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~「ハリトヒト。」松田先生インタビュー~

ハリトヒト。サイトより
ハリトヒト。サイトより 自分にしかできない「挑戦」(前編)/鍼灸ジャーナリスト:松田博公

 

鍼灸師が作る今年リリースが始まった鍼灸のWEBメディア、「ハリトヒト。」。

鍼灸師の人となり、に注目したインタビュー記事を中心に更新しています。また、つい先日それまでの記事をまとめて、雑誌として発売しました。

 

そして昨日、最新記事が出ました。
<自分にしかできない「挑戦」(前編)/鍼灸ジャーナリスト:松田 博公>

このインタビューを読んだときに、これまでにない驚きがありました。関東鍼灸専門学校、内原拓宗副校長のインタビューも衝撃的でしたが、今回のものは勉強になり私がモヤモヤしていたことを鮮やかに言語化しており、大いに考えさせられるものでした。

 

 

今回インタビューを受けた松田博公先生はジャーナリストであり鍼灸師免許を持つ異色の経歴をお持ちです。


国際基督教大学卒、東洋鍼灸専門学校卒、明治国際医療大学大学院修士課程(通信制、伝統鍼灸学専攻)修了という学歴。
元共同通信社編集委員、元東洋鍼灸専門学校副校長という職歴。
『鍼灸の挑戦』を出版するという業績。


経歴だけでも鍼灸界の偉人にあたる人物ではないでしょうか。

 

その松田先生の言葉には臨床現場に立つものに対して大切なものがあり、現代の鍼灸が抱える課題を明確にしています。昨今の鍼灸業界のこと、ジャーナリストとしてのこれまでの活動など、を質問に応えながら語っていきます。
その言葉の中で私の心に刺さる部分を抜き出していきます。

 

 


それから現実の問題として「ツボ療法」についてなら書けるけど、鍼灸臨床のあるがままは書けないと思った。

 


「誰にでも三里の灸をするのは本来の鍼灸ではない。
患者の脈を診て証を立て、それに従って配穴し、補瀉するのが鍼灸だ」と考えていたからね。

 


ぼくはそこまで思い詰めたわけではないけれど、「鍼灸術を生かすも殺すも、患者さんに内在する自然治癒力が重要なんだ」って、身をもってよくわかった。
自然治癒力が十分に働いていないと、鍼灸術は効かないし、ツボ療法では間に合わない。
実際の臨床では、自然治癒力を賦活するために、患者さん一人ひとりの状態に合ったきめ細かい方法を、鍼灸師は試みなくてはならないでしょう?
だけど…。

 

この部分は”臨床家”松田先生のこだわりを感じました。

東洋鍼灸専門学校を出られているので(いわゆる)経絡治療がベースにあるのでしょうか。「ツボ療法」と鍼灸術は異なるというスタンス。この症状にはこのツボ(経穴)という1対1の関係ではなく、患者さんの状態を把握したうえでやり方を決める。

 

しかし一般の方に説明するには「健康には足三里(というツボ)がいいですよ、松尾芭蕉も使っていましたよ」と言うのがわかりやすい。各々の状況を考慮せずに一色単にこれと決めてしまった方が楽。

 

たしかに「ツボ療法」は鍼灸の中のひとつであるが深い意味ではイコールではない、という葛藤を感じます。それは学校で習ったこともそうですし、ご自身の体験もあるよう。ジャーナリストとして大衆に説明する際には例外・注釈が多いものを出すのは難しい。そのように私は読み取りました。

 

さて「ツボ療法」という用語は秀逸な表現だと思いました。

 

鍼灸専門学校の当時、私も矛盾に悩んだものでした。
ある講師は「鍼灸に特効穴などない。」という。別の講師は「この経穴(ツボ)は〇〇(症状)の特効穴だ。」という。
言っていることが人よって違うのは何故?。学生当時の私には疑問でしたが。がしかし、その頃本気で鍼灸に取り組むことがなかった私は(徒手療法に重点を置いていた)「まあ、どうでもいいや」と疑問を解消するための努力もせずに流してしまいました。

 

臨床に出て患者さんに鍼灸をするようになり、ずっとモヤモヤしたままでした。鍼灸師になって5年後に鍼灸マッサージ教員養成科に進学し経絡治療と経穴治療、伝統鍼灸と中医学、を知り一応の解決を得ました。


しかし現時点でも実際に鍼灸術をするにあたっては悩むことばかり。その悩みを「ツボ療法」という表現で明確にしてもらった気がします。今行っている鍼灸は「鍼灸術」なのか「ツボ療法」なのか。言語化することで少しはっきりします。

 

 


鍼灸師ってユニークで、鍼灸師自身の生き方が、技の根底になっている。
それ抜きに、鍼灸の世界を理解することはできない。

 

鍼灸師自身の生き方が、技の根底になっている


これだ!とうなった言葉でした。

鍼灸術は適応範囲が多岐に渡り流派や考え方も千差万別です。私はあん摩マッサージ指圧師、柔道整復師でもありますが、鍼灸師はそれらよりも曖昧で広い感じがします(かといって鍼灸師だけが深いとはおもいませんが)。


生き方が技術に反映することは大いに納得できるのです。私はこれまでの経験上、鍼灸を世に広めるより鍼灸師個人をアピールした方がいい、と考えてきました。漠然とそちらの方が(経営的な意味でも)効率が良いというか、響くというか。その根拠ははっきりとしていなかったのですが、技の根底に鍼灸師自身の生き方がある、となると腑に落ちます。
鍼灸だけでなくあん摩マッサージ指圧もそうですが生き方・生き様が出るのだと、独立開業して誰にも指示されない環境に置かれてなおさら感じたことです。

 

 


今の科学化は、鍼灸が患者さんの自然治癒力に働きかけてやっている全体の作用のごく一部を、粗雑な科学語で説明しているだけ。
それさえも、すでに臨床家が実感としてわかっていることの「あと追い」なんだよね。

 


だから、鍼灸師が科学で解明できないことを存在しないかのように考えるとしたら、鍼灸業界にとって科学化は大変な弊害なんだよ。

 


うん、柳谷 素霊は昭和25年に『鍼灸医術に於ける古典の科学性に就いて』でこう言っている。
「もっと科学が進んで、量子力学的な見方が出はしないか、電磁場的な説明がなされる日がありはしないかを私は夢見ている。そのようになったときの鍼は、進んだ鍼の科学として新しい意義のもとに扱われるであろう。ということは、いわゆる『名人芸』とか『勘』とか『コツ』とかいわれ、標識されていた『技術』が自覚されて『科学』になることを秘めているのである」ってね。

 


今の「RCTでエビデンスを得る手法」というのは、いかにも大変なことをしているように言われるけど、統計処理した確率論でしか答えは出せていないよね。
あるがままの臨床の世界ではない。
でも、それは仕方がないこと。

 


そう、そう。鍼灸臨床という、1人ひとり違う施術をするのが原則の医療の効果を、薬物療法という画一的治療の試験法でみようとするわけだからね。
しかも、実際の鍼灸術はプラセボの心理効果を積極的に利用するのに、RCTはそれを排除した実験方法だから、不自然そのものだよ。

 

この一連の言葉がこのインタビュー回で一番感銘を受けました

 

一見、
科学化は無理=勘と経験がモノをいう
という風に捉えがちなのですが、実験研究の実際をよく理解した上での発言ではないでしょうか。


私は大学で応用物理科に在籍し、卒業研究では半導体(青色発光ダイオード)の研究をしました。中学・高校では物理学と数学に魅せられてガリレオ、ニュートン、アインシュタインの話を読んでいました。
それ故に鍼灸専門学校に入った当初は「鍼灸(東洋医学)なんて科学ではない!」という気持ちが強かったのです。物理や数学に比べればあまりに結果が曖昧です。脈診(脈をみて状態を探ること)など数値化できない。取穴(ツボを取ること)は先生によって変わるし統一性がない。先に述べたように言うことが真逆であることもしばし。納得できませんでした。

その後、臨床経験や勉強をしていくうちに「鍼灸は科学である」という結論にたどり着きました。


その過程には教員養成科での卒業実験が大いに関係します。自ら一から実験プロトコルを組み立て、実際に被験者を集めて実験を行い、数学的統計処理をかけて結果を出す。そこから考察を加えて論文にまとめて、発表する。この一連の経験がいかに限定した条件で実験をして論文にしているかを思い知らされました。

 

1人ひとり違う施術をするのが原則の医療の効果を、薬物療法という画一的治療の試験法でみようとするわけだからね。
しかも、実際の鍼灸術はプラセボの心理効果を積極的に利用するのに、RCTはそれを排除した実験方法だから、不自然そのものだよ。

 

この部分はまさにそうだ、と唸りました。


エビデンスといいますが、果たしてそれが本当に(証拠として認識してよい)エビデンスなのか。ごく限定した条件で実験をして統計処理をかけた結果で全体を判断していないか。しかも相関関係が示されただけで因果関係まで立証できているのか。

実際にはこのような実験方法しかできない現実があるのですが、あまりに一部分の要因だけで決めつけていないかという疑問、疑念、不満があります。暗黙知と言われる数値化が難しい部分を測定することが「今の科学」ではできないことを松田先生は分かって語られています。

 

そこで鍼灸界の偉人である故柳谷素霊の言葉を引用しています。素霊氏は「もっと科学が進んで、量子力学的な見方が出はしないか、電磁場的な説明がなされる日がありはしないかを私は夢見ている。そのようになったときの鍼は、進んだ鍼の科学として新しい意義のもとに扱われるであろう。」と昭和25年時点で語っているという。

物理学を専攻したからこそ“量子力学的な見方”、“電磁場的な説明”という表現に感銘を受けるのです。
量子力学はそれまでの古典物理学の常識をくつがえす物理学。電磁場的というのは電気と磁気が相互に関係し力を生み出すという意味でしょうか。私の漠然とした印象で量子力学は今のところ説明できない身体の機序を説明できる可能性があり、気という概念は電磁気で説明するのが一番現実味があるように思います。


素霊氏がこのような表現をすることが驚きですし、その言葉を引用する松田先生にも知識の深さを感じます。なかなか量子力学とか電磁場といった用語を理系以外の人間から出てくるものではありません。

 

またインタビュアーである鶴田恵隆先生の言葉が的を射ています。

 


「鍼灸刺激」と「鍼灸術」の違いですね。
RCTは物理的な鍼灸刺激だけを評価するわけだから、鍼灸術の一部にすぎない。

 

鍼灸刺激にすぎない。鍼灸刺激は鍼灸術の一部に過ぎない。


これまで私が言語化できなかった部分を鮮やかに言葉にしました。先に挙げた「ツボ療法」とともに「鍼灸刺激」という概念をはっきりさせたら基礎実験の本質が見えてきました。

臨床で患者さんに施す鍼灸機材を用いた「(そこにはプラセボ効果や会話も諸々含めた)鍼灸術」があり、「ツボ療法」も「鍼灸刺激」もそれを構成する一部。そのように頭を整理すると、
・実験では何を見ているのか
・臨床において選穴する(どこの経穴=ツボを使うのか決めること)のは何を目的としているのか
・説明や言葉使いに接遇も含めて「鍼灸術」である
といったことがクリアーになったのです。

 

鶴田恵隆先生と直接の面識がありません。一度セミナー会場でお会いしたと記憶していますがきちんと話したことはありません。
「ハリトヒト。」メンバーはほとんど面識があります。代表の津田昌樹先生のセミナーを受け新名悟子卜部佑三絵野村森太郎先生のお三方から実際に鍼灸を受けました。今度、鋤柄誉啓先生に会ってお灸を受けてくる予定です。


鶴田先生だけが面識が無いのですが、これほどの鍼灸師が存在することに目を見張ります。

相当な知識がなければ松田先生にインタビューをすることはできないでしょう。ただ質問を重ねるのではなく言葉の補足を入れて新たな言葉を引き出す。別のインタビュアー記事で内原先生の心の声を引き出し、「ハリトヒト。」メンバーで学会について考える回でも研究手法について鋭い意見を長である津田昌樹先生にぶつけていました。

 

<教員にとって臨床は「毒」であり「魅力」/関東鍼灸専門学校・副校長:内原 拓宗>

<津田先生、学会ってなんですか?【前編】/ハリトヒト。番外編>

鶴田先生は、いつかお会いして話をしてみたい先生です。

 

 

今回のインタビュー前編では松田先生のこのような言葉で終わっています。

 


科学に認めてもらおうなんてのは、志が低すぎるよね。
むしろ、古代から継承された伝統医療である鍼灸術には、現代の科学や生命観、社会観を変革して、新しい科学、医学を創り出せる可能性さえ宿っているんだよね。

 

この部分だけを切り取ったとすれば、随分と生意気な大風呂敷をひろげたやつ、と思われるかもしれません。それまでの話の流れで、現代科学の限界を踏まえた上で鍼灸が次のステージに科学、医学を進めさせる可能性を示唆しているのです。

 

多くの人が、そして当事者である鍼灸師も、「鍼灸って宗教じゃない?」と感じているのではないでしょうか。私もかつて「こんなの科学じゃなくて宗教だろ!」と思っていましたし、今もそう考える部分があります。また宗教として説明すると分かりやすい点があると言えるでしょう。それと同時に「科学」も一種の宗教だと私は考えている面があります

 

科学史を紐解けば権威が言うことを妄信して反論することはおろか疑問をもつことすら許されなかったことの繰り返しです。
医学においても日本では脚気の原因を突き止めることで学派が対立し旧日本軍を舞台に壮大な論争(実質的な人体実験)が起き、陸軍と海軍で明暗が分かれました。軍隊が関わる以上当時の最先端科学が用いられたのは当然です。にもかかわらず多くの犠牲者を出しました。
現代科学においても分からないことだらけであり発展途上です。「学会の権威」が教祖となって民を信じ込ませている面があるのでないかと考えています。

鍼灸という伝統医療がこれまでの科学を飛躍させる要因になるのではないかという意見は、大学時代に物理学を専攻し現在鍼灸の勉強をしながら臨床をしている私にはとても頷けることです。

 

 

後編のインタビューではどのような内容になるか注目です。
SNSの投稿によれば今回のインタビューは編集が相当難航したようです。松田先生の言葉をどう汲み取って文字におこすのか。想像しただけでも相当な苦労があったのでしょう。このレベルのものを「鍼灸師」が行うことに改めて感銘を受けます。

 

甲野 功

 

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