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~指圧の話 浪越指圧の垂直圧~

あじさい鍼灸マッサージ治療院 美これ入り口
美これ代々木 入り口

 

 

先日代々木にある『美これ』に行ってきました。

 

指圧マッサージ美これ代々木

 

昨年末に続いて年明けにも。最初に訪れたのは昨年7月のことでした。まあまあの頻度で足を運んでいます。

 

こちらは昨年春にオープンしたばかり。スタッフの中に専門学校入学前に当院で進路相談に乗った人がいたのが縁でした。その方は業界研究をした上であん摩マッサージ指圧師専門学校に入学することを決め、3年間の勉強を経て昨年国家試験に合格。あん摩マッサージ指圧師免許を取得しました。そして同級生と『美これ』を始めたのです。プロのあん摩マッサージ指圧師になったことを知り、昨年夏に施術を受けに行ったのでした。その時に紹介された別のスタッフの方。また同じく同級生で『美これ』スタッフの一人が卒業後の進路相談も兼ねてあじさい鍼灸マッサージ治療院まで鍼灸按摩指圧の施術を受けにきてくれました。そのような縁があり、なおかつ代々木は母校である東京医療専門学校の柔道整復師科と鍼灸マッサージ教員養成科がある土地で合計5年間通った街、足を運んでいるのです。

 

縁があったから、だけではなく術者としての興味も訪れる理由です。それは浪越指圧を体験することです。

 

あん摩マッサージ指圧師。これが国家資格の名称であり免許名でもあります。なぜこのような名称なのかというと、中国発祥の按摩(あん摩)とフランス(ヨーロッパ)から入ってきたマッサージ(massage)、そして日本で生まれて各種徒手療術を含めている指圧、3つの技術をまとめて一つの資格免許にしたのです。よって指で押せば指圧というわけではなく、あん摩マッサージ指圧師のいう指圧というのは範囲がかなり広いのです

 

そのあん摩マッサージ指圧師のいう指圧において最も有名なものが『浪越指圧』になるでしょう。かの浪越徳次郎氏によって広まった浪越指圧。浪越徳次郎先生が設立した浪越学園日本指圧専門学校ではその技術を今も継承しています。日本指圧専門学校という学校名からわかる通り指圧をメインにした学校です。晴眼者(視覚障害のない健常者という意味)向けの専門学校であん摩マッサージ指圧師科単独の学校は浪越学園日本指圧専門学校と長生寺付属長生学園の2校しかありません。この学校形態は非常に珍しく、多くは鍼灸を一緒に教えています。日本指圧専門学校はとにかく浪越指圧を伝授する学校として業界内でも際立った存在があるのです。

私は呉竹学園東京医療専門学校鍼灸マッサージ科を卒業しており、『呉竹指圧』といわれるものを学んでいました。同じ指圧といっても呉竹学園の指圧、長生学園の指圧、浪越指圧は異なる点があります。最近はそれらの比較検討をしてみたいと活動をしています。10年以上前に浪越指圧を飯田橋駅そばにある院で一度体験しましたが、最初に述べた縁もあって再び浪越指圧を体験してみることにしたのでした。

 

さて『美これ』で3名の術者の施術を昨年から体験しました。大きな特徴が“垂直圧”でした。

指圧の3原則なるものがあります。それは垂直圧持続集中。指圧の3原則の一つである垂直圧は体表面に垂直に圧を入れるというものです。浪越指圧はこの垂直圧の技術が非常に高いというのが私の感想です。

指圧の主な技術は押圧操作(おうあつそうさ)といって押すことです。ちなみに按摩は揉捏(じゅうねつ)といって揉むこと、マッサージは軽擦(けいさつ)といって撫でることが主に用いる基本技術です。

 

この押すということが実はかなり難しいのです。

 

押すさいに必須となる技術が垂直圧なのです。体表面は平たんではありません。凹凸があります。骨の上には皮膚や筋肉、脂肪といった柔らかい組織があります。垂直圧ができないと滑ってしまうのです。

そして押圧操作の基本として漸増・持続・漸減というものがあります。いきなり押すのではなくゆっくりと圧を入れていき(これを漸増圧という)、圧が入ったらそれを一定時間キープし(持続圧)、圧を抜くときもゆっくりと抜いていく(漸減圧)ことが求められます。一気に圧を入れる技術(衝圧法)もありますが基本は漸増・持続・漸減で押圧操作をします。

垂直圧の精度が高いと表面の遊び(柔らかさ)に惑わされず力が真っ直ぐ入ります。これが簡単にはできません。今年2月末で私はあん摩マッサージ指圧師になって丸15年。その前に3年間専門学校で勉強していて、その経験から簡単に習得できるものではないことを知っています。様々なところでいわゆるマッサージを受けてきましたが、力を込めていても圧が奥に入ってこないケースはかなりあります。それは垂直圧ができていないため。一見誰でもできそうなことだからこそ基本技術に差が出るのです。

 

垂直圧をするためには術者の姿勢(体のスタンス)が非常に重要で全身を使って部位ごとに体勢を整えないといけません。漸増圧を実現するためには垂直圧をした上で圧のかけ方をコントロールしないといけないので体勢を安定させられないとできないのです。

そして持続圧。これは更に難しいです。押した状態を一定時間キープする。指の耐久性が必要であること圧を一定にするための姿勢、筋力がいります。当然垂直圧ができていないと(面に斜めになっていると)滑ってしまいますし。技術が未熟だと滑らないまでもプルプル震えてしまい受けていると不快・不安になります。浪越指圧はそれがなく圧が安定して体の奥に入ってくる感覚があります。

最後の圧を抜くときも漸減圧が上手。実は押すときよりも抜くときの方が大事と言われていて、呉竹指圧は特に圧の抜き方に注意します。これも垂直圧と体勢の安定が必要で、真っ直ぐ抜けていきます。技術の差は押すときよりも抜くときの方に表れる。それが同業者としての私の考えなのですが、浪越指圧はここもしっかりとしています。

 

次に感心したのが側臥位(横向き)で受けた指圧でした。うつ伏せ、仰向けの場合は上から押せば下にベッドがあるので安定しています。側臥位で背中を押させる場合、前に固定してくれるベッドはないので押された体が動いてしまいます(体格や押す場所にもよるのですが)。そこで支え手といって押す指とは別の手で上体を保持しておくのですが、その使い方が上手でした。側臥位の指圧の場合、一方の指で患部を押さえてもう一方の支え手で受け手の上体を引いて指を押し付けるような使い方をすることがあります。そのような指圧をされたのですが、支え手と押し手の使い方がよく、ここでも垂直圧と持続圧ができていました。側臥位は受ける方の体の負担が少なくていいのですが、術者の方はより技術を有するのです。『美これ』のベッドは高さが低めにしてあったので体勢を作るのも工夫がいることでしょう。押す部位によっては支え手が必要ありませんのでそこの押し方も注目しました。これらはマニアックな視点ですが同業者だからわかる点です。

 

仰向けになった状態で首への押圧を受けました。仰向けの状態で下から首を持たれたのですが、私は本能的に力が入ってしまいます。力を抜いて言われることがよくあるのですが、頭を相手に預けるのが怖くて首の筋肉が強張ってしまいます。『美これ』のときは下から首を支える手の触り方がいいので安心できて力が抜けました。これは私の事情になりますが、なかなかできないのです。

そして首を握るように前頚部(首の前部分)を親指で押されました。前頚部は頚動脈があり人間の急所。ここに押圧操作を入れるのは浪越指圧以外で体験したことがありません。下手な押し方をすると脳貧血を起こす可能性があります。実際に私は過去に練習で下手な首の押された方をされて気分が悪くなった経験があります。ここを押すのは相当技術がいるのです。ここでもしっかりと垂直圧で変に圧が逸れることありませんでした(逸れてしまうと危険)。把握といって握る手の使い方で圧を入れることは結構難しい技術で、それを急所である首で行うというのはやはり同じあん摩マッサージ指圧師として凄いことだと思うのです。

 

仰向けで腕の付け根を母指圧(親指で押される)されました。この部位は強く入れると痛みを伴うのですが、ゆっくりと圧を入れて(漸増圧)で痛みを感じるギリギリで止めて(持続圧)でまたゆっくりと圧を抜いていきました(漸減圧)。これは指先の感度が鋭くて相手の反応を感じ取れないとできないことでしょう。下腿後面(ふくらはぎの後ろ)、大腿前面(太ももの前)など強く押すと痛みが出る部分の母指圧がきちんとコントロールされて痛みを感じずに中に圧が響いていました。これらの部位はまさに垂直圧が必要で筋肉をぐりっと弾いてしまうと痛みや不快感が伴います。それを出さないで押圧操作ができるのは高い技術の賜物でしょう。

 

そして同業のあん摩マッサージ指圧師として驚くことが、揉捏を一切しないことです。揉捏は筋肉などを揉む手技なのですがそれをしない。押圧のみ。筋肉を揉まず押すだけ。それで60分持たせるというのは本当に凄いことです。私は揉捏を入れた方が術者として体の負担が少ないと思います。人によっては全身揉捏のみで行うことも。また押圧の方が“外れる”確率が揉捏よりも高いと私は考えていて(理由は垂直圧が未熟だとそうなるから)、浪越指圧は徹底していると思うのです。

 

何より『美これ』で3回別々の術者の手技を受けましたが、全員が昨年春にあん摩マッサージ指圧師免許を取得した新卒1年目ということに驚かされます。専門学校でどれだけ訓練されたのかがうかがえます。どの方も個々の特徴はあれど押圧に迷いがなく入っていきます。小柄な女性でも体に浸透していく感覚があり。それは基本の垂直圧をしっかりと磨いた結果なのでしょう。今後経験を重ねていったらどう変わっていくのか期待できます。

同じあん摩マッサージ指圧師として刺激を受け参考になります。自分の院に戻ってから患者さんに対して今一度垂直圧を意識して施術しました。

 

甲野 功

 

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