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~灸の話 スモークレス灸~

最近お灸を使うことが増えてきました。


もともとお灸を受けるのは好きなのですが、あまりやる方は好きではありませんでした。それはお灸の方が鍼よりも注意力が必要で気疲れするからです。
火を扱うため、患者さんに火傷を負わせるのはもってのほかで、衣服を焦がすことや灰がかかること、術者の衣服や器材にも跡がつかないように注意しなければならないのです。鍼よりもずっと気を使います。

 

受けるのが苦手でやる方が好きな鍼。受けるのは好きだがやりたがらない灸。鍼灸で互いに対照的な嗜好ですが、最近はお灸もやるようになってきました。

 

お灸をする際に懸念することが火を扱うこと以外にの存在があります。

 

お灸には昔ながらの艾を捻って線香で火を点ける直接灸、皮膚には直接触れない温灸など種類があります。以前、棒灸長生灸について書きました。今回は煙がほぼ出ないスモークレス灸の話です。

 

昔、お灸には線香と艾(もぐさ:ヨモギを乾燥させて精製したもの)が必須でした。艾を固めれば棒灸になりますし、手で捻れば直接灸として使います。どちらにせよ火が付いた線香で着火して使用します。そうなると線香からもお灸からも煙が出ることになります。この煙が現代になると問題になることがあります。

 

お灸の煙は効果があると言う人もいますが、煙は煙ですから煙たいわけです(いたって当たり前のことを書いていてちょっと恥ずかしいですね。煙、煙と繰り返して。)。


これがお灸をする鍼灸師側には、かなり煙たくて厳しいものになります。艾を捻る直接灸ですとすぐに燃え尽きて煙が出なくなりますが、棒灸ですと長時間煙を出し続けます。更に線香はずっと煙が出続けます。
線香とお灸の煙は部屋を充満し鍼灸師の目と喉を苦しめます。専門学生時代にお灸の練習を涙目になり咳きこみながら続けたものです。

 

灸師たるものそれは我慢しろ、という声もあるのですが、たくさんお灸をしていけば相当濃い煙になりますから、自身の体調に影響を受けることになります。なお煙を考慮して、法律で鍼灸院の施術室には規定以上の広さの開放できる窓があること、もしくは、排気設備を有することが鍼灸院を開くことができる条件の一つになり、保健所の検査を受ける必要があるのです。

 

空気清浄機があったとしてもお灸の煙はかなり機械に負担をかけますし、部屋も傷みます。かつての広い日本家屋で風通しがよい環境ではさほど問題にならなかったであろう煙も、現代の居住環境では無視できなくなっています。賃貸で物件を借りている場合は壁紙への影響も考えもの。

 

また煙の煙たさは患者さんにも影響します。受けている患者さんの呼吸器にダメージを負わせることがあります。咳が酷くて来院された患者さんにお灸をしたら煙でむせて咳が悪化したという笑い話も(実際のところ全く笑えませんが)。
更に連日のお灸の煙で気管支を傷めてしまった鍼灸師もいます。人を治そうと鍼灸をしているのに自らがお灸で健康を害してしまったら本末転倒です。

 

加えて煙は匂いを伴います。
線香はその名の通り匂いが出るようにできていますし、艾を燃やした煙も匂いがあります。この匂いが髪の毛につくと、匂いが後々まで残ってしまいます。若い女性ですと髪に匂いがついてしまうのが嫌でお灸を拒否することがあります。若くなくても仕事の合間に来院されると職場に戻ったときに匂いがついていて、取引相手や目上の人に対して失礼になると懸念する場合もありました。

 

うちのように都心部で開業していると煙のことがネックになりお灸をしづらくなることがあります。


そのために開発されたであろう製品がスモークレスのお灸です。スモークレスとはその名の通り、煙が(ほとんど)出ないという意味。実際に使ってもほとんど煙がでません。

写真で比較していますが、どちらもカマヤミニという商標のお灸です。片方が通常のもの、一方はスモークレス。火がついていますがスモークレスは煙が出ていないことが(ちょっとわかりづらいですが)確認できます。


煙が出ないので灸師にも患者さんにも気管支に優しいです。また煙と一緒に出る匂いがありませんから匂いの心配がいりません。

うちの治療院では何種類かのお灸を用意していますが、一度に大量のお灸をするときはスモークレス灸を選択するようになりました。特に咳が酷くて声が出ない患者さんに「うちでもセルフでお灸するのですが、ここのお灸は喉が苦しくなりません。」と言われて、煙を出さない配慮は必要だと改めて実感しました。

 

なお全て全てスモークレスが良いとは言いません。
捻った艾に線香で火を点ける直接灸も大切です。お灸の匂いが好きだと言う患者さんもいらっしゃいます。お灸は煙を伴って当然という声もあります。状況によって使い分けることが大切ですし、それもプロとしての役目だと考えます

 

少なくとも煙が嫌、匂いがつくのが嫌という理由でお灸を敬遠されないようにスモークレスのお灸を用意しています。

 

甲野 功

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