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~競技ダンスの話 前後のバランスに陰陽論~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 競技ダンス前後のバランス
前後のバランスに陰陽論

 

 

社交ダンスを競技として競う“競技ダンス”。現在、大会シーズン真っ最中。新型コロナウィルスの影響もほぼなくなり今年はかなりコロナ前の状態で競技会が開催されているようです。私自身が学生競技ダンス選手出身ということもあり、開業時から社交ダンス関連の選手へのサポートをしています。

 

他のスポーツに比べると圧倒的にケガをする確率が低いのが競技ダンス。格闘技、ラグビーやアメリカンフットボールのようなコンタクトが激しいもの、スキー競技などに比べると本当にケガは少ない種目でしょう。練習のし過ぎによるもの(オーバーユース)、身体の使い方を誤って故障するもの(ミスユース)くらいが原因になります。たまに競技会中に接触したり転倒したりして救急搬送されるということがありますが、私の知る限り数年の1件あるかどうかです。

そのため来院される競技ダンス選手に対しては身体のメンテナンスやパフォーマンスアップを狙った施術内容がほとんどです。結局、大きなケガや強烈な痛みがある場合は医療機関を受診した方が適切です。日常生活に支障はないのだけどダンスをするのに不都合がある、もっとダンスを上手く踊りたい、というニーズに応える立場だと私は考えています。競技ダンス選手は何より競技会で好成績を残すことが第一目標であるわけです

 

競技ダンスにおいてより高いパフォーマンスを発揮するためにできること。その点について私の場合、鍼灸師であることが付加価値になっています。鍼灸という免許が持たなければできない技術ということも大事なのですが(それは医師免許があれば非鍼灸師でも可能)、東洋医学という伝統的な考え方を知っていることが大きいと思うのです。東洋医学、伝統医学、東洋思想。色々な表現があるのですが、その基本となるのが陰陽論。古くは陰陽師(おんみょうじ)というシャーマン(これが正確な表現かは分かりませんが)が国の役職として存在しており、この陰陽論を用いていたと言われています。

 

陰陽論は万物を陰と陽に分けるという思想。男女、明暗、上下、左右、前後、など。相対する概念で2種類に分けること。しかしその分け方は絶対ではなく相対的なものである。陰に区分されるものでもその中で更に陰陽に分けることができ、対比する条件次第では陰陽の属性が変わります。またその度合いも変化し、より強い陰やほぼ力のない陽など陰陽のそれぞれ強さには幅があります。また陰が陽に、陽が陰に逆転することもあります。大雑把に陰陽論を説明するとこのような特徴があります。

 

ではこれを臨床にどう活かすのかというと、症状や体の状態を虚実に分けて考えます。虚とはエネルギーが足りない状態。実とは悪いエネルギーがあるか余計なエネルギーが停滞している状態。このようなイメージです。虚実も陰陽であり、虚が陰で実が陽に分類されます。そして虚の状況にはエネルギーを与える補法を用い、実の状況には余計なエネルギーを取り除く瀉法を用います。これを補瀉(ほしゃ)といって東洋医学のベーシックな概念であり技術なのです。

ではこれらをどう競技ダンスに応用するのかという話。性別の男女でいうと男性が陽、女性が陰になります。これが社交ダンスの役割で考えるとリーダー(男性)が陰、パートナー(女性)が陽となります。そうしてみたときにリーダーが暴れすぎているパターン(陰陽論で言うと陰実)、パートナーが暴走しているパターン(陽実)、リーダーにパワーが無いパターン(陰虚)、パートナーが動けていないパターン(陽虚)といったように、それぞれのカップル状態に対して陰陽論を用いて分類します。虚なら補法を実なら瀉法を。余計な力が入ってしまう、緊張してしまう、焦ってしまう、頭に血が上っているなど実の状態にはリラックスさせるように瀉法を意識して施術を行います。パワー不足、関節可動域が狭いなどの虚の状態には補法を意識した施術を行います。

だからどうした、という意見があるかもしれませんがこの見立てや概念は結構役に立つわけで、何でもプラスにしようとしても上手くいかないことがありますし、選手としては武器だと思っていた能力がマイナスに働いていることがあり、虚実と補瀉を踏まえると効果が出しやすいというのが10年以上現場で試行錯誤してきた実感です。

 

この陰陽論を用いた考え方を、より具体的にもっと狭い範囲で紹介します。やっと本題です。

競技ダンス、特に学生競技ダンス選手では以下のような評価が挙げられます。

・背中が強い

・背中が綺麗

・アピールできている

・表情がいい

これらはよく耳にするものです。

最初2つは背中、後2つは全体的な事と表情。これを陰陽に分けると先2つが陰、後2つが陽に分けられます。早い話、前後ということなのですが。背中は後ろについています。表情は顔であり前面。アピールというのは範囲が広いですが多くは前面に向けて行うもの。

何が言いたかというと、ダンス選手単体でみたときに前後に注目してみましょうということ。陰陽論で選手の前面と後面を比較するという。

 

陽である前面は何があるでしょう。顔、胸、腹、膝など。

陰である後面はどうでしょう。後頭部、背中、腰、殿部、踵など。

(※陰陽論では背中とお腹を比較した場合は太陽の光がよりあたる背中を陽、お腹を陰とするのですが、ここでは大きく前後のパーツで分けました)

 

陽の前面は顔があり、表情という競技ダンスにおいて非常重要なアピール部位があります。また目という外界からの情報のうち8割を占めるといわれる視覚を司る重要な器官があります。目が前に付いている以上、人間は前しか見えないのです。アピールという意識は前方、目が向いている方向が主体になります。

陰の後面にはうなじや背中、ふくらはぎがあります。太もも前にある大腿四頭筋を除くと人体の力が強い筋肉は後面に固まっています。マッサージを受けるときにだいたいうつ伏せになっている時間が長いのはそれだけ発達した筋肉が後面にあるからです。背中で語る、という表現がありますが背面は直接訴えかけるというより雰囲気を醸し出す感じがあります。

 

競技ダンスで前後のバランスを考えて調節する。これが私にとって大事なポイントです。

 

前ばかり意識が強くて後ろが疎かになっている。陰陽論で言うと陽実・陰虚です。こういう場合はネックが出やすく、猫背気味で背中が汚い。前からみると印象が強いが後ろや横からみると平面的に見えてしまう。こういうときは前の意識を少し落として後ろの意識を高めるように施術やアドバイスをします。人間の体は背中には感覚神経があまり分布されていません。手のひらに比べると背中は触覚(専門用語で二点弁別閾といいますが)が鈍いのです。背中の感覚を鋭くするような方法を試み、より繊細に背部の筋肉を使えるように努力します。

顔が前に出る、いわゆるネックが出るという状態は後頭部の方への意識が薄いことがあるので意識させるようにします。またメガネを掛けていたり近視だったりするとネックが出やすくなるので(メガネのフレームの中で視界を捉えようとする、近視は焦点がぼやけるので無意識に顔を前に出しやすい)コンタクトレンズをした方が好ましいとアドバイスする、あるいは視野の捉え方を変えるように話をします。

 

人体の構造上、前面が強くなることがほとんどです。胸を張り過ぎて背中が潰れる。肩甲骨の動きが悪い。お腹が出てしまう。こういったことは陰陽で考えると陽が強すぎる(実の状態)と考えます。イメージで胸を張り過ぎているならば、胸をもう少し縮めるようにするのか(陽の瀉)、背面を広げるのか(陰の補)で変わります。選手の状況で体の使い方(もしくは対処するための考え方)を選択すると良いです。

 

選手個人の陰陽タイプもあります。表情が豊かで外へのアピールが強い、相対的に前面が強い陽タイプ。背中のシルエットが綺麗で力強く相対的に後面が目立つ陰タイプ。個人的な経験で弓道経験者は背中を意識する経験があるせいか陰タイプの選手が多い印象があります。チアリーディング経験者は一方向(前面)にアピールすることが多いので陽タイプになりやすい。

ラテン選手は圧倒的に陽タイプが多く、スタンダード選手は陰タイプが多い。これは種目の特性上当然で、スタンダードでは男女が接触して踊るため背面の美しさが必須、ラテンでは男女が離れて踊るので表現しやすい前面の意識がより強くなります。

トップ選手になると前後のバランスが非常によくて前にも後ろにも隙がない。背中からも目に入ってくるし、前へのアピールも当然強いわけです。

 

陰陽論では陰陽バランスが取れている状態を中庸と表現します(元は儒教の思想)。陰陽を中庸にするために、術者は補瀉をするとも言えます。より具体的なことになると感覚的、相対的なものになり、万人にこうすればOKというものはありません。私が大学生の学生競技ダンス現役の頃、鏡を見て踊っていたときに「鏡ばかり見て踊っていると上達しなくなるぞ」と注意されたことがありました。その当時はその意図が理解できなかったのですが、今は言わんとしたことが分かる気がします。前の意識が強くなり過ぎて(陽実)背中が弱くなること(陰虚)を懸念したのでしょう。特にスタンダード専攻でネックが出やすかったので。

 

選手の身体能力、表現方法、使い方などの項目を前後に分けて考え、足りないのか余計なのかという観点で考えることはダンス上達への一助になると考えています。

 

甲野 功

 

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