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~「鍼灸師」の創設は予定していないとの回答~

あはき法施行令改正する政令案に対する意見 厚生労働省医政局医事課
あはき法施行令改正する政令案に対する意見 厚生労働省医政局医事課

 

 

この業界の難しいところ。「鍼灸師」という資格は存在しません。頻繁に国家資格のことを取り上げていますが、厚生労働省管轄の国家資格では

はり師

きゅう師

が資格免許となっています。しかも法律上はきゅう師ではなく「きゆう師」。これは法律成立当時の慣例で小さい文字も大きく表記するということから「ゅ」が「ゆ」と書くのです。更にはり師のはりとは鍼、きゅう師のきゅうとは灸のこと。国家資格でみると平仮名でより一層混乱しそうですちなみに賞状サイズの免許証にも平仮名で記しています。このような実情がありながら一般には「鍼灸」、「鍼灸師」とまとめて述べることが多いですそれは我々当事者が自身のことを鍼灸師と呼ぶからに他なりません。普段、自分自身のことをはり師です、きゅう師ですと説明することはありません。

 

ただし資格の制度上は鍼灸ではなく鍼と灸で別々の資格であります。国家試験も分かれています。免許も別です。近い資格として「あん摩マッサージ指圧師」(※法律の文面では「あん摩マツサージ指圧師」)があります。あん摩マッサージ指圧師は鍼灸師と非常に近い資格であり、私のように両方取得している人も少なくありません。ところが。“両方”と表現したようにあん摩マッサージ指圧師と鍼灸というように当事者でさえも対比させて考えてしまいがちですが、免許制度上は

あん摩マッサージ指圧師

はり師

きゅう師

と3つです。両方というのは主に2つあるときの表現ですから矛盾です。この業界では、頭文字をとって「あはき」と称したり3つの資格なので「三療」と表現したりすることがあります。法律もあはきでまとめて一つになっております。

 

ここであん摩マッサージ指圧師の方に目を移します。名称が長いと思いませんか?はり、きゅうに比べてあん摩マッサージ指圧とは。これは按摩マッサージ指圧の3つの技術を繋げたためこのような名称になっているのです。実は技術も、発祥も、歴史・成り立ちも、三者三様なのですが、どれも手で行うということで資格にする際にまとめてしまったのです。日本では時代順にすると按摩(平安以前)、マッサージ(明治時代)、指圧(大正時代)の順番です。按摩というのは大宝律令(701年)にもその名前が出てくるほど古くからあります。一方、指圧として国がまとめたのは近代に入ってから。ここら辺の成り立ちは複雑なのでここでは説明しませんが、本来別々のものを一まとめにしてしまったのです。なおあん摩マッサージ指圧師になるための専門学校では座学(理論)は一つですが実技は3つに分かれています。按摩実技、マッサージ実技、指圧実技と。あん摩マッサージ指圧師は技術的に異なるものを、いわば強引に、一つに資格にまとめてしまった。

 

話を戻して鍼灸。このようにはり師ときゅう師を一まとめにして「鍼灸師」として一まとめにできないのか。というより何故しないのか。このように考える人は少なくありません。その背景を説明します。

 

まず専門学校や大学ではり師だけ、きゅう師だけの資格は取れません。そのように教えている学校がないのです。どこも一律「鍼灸科」として鍼と灸の両方を同時に教えます。あん摩マッサージ指圧師だけの専門学校はありますがはり師だけ、きゅう師だけの専門学校、大学は存在しないのです。教科書も『はりきゅう理論』と一まとめにされています。ただ実技は鍼実技、灸実技に分かれて基礎練習を行います。応用として鍼灸実技になることもあります。そして国家試験。はり師試験、きゅう師試験と分かれているのですが、問題は90%以上共通です。160問が共通問題ではり師・きゅう師それぞれ10問だけが独自の問題です。そのため多くの受験者がはり師・きゅう師国家試験を同時に受験して合計180問に挑戦するのです。それぞれ合格するには全体の6割正解なので(170問中102問正解すること)ほとんどが両方合格するか、両方不合格になるかです。稀に個別問題の正答数に違いが出て片方だけ合格するという状況が起きます。このように学校では同時に鍼灸を教え、試験も同時に受けます。しかし資格は別々である。あん摩マッサージ指圧師は一つにまとめたのにはり・きゅうは“鍼灸”とまとまらないのは何故なのか。

 

この疑問に対して厚生労働省は一つの回答を出しています。

はり師ときゅう師は独立した業務を行っているため、「鍼灸師」の創設は予定しておりません

 

どのようなときに出た回答なのか説明します。これは2019年に国家試験の受験手数料と免許登録手数料を値上げする際のことでした。最初に説明したように『あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律』という法律があります。通称、『あはき法』。このあはき法施行令により国家試験受験手数料と免許登録手数料の額が決まっています。これらの料金を値上げすることにしました。

 

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律施行令の一部を改正する政令案について(概要)

 

あはき法施行令の一部を改正する政令案について(概要)
あはき法施行令の一部を改正する政令案について(概要)

 

 

値上げするには法律施行令を改正することになるので、意見を求めるパブリック・コメントを募集します。

 

「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律施行令の一部を改正する政令案」に関する御意見募集の結果について

 

パブリック・コメント あはき法施行令の改正する政令案に関する意見募集結果について
パブリック・コメント あはき法施行令の改正する政令案に関する意見募集結果について

 

 

 

そのときに寄せられた意見に、鍼灸師として資格をまとめられないのか、というものがありました。

 

意見募集結果

 

厚労省医政医局医事課 あはき法施行令の改正する政令案に関する意見募集結果
厚労省医政医局医事課 あはき法施行令の改正する政令案に関する意見募集結果

 

 

 

御意見の概要

そもそも論として、「はり師」と「きゅう師」を分ける必要性はあるのでしょうか?一つにまとめて「鍼灸師」にしてしまえば受験料や登録料等も一つになり、また余計な事務手続きが減る分人員削減も行う事が出来、それぞれにとって利益があるのではないでしょうか。今回の趣旨にも関わる事だと思うので、現実に即した法改正をお願いします。

受験料、登録料が一つになることで受験生の料金負担が減る。また行政側の事務手続きも減る。鍼灸師にまとめるメリットがあると意見しています。当然、現状を理解している方の意見だと推測できます。これに対する回答です。

 

御意見に対する考え方

はり師ときゅう師は独立した業務を行っているため、「鍼灸師」の創設は予定しておりませんが、今後の業務の参考にさせていただきます。

このように回答しています。結論は鍼灸師の創設は予定していない。ただ今後の参考にはすると。まとめない理由としてはり師ときゅう師は独立した業務を行っているためだとしています。ここでいう業務というは術者の行うことなのか事務処理をする行政担当者の行うことなのか定かではありませんが、はり師・きゅう師は個々に独立しているから別物であり一つにすることはないということは読み取れます。

 

余談ですがこのとき受験手数料が11,600円から14,400円に値上げしました。1試験につき2,800円。はり師・きゅう師だと5,600円、あはき3資格だと7,400円の値上げです。これに登録手数料が5,200円から5,600円と400円の値上げですから、はり師・きゅう師だと800円、あはきで1,200円の値上げ。はり師・きゅう師同時受験では8,200円の値上げになります。鍼灸師として一つの資格であれば値上げ額は半分ですし、もちろん受験手数料・登録手数料も半額で済むのです。更に今年9月26日付で受験手数料が19,500円になり、5,100円の大幅値上げです。すなわち来年受験する受験生ははり師・きゅう師で10,200円値上げとなります。私が受験した17年前に比べるとかなり料金が上がっています。

 

鍼灸師とまとめないのは業務が独立しているということもあるのでしょうが、視覚障害者の事情を踏まえたものだと私は考えています。視覚障害がある方だとあん摩マッサージ指圧師しかできない(やらない)、鍼灸はしないという人もいるわけです。更に鍼はするが灸はしないという人も。かの有名な杉山和一検校という江戸時代を生きた視覚障害のある鍼の大家も視覚障害者に教育したのは鍼と按摩です。伝統的な灸は艾を捻り線香で火を点けるやり方。完全失明している場合は厳しいものがあります。実際に私は先天性の完全失明している術者と一緒に仕事をしたことがありますが、その方は按摩と鍼だけで灸はしませんでした。他にも按摩のみという方が2名。弱視、片目失明の人は灸もやっていました。はり師ときゅう師で今でも資格を分けているのはこのような事情があるのではないかと私は考えています。

一方、今後の参考にするという文章が厚生労働省からの回答にあります。実は視覚障害者の鍼灸受験者数、合格者数ともにどんどん減っています。あん摩マッサージ指圧師はまだ鍼灸に比べれば多いのですがやはり数は減っています。歴史的に視覚障害者の生業として鍼灸師(あん摩マッサージ指圧師も)がありましたが、視覚障害者にとって別の仕事を就くのであれば(選択肢があるのであれば)状況が変わるのかもしれません。もしかしたら「鍼灸師」に資格をまとめる時代がくるのかも。

 

はり師ときゅう師をまとめて「鍼灸師」を創設する予定はありません。これが現在の厚生労働省の回答です。

 

甲野 功

 

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