按摩と同じ技法)
スウィンギング(弧を描くように):手のひらを広げて親指同士をくっつけはさみ、つまみ気味交互に滑らせる
フィンガー・ハロー(両母指X重ね):親指同士をX字型に重ねて親指は直進、残りの四指は円を描くようにする
シェイク(振せん) :左右に素早く震わせる(これは日本の教科書と共通)
バナナ・グリップ(バナナ上につまむ):グリップはつまむことであるが、腹部をバナナ状につまむ

既知の技法もありましたが、未知のものも多くありました。筋肉に対して効かせる技術があり、マッサージだけでなく按摩にも応用できるものがあると感じています。

 

その他の技法
他にも拳で殿部を押しながらもう片方の手で膝を曲げ伸ばしするやり方。これは患部を押さえて別のところから患部の筋肉を動かす技術です。マッサージで行う概念がありませんでした。
肘を用いる。按摩では肘揉みという技法が古法になるのですが、肘の先(肘頭といいます)を用いるマッサージは知りませんでした。
足の裏を用いる。タイ古式マッサージではあるやり方ですが、マッサージで足の裏を使うというのは。私の常識にはありませんでした。
髪を引っ張る。シャンプーで紹介しましたが、髪の毛を軽く引っ張るという。これも考えたことがないものです。本音はそんなことをするの?という感じです。

 

このように色々と画期的なこと(私にとってですが)を知ることができました。全てを実践できるとは思えませんが技術と思考のレパートリーが増えたのは確かです。臨床で使えるものに習得したい練習をします。

 

甲野 功

 

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