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~鍼灸師はコメディカルとどう向き合うか~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 教員養成科卒業論文発表会抄録
2月19日に発表された研究に興味深い内容が

 

2月19日に東京医療専門学校代々木校舎で行われた、第35回鍼灸マッサージ教員養成科卒業論文発表会。概要をブログで書きましたが、その演題の中にきちんと振り返りたいものがありました。

それがこちらです。

 

コメディカルに対しての鍼灸の意識調査 一病院のリハビリテーション科における鍼灸のイメージー

 

この研究発表はアンケート調査を行ったものです。実験系のものと異なりますが、とても貴重なデータ、そして意見だと私は考えています。


コメディカルとは、主に医療機関において医師の指示の下に業務を行う医療従事者全般を指す言葉です。看護師が一番分かりやすいでしょうか。病院勤務で医師の指示の下に働く鍼灸師もコメディカルに入ります。

 

本研究は鍼灸師であり理学療法士でもある発表者が、あるリハビリテーション病院のコメディカル(本研究では具体的に理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)に対して、鍼灸に対するイメージをアンケートで調査を行った報告です。この3つの職は全てリハビリテーション業務を行う医療系国家資格であります。
質問用紙を120部配布し、67名から回答が得られました(回収率は56%)。

 

質問項目は
・鍼灸治療の経験


・鍼灸は国家資格であるか


・鍼灸を行っている医療機関を知っているか


・海外の鍼灸治療について知っているか


・鍼灸のイメージ


・チーム医療における鍼灸師の必要性


・患者に鍼灸治療を勧めるのか


・鍼灸治療の効果や適応


・鍼灸治療の保険診療の有無について


を選択式で質問し、それぞれの回答に自由記載で理由を書いてもらっています。

 

発表者は理学療法士として病院で働いた経験があり(つまりコメディカルの立場にいた)、その当時は鍼灸のことは一切知らなかったと言います。その後病院を離れてから鍼灸の存在を知り興味がわき、鍼灸師の道に進んだと言います。
つまり、まず理学療法士としてのアイデンティティを持ち、そこから鍼灸の存在を知ったということです。すなわち理学療法士の立場から鍼灸を見ることができるわけです。加えて病院勤務経験があるので、医師とコメディカルとの鍼灸師の関係についてより深く考察できる立場にいることでしょう。その発表者が決めた質問項目です。

 

主な結果を見てみましょう。
・鍼灸治療の経験:有と答えた割合が21%


・鍼灸は国家資格であるか:はいと答えた割合72%


・鍼灸を行っている医療機関を知っているか:はいと答えた割合9%


・海外の鍼灸治療について知っているか:知っていると答えた割合12%


・鍼灸のイメージ:良いと答えた割合16%、どちらでもないと答えた割合78%


・チーム医療における鍼灸師の必要性:はいと答えた割合34%、いいえと答えた割合58%


・患者に鍼灸治療を勧めるのか:はいと答えた割合19%、いいえと答えた割合72%


・鍼灸治療の効果や適応:知っていると答えた割合6%、知らないと答えた割合90%


・鍼灸治療の保険診療の有無:無しと答えた割合67%

 

大まかにこのような調査結果となりました。


抄録集の記述と当日の発表内容をメモしたものですので、少々数字が不明瞭であります。もしも興味があるようでしたら後に呉竹学園で製本される教員養成科卒業論文集をご覧になっていただければ幸いです。学校の図書室に置かれます。

 

アンケートに答えたコメディカルで鍼灸を受けたことがあるのは5人に一人。全国的な平均が5%未満と言われていますからこれは高い割合でしょう。

 

鍼灸師(正確にははり師、きゅう師)が国家資格であることも大多数のコメディカルが知っています。同じ厚生労働省管轄の医療系国家資格であるから当然といえば当然でしょうが。むしろいいえと答えた人はどうなっているのでしょう。

 

ここから厳しい結果が続きます。


鍼灸を行っている医療機関を知っているかという質問にはいと答えたのはわずか9%。1割弱です。最近ですとNHKの東洋医学特集で東京大学病院や慶応大学病院で働く鍼灸師が出演しましたがほぼ知られていないということです。

 

海外の鍼灸について知っていると答えた割合は12%と一つ前の質問より知っている割合が高く、海外にも鍼灸が普及していることがやや知られているということでしょうか。そもそも鍼灸は起源が中国にあり、中国から韓国や日本に伝来し各国特有の鍼灸技術が育まれました。

 

鍼灸のイメージが良いと答えた割合は16%にとどまり、どちらでもないと答えたのが8割弱。アンケート調査をお願いしたのが鍼灸師であると分かった上でのこの数字では、あまり良いイメージをもたれていないことが伺えます。悪いとは答えづらくて大多数がどちらでもないという項目を選んだような気がします。それは次の質問にも反映されているでしょう。

 

チーム医療における鍼灸師は必要ないと答えた割合は6割弱。これは普段医師と連携しているコメディカルの方々が回答しているわけで、その立場でチーム医療に必要ないと考えている割合がこれだけいるということです。反対に必要と答えたのは34%もいると考えれば一部認めてられているのかもしれません。

 

患者さんに鍼灸を勧めると答えた割合は19%に過ぎず、いいえと答えは7割以上。この数字は次の質問にヒントがありそうです。

 

鍼灸の効果や適応を知らないと答えた割合がなんと90%知っていると答えたのが6%しかいません。すなわち対象者となったコメディカルのほとんどが鍼灸の効果や適応を知らないということ。これではチーム医療に加えるのも患者さんに勧めることをためらうのは仕方ないでしょう。

 

鍼灸の保険診療についても無しと答えたのは67%と過半数を越えます。

 

発表の考察には
鍼灸治療の効果や適応がほとんど知られていないために連携を図ることは難しく、患者にも勧められないという結果だった。
とあります。

 

まずこのアンケート調査結果をそのまま受けると、いちリハビリテーション病院のコメディカルには鍼灸の存在は知られているが、どのようなことができるのかは未知数ということが言えるでしょう。その結果、連携も勧めることも困難であると。しかし一般よりも鍼灸を受けた経験があるという結果であるにも関わらず。

 

考察にはこのように続きました。
鍼灸のイメージは鍼灸についての知識が乏しいためどちらでもないが多かったが、今後鍼灸師や鍼灸治療の啓蒙活動を行うことにより認知向上を図る必要があると考えられる。

 

啓蒙活動。これは多くの鍼灸師や学校、団体が考えることであると思います。対象は一般の患者さんではなく、医療従事者たるコメディカル。当然ならがその啓蒙活動を具体的にどうするのか、という議論になります。

 

質疑応答では真っ先に東京医療専門学校好調である齊藤先生が、私見でよいのでどのような行動をしたらよいか、発表者に問いかけました。
発表者の答えは、コメディカルにとって鍼灸を学ぶ機会がない現実がある、そのため開業鍼灸師が病院に営業ではないが入っていくのが良いのではないか、と言います。

 

その質疑応答を受けて、私も質問をしました。
コメディカルにとって分かりづらい鍼灸ですが標準となる鍼灸はどのようなものと考えているか、と。
これは鍼灸というジャンルそのものがとても広いことで基準が曖昧であることが分かりづらいものとしていると考えての質問です。
発表者は、まず現代鍼灸(解剖学や生理学など現代医学の知識に即した鍼灸体系)からはじめてその後に東洋医学的な話をしてはどうか、と答えました。

 

更に会場にいた別の教員養成科学生から、気の世界(現代鍼灸ではなく東洋医学・思想に基づいた鍼灸という意味)を中心に話した方がよいのではないか、という意見が出ました。
発表者の答えは、相手に伝わればいいが客観化できるのか疑問がある、と言います。また、人(鍼灸師)が病院に入った方が早いのでは、ともありました。

 

そして座長である教員養成科科長の中村先生は、鍼灸によって効果を出すことが先決では、というコメントでこの演題を締めくくりました。

 

この研究はとても重要だと思っています。

発表会の前に抄録集を読んでいて、一番興味があった内容でした。齊藤校長もこれから医療機関において混合診療(保険診療と自由診療が同時行われる)の流れが来ることが想定され、自由診療には鍼灸が大きく関わると予想できますし、関わるべきだと考えています。それが校長の話す「令和の鍼灸師」というテーマであり、他業種(他の医療従事者)と話せるということに繋がるはずです。

 

そのために何をするのか。


発表者は人、すなわち鍼灸師が大切と発表後の休憩時間に私に語りました。

私もクリニック大学病院の2つの医療機関で勤務した経験があり、医師やコメディカル(この場合は看護師など)と接して、現実に唖然とすることや悩むこともありました。柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師という鍼灸以外の肩書も持つため、外側から鍼灸師を俯瞰することができます。理学療法士からこの世界に入った発表者の意見が聞きたいと声をかけたのです。


「鍼灸」という括りよりも「鍼灸師個人」として話をする。そのために病院に鍼灸師が入っていく。それが発表者たる先生の確固たる結論だったように、短い時間の会話ですが感じました。想像以上に鍼灸を、東洋医学を、コメディカルに理解してらうのは困難であると考えているようでした。

 

それについては私も同感でありあれも鍼灸、これも鍼灸と標準治療がほぼ存在しない鍼灸を外に伝えるのは大変で、個人を出した方がよいと思います。鍼灸師を知ってもらった上でないと耳を傾けてくれないと。

 

それに対して中村科長は結果を出すことで聞いてもらえる状況を先に作ってしまうことが得策だと言っているのだと思います。また齊藤校長は他の業種のことを知る努力を鍼灸側がしないといけないと話します。

 

何が正解なのかは結論が出ませんが、将来のトレンドとして医療機関と連携できる鍼灸師は必要になると思われます。現在世界的に新型コロナウィルスによる肺炎が流行しており、各国対応に苦慮しています。中国では現代医療と共に鍼灸師や推拿を用いた中医学も治療現場に参加していると報道されています。日本とは環境が違いますが、コロナウィルスに限らず、鍼灸及び東洋医学が連携する状況が生まれるかもしれません。その時に鍼灸師は何をしていくのか。


その課題を提起した発表だと考えて、再度振り返りました。

 

甲野 功

 

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